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氷地獄の妖精  作者: ありんこ
プロローグ
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プロローグ

目が覚めるとそこは一面真っ白な空間だった。



 (どこだここ。俺って確か部屋で寝てたよね?だから、目が覚めたらいきなりこんな景色が広がってるなんておかしいよね?そうだよね?)


 混乱しながら、成人したてと思われる見た目の男性が辺りを見回す。


 (いや、360°どこを見ても白いとしか言いようのない空間なんだけど、本当にどこなんだここは。とりあえず大声だして他に人がいないか確かめてみるか?)


 なにも無い空間に混乱しながら、彼は他に人がいるか確かめようと、その方法を考える。



 (よし叫んでみよう!)


 そう意気込んで、口を大きく開き叫ぼうとしたが....



・・・・・・



 (どうしよう!声が出ない!!どうゆうこと!?なんで声でないの!?これは夢なのか!?だとしたら、あまりにも意識が起きてる時と変わらないんだが?いや、慌てても仕方ないぞー俺。いったん冷静になるんだ。うん。)


 声が全くでないことに、余計混乱した彼は、とりあえず落ち着こうと深呼吸を始めた。


 (はい深呼吸深呼吸。スーハースーハー。といっても、空気すらなさそうだからいみないんだけどね...)


 (とりあえず、今の状況を整理しないとな。まず、俺はいつも通り、大学から帰ってきて、ぐーすか惰眠していた。そして、目が覚めたらここにいた。普通に考えたら意味が分からない。だけど、俺には一つ心当たりがある。それはずばり!転生だ!!!)


 落ち着いた彼は、自分の状況を整理していると、一つだけ心当たりを見つけた。それは、転生。

 常日頃から暇を持て余し、最近流行りの異世界転生系の小説を読み漁っていた彼だから出てきた発想である。


(だとしたら、神様がいるはずだよね!でも、いないんだよね!どうしたらいいんだろう!神様ー!?いらっしゃいますかーー!?)


 異世界転生と言ったら定番の神様がいないことに不安を覚えた彼は、とりあえず心の中で叫んだ。

 すると



「やぁ、初めまして」


 (うわぁあ!?誰だよこの人!?急に目の前に現れやがった!びっくりして心臓止まるところだったぞ。マジで。冗談抜きで。でも、たぶんそうだよね?神様だよね?)


「うん、そうだよ。大体は君の思っている通りさ」


 (やっぱりそうらしい。思いっきり心読まれてるもん。普通そんなことできるわけないじゃん。それにしても、やっぱり俺は転生するのか!?)


 急に現れた、神様に腰を抜かしそうなほど驚いた彼は、もしかすると転生するかもしれない事に、内心、心を踊らせた。


「そう、君はこれから転生することになる。そして、僕は神様、と言いたいところだけど、実は違くてね。君の住んでいて地球でいうところの、天使みたいな存在さ。名前はないから適当に呼んでくれてかまわないよ。」


 (やっぱり転生するんだ!そしてこの人は神様ではなく、天使様だった!。名前は勝手にミカエルと呼ばせてもらおう。というか、しっかり挨拶したいから喋りたいんだけど、なんで喋れないんだ。)


 転生すると知った彼は、喜びを隠そうともせず表情に出した。そして、神様ではなく、天使様だったミカエルに挨拶をしようにも喋れないことに、少々戸惑った。


「はは、ミカエルかいいね、気に入ったよ。というか喋れないままだったね。ごめんごめん。今喋れるようにしたから試してみて」


「あ、あーーー。おー!喋れた!」


 (ようやく喋ることができた!なんかよくわからないけどミカエル様ありがとう!よし、挨拶をしよう!)



「初めまして、ミカエル様。私、空澄楓あすみ かえでと申します。よく女の子っぽい名前と言われますが、男です。よろしくお願いします」


 (そう、俺は名前が若干女の子っぽいからと、名前だけだと男だと思われないことが時々あるのだ!だけど、俺は自分の名前が好きなので、特に気にしてはいない。うん。気にしてないものはしてない。)


 嘘である。楓は、名前が女の子っぽくて、名前だけだと女の子に間違われてしまうことに、悲しみを覚えているのだ。


「うん、知っているさ。でも挨拶ありがとう。じゃあ、とりあえず君が何故ここにいるのかと、これからのことについて話すけどいいかな?」


「はい!それは自分も気になってました!」


 (転生することは分かったが、なぜ自分が転生することになったかはまだ分かっていないんだ。それを知らないと、気持ちよく転生できそうにないので早く知りたい。)


