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愛されてはいけない理由  作者: ねここ


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新しい国


 エリゼ、リディオ、ザノッティ一族は揃って城に向かった。

 その周りには数十万の民衆が集まりゾロゾロとついてくる。


 城にいた貴族達はエリゼ一行の迫力に戦争が起きると逃げ出す者も現れ、混乱していた。

 そして逃げることを諦めた貴族は城の前で土下座をしエリゼ達を迎える。


 その様子を見たバルド公爵は震えた。まさか数日でこんなことが起こるなど想像していなかったのだ。

エリゼを呼び出したことを後悔したがもう遅い。城は民衆に取り囲まれ、貴族達は逃げ出し隣にはお飾りの女帝ロザンナだけが残っている。


「バルド公爵、私はエリゼを知っています。話せばわかってくださると思います。お任せくださいませ」

 ロザンナはにこやかな笑顔を浮かべバルト公爵に言った。バルト公爵はその言葉を疑いながらも信じる他道はない。


 二人は城のエントランスでエリゼを出迎えた。バルト公爵は小刻みに震えながらも今更逃げることもできないと覚悟を決め馬を降りるエリゼを見つめた。


 エリゼは馬を降りエントランスで出迎える二人を見た。女帝ロザンナとバルト公爵。その取り巻きの貴族は一人もいない。そしてエリゼの足元に走り寄り土下座をする数十名の貴族たち。

 

 エリゼの周りにはリディオと、ザノッティ一族、そして騎士と私兵、その周りには民衆がいる。


 エリゼは土下座する貴族を見下ろしそのまま何も言わずロザンナとバルト公爵の前に歩いて行った。


「エリゼ、お久しぶりです。ソフィお義姉様と結ばれたそうですね。おめでとうございます」


 ロザンナはにこやかな笑顔を向けエリゼを出迎える。エリゼは表情を変えず淡々と返事する。


「ああ、ソフィは亡くなった皇太子様の妻でしたね。忘れておりました」

 その口調はどうでも良いというニュアンスを感じロザンナは息を呑む。

 

「ところで、なぜ今更私を呼んだのでしょう?」


 エリゼは単刀直入に聞いた。


「あ、いや……この騒ぎはどう押さえたら、と意見を伺いたくてな……」


 バルド公爵はエリゼの迫力に圧倒されしどろもどろになる。エリゼはバルト公爵を睨みつけ強い口調で言った。


「今更?私がいない間ザノッティ公爵家を冷遇しておきながら?この民衆の声も聞かず私利私欲を肥やして、今更……ですか?」

 

 エリゼの怒気孕んだ口調に緊張感が走る。バルト公爵は腰の剣に手をかけようとした時、ロザンナが泣き出し言った。


「エリゼ!!私がいけないんです。何もわからず政をしていたからこんなことになってしまって。でも、エリゼがいてくれたら、ちゃんと立て直します!ソフィお義姉様には悪いけど、ずっと、エリゼを……ずっと待っていたの」


ロザンナは涙を流しエリゼに縋るように話す。バルト公爵はロザンナの言葉に顔を顰め腰の剣に手をかけた。


「言いたいことはそれだけ?」


 エリゼはバルト公爵より早く剣を抜き二人に向ける。ロザンナは驚き後退りをし、バルド公爵は城の中に逃げ出した。それをリディオと騎士達が追ってゆく。


 エリゼはそのままロザンナに近づき言った。


「あなたの罪は無知だ。無知は人を傷つける。帝国のトップとして無知は許されない」


 そう言って一歩踏み込みロザンナの首に剣を当て耳元で囁いた。

 

「俺は誰のそばにいるのか自分で決める。俺が愛する人は一人だけ」


 エリゼはロザンナを斬った。そしてリディオはバルド公爵の首を手にエリゼの元に戻ってきた。


 その一部始終を見ていた貴族達全員が降伏し、たった八日間でエリゼはこの帝国の皇帝になった。


 エリゼと共に城に向かった民衆は新しい皇帝の誕生に熱狂した。

 悲惨な争いをせずに帝国の皇帝になったエリゼは民衆の愛すべき皇帝となったのだ。

 そして民衆達は自分達が選んだエリゼが皇帝になったのだと喜びを爆発させ誰もがエリゼを愛し讃えた。

 


 新たな帝国の皇帝となったエリゼは熱が冷めないうちに民衆の税負担を軽減し、帝国の財産を適正に処理し民衆が住みやすい帝国の基盤づくりに着手した。そして、貴族の腐敗を防ぐ為、貴族の財産を適切に管理し、今まで全く税金を納めていなかった貴族には厳しく取り立てを行い、民衆の不満を解消した。

 スピード感あるエリゼの政は民衆の希望となったのだ。


 そして、帝国の借金を肩代わりしていたザノッティ公爵家には相応の対価を渡し、ザノッティ公爵家の資産は何十倍にも膨れ上がったが、帝国の孤児院や病院などに寄付をしさらに民衆の心を掴んだ。


 即位したエリゼはこの帝国をエテルと名付け、その紋章にオリーブの葉と、ザノッティ公爵家のハヤブサを入れた。


(マリア、このオリーブを見たら俺がお前を忘れていないと気がつくはずだ。俺は必ずお前を探してみせる)


 エリゼは城から見える帝国の街並みを見つめマリアがくれたネックレスにキスをした。


   *


「エリゼ!!お前、城を出て二週間経たずに皇帝になるとは……」

 エリゼが皇帝になったと聞いて早速クロードが会いに来た。


「ああ、クロード、久しぶりだな」

「久しぶりだな?違うだろ?なんなんだ?この展開は!お前公爵家に戻るって言ったよな?皇帝になるとは言わなかったぞ!!」

 クロードはエリゼの肩を叩きながら驚きの再会に興奮する。

「ああ、そうだったかな?まあ、偶然だな。それよりもジュスタ王国はどうだ?上手くいっているか?」

 エリゼはソフィが王として君臨するジェスタ王国の様子を尋ねた。

「エリゼ、ソフィ姫は元気か?とか一番に聞かないのか?お前本当に冷たい男だな」

 エリゼはその言葉を聞き笑いながら言った。

「元気だからお前が来たんじゃないか?」

 クロードはその言葉に口を尖らせ呟く。

「なんでエリゼがモテるのか謎だな」

 エリゼはその言葉を聞き呆れた表情を浮かべクロードに言った。

「クロードは遊びすぎて女性が警戒するんじゃないか?」


「あははは!そういえば城の北側の一室で可愛いメイドちゃんを口説いていい感じになってた時にマリアに突入されたことあって」


「マリアに?」

 エリゼはマリアという言葉に目を見開きクロードを見る。

「ああ、あの子が管理棟に居た時で、突然ドアを開けて、驚いたあの表情」


「……」

 エリゼは呆れて言葉を失う。

 

「あん時は俺も慌てて、マリアもまさか俺だと思っていなかったようで、慌てて部屋から出て行ったよ。今思い出しても笑えるな」


「……ハァ、クロードお前は……」


「なあエリゼ、なんかあの子が居なくなって、なんていうか、ソフィ姫はマリアに似ているけどなんか違うんだよ。あ、エリゼ、ソフィ姫を批判しているんじゃない。気を悪くしたら謝るよ」


「謝る必要はない。マリアとソフィは全然似ていない。真逆の人間だ」


「俺さ、なんかあの子に時々会いたくなる」


「……俺もだよ、クロード」


「知ってるよ。エリゼ」


「……そうか」


「エリゼ、今夜はゆっくり飲もうぜ!男二人で」


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