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キカンボ、委ねる

 崖を降りると、三人のゆきんこちゃんたちはそわそわし始めました。

「一体どうした。よく落ち着かねえか」

 キカンボは背中を揺らしてあやします。それでもゆきんこちゃんたちは止めません。

 そわそわ。そわそわ。

 キカンボの鼓動も早鐘を打ちます。

 白い雪に紛れるように、美しい女の人が立っていました。

「間違いない。ありゃあ雪女だ」

 雪女は氷でできたお化けです。触れただけで息が止まってしまうと恐れられています。

 もしもゆきんこちゃんたちを届けたら、キカンボは凍らされてしまわないか心配です。額に滲んだ汗がぽたぽた垂れてきました。

「ええい、雪に埋まって助けてもらったご恩を忘れるおいらじゃないやい」

 心を決めて、キカンボは雪女に歩み寄ります。

「迷子のゆきんこちゃんを届けにきたぜ」

「あら、ワタシの可愛いゆきんこちゃんや」

 雪女が振り向くと、まるで吹雪に飲まれたような悪寒に晒されます。思わずキカンボは膝をつきました。きっと凍り漬けになるだろうと、キカンボは固く目を閉じます。

「ありがとう」

「えっ?」

 細目を開けると、雪女に抱えられたゆきんこちゃんたちが微笑んでいるのです。

「ありがとう。ありがとう」

 たくさんお礼をされたキカンボは胸が春の陽気で満たされていくようです。

「不思議だなあ。心地好いなあ」

 キカンボの体が少しずつ軽くなっていきます。柔らかな光に包まれる夢を見ながらキカンボは意識を手放しました。

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