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愛されてはいけない理由  作者: ねここ


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知らなければよかった。

 これも事実を教えてくれた彼らがよく知っていた。

 


 ソフィ姫は先日エリゼに殺された王だった男ダミアンの娘だったが、政治道具として何度も他国に嫁がされていた。


 ダミアンは生殖能力が低い男だった為、側室を何十人も囲ってもソフィ姫しか生まれなかった。ソフィはその為政治道具として扱われ、結婚を繰り返しこの王国の領土を拡げる道具になっていた。

 

 ことの発端はソフィ姫が十五歳になった年だ。ソフィ姫は十五で他国の王に嫁がされていた。だが、嫁いで程なくすると相手の王は死んだ。最初の嫁ぎ先の王が死ぬとソフィー姫は国に戻された。戻される理由は簡単だ。最初の嫁ぎ先の国は王が死ぬと王妃がその国の全権を担う。ダミアンは娘を嫁がせて娘を通し他国の権利を手に入れていたのだ。ダミアンが狙う国は小国ばかりだった。だが、ソフィ姫を何度も嫁がる中でその権力を広げていったのだ。嫁ぎ先の王は心臓発作や事故その他暗殺や原因不明の病などだ。

 

 嫁ぐたびに夫が死ぬ。その為ソフィは悪魔と契約しているのではないかと噂されるようになり、とうとう嫁ぎ先も無くなった。ダミアンは繰り返しソフィ姫を結婚させることで領土を広げた。その全ての国を束ね大国の王になった。もちろんその全権はソフィ姫にあったが、ソフィ姫はダミアンに逆らうことができず言いなりだった。その為、横暴な王が治めるこの国の民は不満が爆発し、ソフィ姫を憎むようになった。そしてエリゼがこの国を攻めダミアンを殺し新しい国を作り直したのだ。


 マリアはこの国の真実を知り立ち尽くした。あまりにソフィ姫がかわいそうだ。同情する気持ちが湧き上がる。何度も嫁がされ挙げ句の果てに悪女だと言われたソフィ姫。マリアが身代わりになった姫は横暴な姫ではなかったのだ。


(調べなきゃよかった)


 心の片隅でそんな気持ちが浮かぶ。真実がわかりスッキリするどころか、重々しい事実に心の持っていきようが無くなった。本物のソフィ姫は不幸だった。何も罪を犯していないソフィ姫を処刑するなどマリアも心が痛む。だが、ソフィ姫が現れない限りマリアが処刑されてしまう。


 真実を知ったマリアはこの先自分が何をしたら良いのかわからなくなった。だが、複雑な心境でも毎晩の仕事には出かけていった。何かをしていないと気が滅入りそうだった。


  *

 

 ある晩、また北側で幽霊が出たと報告があった。


(今度こそはちゃんと見に行こう)


 マリアは気を引き締め北側の部屋に向かい歩き出した。真実を知って以来マリアは迷っている。どうすれば最善なのか。その答えは出ない。だから、今自分ができることを全うしたいと強い気持ちを抱き暗闇を歩いた。


ゴーンゴーン


 突然鐘が鳴り響き予測しなかった音に心臓が止まるほど驚く。どんなに強い気持ちを持っても、怖いものは怖い。マリアは恐怖にしゃがみ込む。


(流石に怖い……怖すぎる。でも今回こそ、確認しなければ)


 責任感のようなものがマリアを奮い立たせる。マリアは立ち上がり歩き出そうと顔を上げた。その時、マリアの肩に手が置かれた。


「きゃーーーーー!!!!!!」


マリアの悲鳴が響く。


「ソフィ、俺だ」


聞き覚えのある声、エリゼだった。腰が抜けたマリアは胸に手を当て立ち上がる。

 

「はぁ……も、もう本当に驚きすぎて死ぬかと」


マリアは硬った表情を浮かべエリゼを見る。

 

「ソフィ、怖い顔をしているな。いつも笑顔のお前らしくない」


 エリゼは真面目な顔をしマリアに声をかける。

 

「怖い……エリゼ様、怖いのはこっちです。突然肩を掴まれてお化けかと思ったじゃないですか……」


 マリアは目に涙を浮かべ抗議する。そんなマリアを見つめながらエリゼは口角をあげ言った。

 

「ああ、すまない。寝付けれなくて歩いていたらお前を見かけて」


「ハァ、今からお化けの部屋に行くんです。もう突然現れるの、勘弁してください」

 

 マリアは笑顔で話しかけるエリゼに、怒りをぶつけるよな口調で言った。


「ハハハ、すまない……それで、お化けの部屋?何だそれは?」


 エリゼはそんなマリアを見て笑いながら聞く。

 

「お化けが出るって言われている部屋があって、時々物音がするから確認して欲しいと依頼があるのです。あ、前回会った時もメイドさんから言われ確認する途中でエリゼ様に出会いましたね……」

 

「……そうだったか?じゃあ一緒に行こうか?」

 

 マリアはエリゼの言葉に喜びを感じた。一緒に確認してくるとは心強い、そして嬉しい。


「あ、ありがとうございます。実は本当に怖くて。助かります」


 マリアは胸に灯るほのかな恋心を隠しエリゼに言った。

 

 ――それから二人は北側の一番奥にある部屋に歩いて行った。

 

 


 

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