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愛されてはいけない理由  作者: ねここ


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親友


「最悪、二日酔いだ」


 クロードは頭を押さえながらエリゼの執務室に入ってきた。まるで我が家のような振る舞いだがエリゼが許しているので執事のレオネは何も言わずクロードに頭を下げる。


「クロード、お前飲み過ぎだぞ」


 エリゼは既に仕事を始めていたがクロードを見て立ち上がり、笑いながらソファーを勧め自分も向いに腰をかけた。

「エリゼってめちゃくちゃ酒強いんだな、改めて驚いたよ」


「ああ、酒と毒には強いぞ」

「噂……本当だったんだな、ザノッティ一族は毒が効かないって」

「そんな噂があったのか。否定はしないな」


 その言葉にクロードは立ち上がる。

 

「まさかあれか?幼少期から毒を飲むってやつ?」

「ああ、あれだ。」


 エリゼは平然と答える。

 

「俺も公爵家だけど、やっぱ格が違うな」

 

 クロードは体の力が抜けたようにソファーにドスンと座りエリゼを見る。


「それだけ嫌われているってことさ」


 エリゼはニヤリと笑いクロードに言った。

 


「あ、エリゼ、我がジェスタ王国のソフィ姫がエテル帝国の皇帝エリゼ様にご挨拶に伺いたいと」


「国交のことか?」


「お前、それしか出てこないのか?」


「俺が皇帝になって最初の国交を結ぶ国は重要だからな」

 

 エリゼは目の前の紅茶を一口飲みクロードを見る。


「もちろんそれもある。ソフィ様に勧めたのも俺だから。でもソフィ様はお前しか見えてない。ソフィ様にとってお前が全てだからな」

クロードの言葉にエリゼの顔が曇る。

「……わかっている。だけどそれではダメなんだ。俺は彼女に立ってほしい」

クロードはエリゼの言葉を聞き反論するように言う。

「エリゼ、ソフィ様はマリアじゃない、あの子みたいに強くないんだ」

 エリゼはクロードの言葉を聞き目を瞑る。

 (マリアの泣き顔を思い出す。強くあろうとどれだけの涙を呑み込んできたのか想像するだけで胸が痛む)

 エリゼはネックレスに触れ、言った。


「クロード、マリアは強い人間じゃない。強くいようと必死で生きている人間だ」

 

クロードもその言葉に頷くが、呟くように付け加える。

「エリゼ、だからってソフィ様を突き放すのは酷だぞ」


 エリゼは少し間を置きクロードに話しかける。

 

「……覚えてるか、あの時マリアに言った事」


「あの時?」


「マリアにお前を救えなかったら王を辞めると言った事だ。マリアは明るくいようと必死で生きていた。俺はそんなマリアを救えなかったんだ。だからマリアは俺の前から消えた」


「……エリゼ」


「俺はマリアを救えなかったから国王を辞めた。自分で掴んだものでマリアを救う。それだけだ」


「エリゼ、お前……。わかったよ。俺はお前が決めた事に口出しはしない。俺もあの子に笑っていて欲しいからな」


「ありがとう、クロード」


 エリゼはクロードにお礼を言いながら首元のネックレスに触れた。


 


「それで……国交の件だけど、お前はどう考えている?」


 クロードはエリゼには何か考えがあるのかもしれないと思い聞いた。


「クロード、今このエテルに国交を結びたいと希望している国は四つある」


「四つって、敵対するインクロッチとグリエコ以外全部だな」


「ジュスタ王国はこのエテルにとって地理的にも重要な国だ。だから前王は皇太子の妻としてソフィを迎えた」


「お前はどうするんだ?エリゼ」


「もちろん国交を結ぶ。」


「それだけか?」


「それだけかとは?他に何かあるのか?」


「ソフィ様をどうするんだという事だよ」


「今は何もいえない。まだその時では無いな。ソフィが自立しなければ」


「そうか、じゃあとりあえず、国交はジュスタ王国が一番なんだな?」


「いや、もう一か国ある。チェルラ王国だ。ここはインクロッチとグリエコに挟まれている。ここを押さえたい」


「押さえるって、お前、もしかしてインクロッチとグリエコに戦いを仕掛ける気か?まさか、世界を統一するつもりか?」


 クロードは立ち上がってテーブルに両手をつき興奮した様子で言った。


「そのつもりだ」


「お、お前、いつからそんな野望を!?」


「野望?ああ、そう思うのが普通だな」


「違うのか??」


 エリゼはふたたび首元のネックレスに触れた。

(マリア。お前に会う為だ。マリアが安心して笑える世界を作りたい。ただそれだけの為だ)


「……そのうちわかるよ」

「……」

 クロードはその言葉を聞き黙ったが、徐に立ち上がりエリゼに言った。

 

「エリゼ、俺もお前と戦いたい。ソフィ様は従兄弟のバルバナに任せる。バルバナは優秀な男で俺たちの母校ラビア学園を首席で卒業して、俺が公爵家を継がなかったら次期当主になる人物で信用もできる。お願いだエリゼ、俺も連れて行ってくれ」


 クロードはエリゼに頭を下げた。


「クロード、頭を下げるな、俺たちの間でそんなものはいらない。国交を結ぶ時にバルバナに会わせてくれ。それで決める」


「エリゼ!わかった!必ず連れてくる。国交だがいつ頃の予定だ?二ヶ月後?」


「いや、五日後がいい。時間が勿体無い」


「はあ?五日後?お前、それは無いぞ?」


「嫌ならいい。力づくで国を取るだけだから」


「お前、冗談に聞こえないぞ?わかったよ。すぐに戻って用意させる。じゃあ五日後!」


 クロードは慌ててジュスタ王国に戻って行った。

 


「レオネ、チェルラ王国に使いをだせ、五日後に国交を結ぶと。何か不満があれば来なくても良いと伝えろ、そして翌日は残りの二カ国と国交を結ぶ」


「はいエリゼ様。そのように手配致します」




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