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キカンボ、のぼる

 吹雪がごうごうと舞い踊ります。樹氷目指してキカンボとゆきんこちゃんは歩いていました。キカンボが、膝まである雪を掻き分けているとゆきんこちゃんが背中を叩きます。

「ん、どうしたんだい?」

 指差す方を見上げると、なんと樹に登って降りられなくなったゆきんこちゃんが泣いているのです。

「やや、おめえさんの兄弟かい」

 キカンボが尋ねると、背中のゆきんこちゃんは頷きます。

「こんなに寒いのに樹に上るなんて、お転婆だなあ」

 知らないふりをしてキカンボは通りすぎようとします。すると行く手を阻むように猛吹雪が襲います。

「仕方あるまいな。ええい、この際だ。あいつを助けてやろう」

 風がおさまるまでの間に、キカンボは樹に登り始めました。

 ごうごうごう。どっちみち吹雪が止まなければ前に進めません。

「よいしょ、よいしょ」

 キカンボはかじかむ手を息で温めながら、ささくれだった木の幹をよじ登るのです。

 ごうごうこう。まだ風は衰えません。キカンボは懸命に上を目指します。

「ふう。やっと着いたなあ」

 とうとうキカンボは泣いていたゆきんこちゃんに会うことができました。

 そのときです。突然木が大きく揺れました。たまっていた雪が一斉に落ちていきます。

「やい、何が起こったんだあ?」

 キカンボが目をしばたたかせていると、静まり返った雪山の頂上から雪崩がやってくるではありませんか。物凄い早さで辺りを飲み込んでいきますが、キカンボは木の上にいたので難を逃れました。

「危なかったよ。もしも下を歩いていたらひとたまりもなかっだろうに」

 キカンボは冷や汗をかきました。

 雪崩が過ぎ去ったあとは、吹雪もピタリと止みました。

「どれ、おめえさんもついてこい」

 そう言ってキカンボは背中にもう一人ゆきんこちゃんを乗せたのでした。

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