ひとりぼっち
せめてscarがないかなーと漁り続けるも、他のチームが目ぼしいものは持っていっちゃったか元からないのか見つからない。
そんなとき、遠くからやってくるセスナの音。
「イアさん! あれ取りましょう!」
何処で落とすかわからないので、建物から出てひたすら空を見上げて視線で追いかける。
パシュッ。サイレンサーで狙撃される音。肩を掠っていくのに気付くと同時に、建物の陰に入ってしゃがむ。
「迂闊だな、マメ」
「ごめんなさい!」
取り敢えず包帯巻き巻き。ついでにエネルギードリンクごくごく。現実ならゴミはお持ち帰りだけど、戦場ではその場にポイ。何度やっても心苦しい。
「方向わかりました?」
「多分SEの山頂」
「仕留めるなら囮になりますよー」
ここに芋ってても補給物資取れないし。うー。早くコンテナのとこ行きたい!
「お前の個人的な事情が透けて見えるが、ま、それが妥当か」
「収縮前に移動したいですしねっ」
あっちの山も次のエリアからは外れている。こっちの方が近いけど、それでもやっぱりエリア外なんだよね。
元気を取り戻した私は、そろっと建物から覗いてみる。間髪置かずに放たれた弾が、アバターの髪の先を掠めて塀を穿った。
(引っ込めるの間に合って良かった~!)
スモークグレネードのピンを抜いて塀との間、それから塀の向こうに投擲する。次々と煙が拡散されて、コンテナまでのスモークロードの出来上がり。
(よし、行くか!)
「信じてますよ、イアさん」
「Sure」
なんで英語やねーん! と心の中で突っ込みながら、私は陰から飛び出した。
何発か予測射撃が掠めていったけど、適当にジグザグに走り続けていると、建物内からガウンと重い音が響いた。
続いてバイザー左下に現れるダウン表示と次の銃声。確殺だ。
(ヘッドショット一発なんて流石イアさん。頼もしすぎる)
コンテナに無事辿り着いた私は、持っていた銃を二丁とも捨てて、中身を取り出した。
「イアさん、いいものゲットー」
「嫌な予感がする……」
「九ミリ残り少ないし、MPも置いていきます」
「てことはまさか、」
言いかけたイアさんが息を呑む気配がした。
「特定された」
「えっ?」
イアさんがいるはずの建物から、閃光が漏れてきた。
「イアさん!」
耳鳴りで何も聞こえていないはずのイアさんに呼びかけて引き返そうとした途端、
「来るな! そのままエリアに入れ!」
と叱咤される。
バイザー端では、収縮のカウントダウンが始まっている。あと、数秒。
軽機関銃とアサルトライフルの音が交錯し、左上に表示されているイアさんの体力がミリになった。
反転していた身体をまた返して、私は走り出した。
イアさんがダウン表示になる。
収縮が始まり、建物がパルスに呑まれていく。
イアさんの表示が、死亡に切り替わった。