#1 本当に来ちゃったよ
「ーー本当に来ちゃったよ」
壮大な景色に、レオンは息を呑む。
見渡す限りの草原と、遥か遠くに待ち構える雪山。
「ィィヤッハァァァァァ!!」
草原を子犬のように走り回る。
現世の自分はどうなったのか、てっちゃん達は何をしているか、気にならないわけではない。でもいつか両方ともなんとかなるはず。せっかく異世界に来れたのだ。二人には悪いがこの幸運を逃すわけにはいかない。だから今は、この世界を全力で攻略しよう。
「あの山の先の魔王を可愛い魔法少女と一緒に倒して、ギルドの美女たちに祝福されるんや!!」
レオンは遠くにそびえる雪山に向かって伝説の始まりを叫んだ。ちなみに魔王が山の先にいるというのはただの勘だ。
まず何をすればいいのかと考えレオンは、第一村人を探すことにした。丘に登り周囲を見渡す。
北に山脈。東から西に向かって小さな川が流れており、南には広葉樹の大森林が地平線の彼方まで続いている。そして遠くの川のほとりに、小さな家と小さな畑を発見した。
(今日の目標はあそこまでだな)
草原は想像以上に広く家に着く頃には、すっかり日は落ちていた。
「ごめんくださーい」
ドアをノックし主の登場を待つ。
「どうぞどうぞ旅人さん。寝床を探しておられるのでしょう。今晩は、是非うちに泊まってくださいな。」
ドアを開けたのは、杖をついた一人の老人だった。