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知らない人達

 私は自称で探偵を名乗っているが何もそれで生計を立てている訳ではない。寧ろそれは私の強い正義感が生み出した権化だ。

 ではどうしているのかと言うと、叔父が経営するこじんまりとした喫茶店で働かせてもらっている。家から徒歩でも10分くらいの所にあるのでいつでも来れる。

 特別繁盛している訳では無いので忙しくも無く、それなりに空き時間ができる。

 それが私の探偵としての時間となる。



 かの呆気ない大事件から数日が経った。殺人事件なんだからそりゃもう大事件だ。

 またいつもの日常が戻ろうとしていた今日この頃。入り口につけられたドアベルが鳴り、またお客さんがやって来る。店主が数ある中から選び抜いた真鍮のベルだ。

 さっきまでは、常連で店主の友人である畑野さんしかいなかったが、12時を回ったあたりで、そろそろ少ない客も増えだす。

 


 焼けたばかりのシュガートーストの匂いが店中に漂っている。毎日嗅いでいるがなかなか飽きないものである。


私は入店したスーツ姿の女性を案内した後、シュガートーストを畑野さんに運んだ。自営業をしているらしい彼は、空いた時間にブランチを食べに来ていた。

「景輝くん、最近どうなの。」

「いい感じですよ。この前とか、」

 と探偵っぽいことをしたなと思い、言いかけたが人が死んでいい感じなわけないのでやっぱりやめた。

「まぁ、充実してます。」

「そりゃ良いね、それに越したことはないよ。」


 そんな事を話しつつ、さっきの女性に呼ばれたので「はーい」と返事をして席に向かう。

 彼女は初めて見るお客さんだったが、メニューにおすすめと書かれているフルーツサンドと、紅茶を頼んだ。

  

 店主に注文を伝えたところで畑野さんに手を振って呼ばれた。

「景輝くん、ちょっと」

「なんでしょう」

 神妙な面持ちで言ってきたので、こっちも少し身構える。

「いやね、ちょっと教えて欲しい事があってね」

 そう言いつつスマホの画面を私に見せてきた。

 そこには荘厳そうな建物の写真が映し出されていた。

「なんですかこれ、なんかの宗教のやつですか?」

「いやぁ僕もそうかなあと思ったんだけど……」

「そもそも何でこんな事聞くんですか?」

 畑野さんのスマホのカメラロールに入っているが、なぜこんな写真を保存したのか。

「これは、完成予想図らしいんだけどね。友達から送られてきて、なんかの宗教にハマってんのかなって」

「なんて言って送られてきたんですか?」

 そりゃ確かに不安かもしれないが、ただそんな建物が建つってのを教えたかっただけかもしれないし、どこにいつ建つのかも分からない。

「美上市のでっかい空き地に建つって計画がそこまで来てるから、出来たら見に来いって。」

 美上市とはこの町の隣の市である。

 美上市のでっかい空き地と聞いたら思い浮かぶのは一ヶ所。そこはもともとスーパーがあった所だが、解体され長らく空き地として放置されていた。

 あそこはもともとスーパーがあっただけに立地がいい。周りは役所や学校、幼稚園などとも近く、今ではその空き地を除いた所が住宅地になっている。


 ずっと空いているとは思っていたが、そんなのが建つとは。空き地ではあったがずっと売りに出されてはいなかった。

 これは依頼ではないが、探偵である私が頼まれたとなっちゃぁ調べてやるしかない。


 次の日、店は休みなので早速その空き地へと向かった。そこには昨日見せてもらったのと同じ絵が描かれた建築予定図の看板が建てられていた。そしてその下には『導空教美上分教会』と書かれていた。

 やっぱり宗教じゃないか。導空どうくう教?聞いた事が無いな。どのみち新興宗教だろう。

 分教会と書かれているからにはつい最近できたとかでは無いだろうと、一旦ネットで調べてみた。


 導空教とは昭和後期に岐阜県で設立された。日本の中心である岐阜県で生まれた人が教祖らしい。自らを神の子と名乗り、彼自身が作り上げた宗教だ。信者数も50万人を超え、世界に400個くらいある新興宗教の中でも20番以内には入る。

 もちろん公式ホームページも作られ、それを見る限りではそれなりにしっかりしてそうなイメージだ。


 看板以外はただただ土の空き地が広がっているだけだったので帰ることにする。今の時代にこの田舎のあんなでかい土地に教会を作れるなんて信じられない。比較的新しい宗教とはいえ。


 何はともあれ受けた依頼の分は達成した。次の日も畑野さんは店に来たので報告した。するとその友人に詳しく聞くと言って、すぐに電話をかけていた。

「おいあれやっぱり宗教だったじゃねぇか。」


 電話相手を問い詰める声が聞こえる。友人がよく分からない宗教にハマってたら嫌だよな。分かるぞその気持ち。


 10分くらい経ち電話が終わったようで、「景輝くん、ちょっと」と呼ばれた。客も少なくなった13時過ぎくらいで手が空いていたのですぐに向かう。

「景輝くん、どうやらあいつかなり入れ込んでいるらしいぞ。」

 あいつって言われても自分は知らないんけど。

「それは敬虔な信者ってことですかね?」

「あいつは無駄に金を持っているからな。」

「何かされてるんですか?」

「いや知らんな、あいつは秘密主義者だ。」


 そんな話をしていたら店主に呼ばれたのでその場を離れる。まぁ畑野さんの友人の事は自分には関係ない事だ。

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