 小説だと、何か使命があったりするものだと思い、自分が何故転生することになったのかを、楓はミカエルに問う。


「単刀直入に言うと、君は突然死したんだよ。心筋梗塞だ。その後、なぜか君の魂がここまで流れ着いたから、転生させることにした。ようするに、たまたまだね。普通、死んだら魂は、死んだ世界の輪廻へと還元され、それがまた新しい命となって循環するんだ。でも、今回の君みたいに、たまにその輪廻の循環から外れて、違う世界の輪廻に混ざってしまうことがある。そして、転生する。だけどね、異なる世界の魂が異なる世界の輪廻に割り込んでも、その世界の輪廻に順応することができず、世界の理に則って輪廻転生することができない。だから、ここで君の魂を転生する世界に順応できるようにして転生させる。普通は前世の記憶を持ちながら転生することはできないんだけど、この場合はそれができるようになる。それが、今回君が体験する異世界転生というものだ。ここまではいいかな?」



 (...ある程度理解はできたが、難しすぎる。まぁ、つまりは俺の魂の形を変えて、記憶はそのままに転生することができるということだ。ならいいじゃないか。細かいことを考えるのはやめよう。)


 (というか、俺は突然死したのか。それも心筋梗塞。なんで?うーん...わからない。わからないなら別にいいか。転生できるんだし。それに俺の両親は既に他界してるし、彼女がいる訳でもない。バイトして毎日ダラダラしているだけの大学生だしな。地球に未練はなし!)


 楓は既に両親を亡くし、バイトをしながら、ぐだぐだ過ごしているだけの大学生なのだ。おまけに彼女もいない...


「はい。大丈夫です。説明ありがとうございます」


「うん。じゃあ次は君が転生する世界の事とか、君の今後についてだね」


 そこで、ミカエルは一呼吸入れた。


「これから君が転生する世界は、『ミルン』という名前の世界だ。大きさは地球の数倍ある。そして、ミルンには、当たり前のように魔法が存在する。一応、魔法について説明しておくね。魔法とは、魔力によって引き起こされる現象のことを言うんだ。魔力は、量の差はあれど、ミルンの全ての人間に存在している。ただ、『才能』がないと魔法は使えない。ここでいう才能とは、生まれ持った魔法の属性の事だ。だから、どれだけ魔力の量が多くても『才能』がないと使えない。魔法とはそういうものさ。そして、現在魔法を使える人間は、大体人間全体の半分いくかいかないかくらいかな。そして、これは朗報。君には魔法の『才能』がある。属性は水と無だね。加えて、既に魔力量はミルンの中でも上位に入るくらい多いよ。ただ、いくら魔力量が多くても、技術が伴っていないと、威力は出せても、高確率で自滅するだけだから気を付けるんだよ。」


「ミルンですか。全く聞き覚えのない星ですね。まぁ、当たり前なんですけどね。それより、私に魔法の才能があるというのは本当ですか?」


 自分に魔法の才能があると聞き、楓は物凄く喜び、期待した。


「うん、本当だよ。君には相当な魔法の才能がある。よかったね。では、次の話に移ろうか」


 楓の質問に答えたミカエルは、淡々と話を進めていく。


「はい。お願いします」


「次は、ミルンの文明とかについてだね。ミルンは君が住んでいた地球みたいに科学技術は発展していない。これは、魔法による弊害だね。だから、文明的には地球より数段劣っている。まぁ、君には魔法があるから苦労することはないだろうけどね」


「そうなんですか、魔法があるとはいえ、科学技術が発展していないのはちょっと残念ですね。私は、毎日スマホをいじってダラダラすることが日課だったので...」


 楓は、自分が何故突然死したのか不思議に思っていたが、第三者から見たら、その日課が原因なのでは...と思ってしまうのも、仕方ない話である。


「まぁ、地球に住んでいたらそう思ってしまうのも仕方ないね。でも、魔法があるんだ。恐らく、飽きることなく生活することができると思うよ。なんせ、これから君が過ごしていく世界は、君にとっては『異世界』なんだからね」


「たしかに、それもそうですね!既に魔法があると知っただけで、飽きる気がしません!楽しみです!」


 楓は、自分の死因など既に忘れているかのように、異世界に興味津々なようだ。


「それは良かった」


「はい!お話を止めてしまってすみません」


 (それにしても、話を聞けば聞くほど、転生するのが楽しみになってきたぞ!特に魔法!俺は、魔法を極めるんだ!)


「いいよいいよ。じゃあ、続きを話そう。次は、ミルンの生き物について話そうか。ミルンには地球と同じように人間もいる。そして、地球には存在しない亜人や魔物も存在している。具体的に言うと、獣人、エルフ、ドワーフ、最後に魔人といった感じだね。獣人や、エルフ、ドワーフなんかは、君が想像している通りの存在さ。魔人は、俗にいう魔族という存在だね。魔人は人間と同じように、全員が魔法を使えるわけではないが、人間より圧倒的に身体能力が高い。そして、昔から人間と敵対している存在さ」


「うわぁ、ザ・ファンタジーって感じな世界ですね。想像してたのと全く一緒です」


「ははは、まぁそんなもんさ。どっちかというと地球が特殊なだけだよ。ほら、地球は過去に魔女狩りなんかがあったでしょ?それのせいで地球からは魔法を使えるものが消えてしまったのさ」


