#2 老人
「ああ、ありがとう、ございます」
ーー今晩だけでいいので、家に泊まらせてくれませんか?
こちらが口を開くより先に、その老人はレオンを家に上がらせた。
あまりの勢いに逆に怪しさを感じるが、あいにく今夜はこの家以外に、行き場がない。
「ささ、入って入って、貧相な家ですまんのう!あ、その椅子座っていいよ!」
「あ、はは、ありがとうございます。」
(よく喋る爺さんだな)
言われるがまま、レオンはテーブルに椅子に腰掛ける。
「ふぅぅ、人を家に招くのも喋るのも数十年振りじゃが、やはり会話というのは楽しいものじゃな!あっはっは!」
「数十年も話してないって、何があったんですか」
引っ掛かったワードを口にする。
すると時が止まったのかと錯覚するぐらいに、いきなり音が消えた。
老人は顔から笑みを消し、下を向いている。
沈黙の時間が続く。レオンはまずいことを言ってしまったのではないかと焦り、
「あっ、あの」
「ーー旅人よ、
ーーあなたは『星屑の子』
だろう?」
口角だけをわずかに上げた老人は、質問の答えとかけ離れた言葉をレオンに向けて発し、
そして流れるように、
「ふぉっふぉっふおっ。わしの名は『ガラシア・マサフラシュ』。三十年前までこの国の賢者をやっていた男じゃ。」
衝撃的な告白をしたのであった。