「え!?そうなんですか!?」


「うん、そうだよ。でも君はもう地球人じゃなくなるんだ。そんなこと気にしても、精神衛生上よくないよ。」


「そうですね。そうします」


 (たしかに、もう俺は地球人じゃなくなるんだ。とても気になりはするが、今更そんなこと知ってもどうにもならないしな。)


「よし、じゃあ、ミルンについての最後の話をしようか。実は、ミルンには、レベルやスキルは存在しないんだ。だから、君の想像している世界とは少し違う。ミルンでは、体力や筋力などの身体能力は、地球と同じように、鍛えて身に着けるしかない。魔法も同じだ。スキルやレベルに頼れないから、自分がどれだけ魔法の訓練をしたかによって、魔法の実力は左右される。ただ、スキルやレベルがない代わりに、ミルンに住んでいる生物たちは、地球に住んでいる生物に比べて、遥かに身体能力が高いし、伸びしろも大きい。だから、スキルやレベルがないからと言って悲観するようなものでもないよ」


「スキルとかレベル制じゃないんですね。でも、自分がめちゃくちゃ強くなれる可能性があるなら、そんなことはどうでもいいです!!あっ、でも、スキルがないってことは、魔法には決まった形態がないってことですか?その場合、魔法ってどのように使うんですか?」


 自分の想像していた世界と、少し違うことに、少々落胆するも、すぐに気持ちを切り替え、楓は質問を投げかけた。


「いい質問だね。君の疑問の通り、魔法には決まった形態はない。魔法は、自分のイメージを具現化して使うんだ。といっても、技術が伴っていないと、上手く扱うことはできないんだけどね。ただし、人間の国では、詠唱によって魔法が使われている。本来、ミルンには魔法の決まった形態はないんだけど、人間たちは、独自に詠唱魔法を見つけ出し、使用しているようだよ。正直に言うと、無駄でしかないんだけどね」


「イメージの具現化!最高ですね!!一層楽しみで仕方がありません!それに、自分は詠唱魔法にも憧れがあるので一度は見てみたいですね」


「そうかそうか。そんなに楽しみでいてくれるのは、こちらとしても嬉しい限りだよ」


 そう言ったミカエルは、一度呼吸を整えた後、真剣な眼差しを楓に向けた。


「じゃあ、最後に君について、重要な話をしよう。実は、君を転生させるにあたって、魂の形をミルンに適応できるように変えていたら、君の魂はハイエルフの魂と同じものになってしまってね。ハイエルフとして転生することになってしまったんだ。別にエルフが差別されているとかではないから問題ないとは思うんだけど、大丈夫かな?」


 なにやら、真剣な顔をして自分を見てくるので、何か悪い知らせでもくるのかと思って、身構えた楓だったが、その話を聞いて、目をキラキラさせた。


「ハイエルフ!?ハイエルフって、普通のエルフより凄い精霊と契約できたり、寿命がめちゃくちゃ長かったりする、あのハイエルフですか!?」


「そう、そのハイエルフだよ」


「全然大丈夫です!なんならうれしいです!つまり、ゆっくり世界を満喫しながら、魔法を極めることができるってことですよね!最高じゃないですか!ありがとうございます!」


 楓は、人間以外の種族になることに、抵抗すらないようだ。


「そっかそっか。ならよかったよ。よし、これで話は大体終わりかな。何か質問はあるかい?」


「あ、じゃあ一つだけ。自分はどこら辺に転生するんですか?」


 自分がどの辺に転生するのか知りたかった楓は、遠慮なく質問する。


「それについて説明するのを忘れていたね。君が転生する場所は、特には決まっていないんだ。普通に考えたら、人間の国か、エルフの国になるんだけど、希望があれば聞くよ。ちなみに、赤ん坊に転生するのが嫌だったら、あらかじめ成人した頃くらいの身体で転生させることもできるけど、どうする?」


 楓は、自分の好きなところに転生できるのに加え、成人した身体で転生できる選択肢があることに、再び目を輝かした。


「じゃあ、魔法とかいろいろ練習したいんで、あんまり人が来なくて、魔法を使いまくっても大丈夫そうな場所がいいです!やっぱ、ハイエルフに転生したなら、スローライフみたいな感じにいきたいです!あと、赤ん坊からは面倒なので、成人したてぐらいの身体で転生したいです!」


「分かったよ。じゃあ、場所は、人間と亜人たちの大陸の最北の森にしておくよ。一応、家と、一年分くらいの食料は用意しとおくね。もし、人里におりたければ、南に進んでいけば着くから、覚えておいてね。このくらいでいいかな?そろそろ転生させようと思うんだけど、大丈夫かい?」


「はい!大丈夫です!説明ありがとうございました!」


「うん。じゃあ良い異世界ライフを」


 その瞬間目の前が強く光り、酷い眠気に襲われ、意識を失った。


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