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黒山羊様の導きで異世界で令嬢になりました  作者: sisi
第五章 シャルロッテ嬢と噛みつき男
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346話 宝石です

「ええと、あまり詳しくないのですが薔薇石英(ローズクォーツ)とかですか?」

「そうです、例えばその石はピンクで美しいだけでなく、美や癒し慈しみを象徴して淑女に必要なものを兼ね備えているといわれています。それを持つことによって女性らしさをより輝かせる事で意中の相手を射止めるというお守りになるという訳です」

 立ち居振る舞いや知性を磨いても物足りない人の味方と言う訳かしら?

 努力以上に何かとなると、そういうものが出てくるのだろう。

 気が弱くなっている時とか、お守りを持つと心強いものね。

「なるほど」

「そういえば近年では朧水晶(ダンケルクリスタル)なる新しい水晶も発見されて宝石市場を騒がせましたね」

「朧水晶?」

 うーん、本当に私はそういう煌びやかな話題に疎い気がする。

 でも興味がないのだから仕方がない。

「ええ、ある鉱山から新しく産出したようで従来の水晶よりも硬度が低くて加工しやすく重宝されているのですよ。あと、なかなか面白い噂があってその水晶が歌うとかいう話も」

「まあ、なんだか不思議な話ですね」

 湯沸かし器が歌うのは、沸騰してぷしゅーっとなるので理解出来るけど、水晶が歌うとはどんな感じなのだろうか。

「ああ、話がそれてしまいました。水晶には精神を安定させたり、拠り所となる効果が注目されていますね。単に美しくて気が紛れるということかもしれませんがね」

 まあ、綺麗なものを見て気分が悪くなる人はいないだろう。

 なかなか宝石の世界も奥が深そうである。

 それにしても、こういう蘊蓄はギルベルトからは出ないものなので新鮮だ。


「古来から宝石は身を守る為に使う事もありますから、貴族の中にはその石の持つ力を重要視する方々も多いのです。効能は多岐にわたりますから、悪夢除けの石もきっと探せばあると思いますよ。私などもほら、カフスに翡翠を使っているのです。翡翠は『人生の成功』をもたらしてくれると言われています」

 そう言うと、袖口をチラリと見せてくれた。

 そこには深緑の宝石が光を放っている。

 なるほど、宝石とはファッション性の他には財産を誇示したり飾り立てたり、見せびらかす為のものだと思っていたけれど、それだけではないようだ。

 そういえば魔術儀礼の時も、魔力の判別に大きな宝石の原石を四大元素に見立てていたっけ。

 薬草の効能が高いこの世界なのだから、宝石の持つそういう力も強いと考えて良さそうである。

 でも翡翠のカフスのこの青年は今、悪徳の神に目を付けられている訳だが、それは『人生の成功』から大分離れたもののような気がした。


「誰かそういう事に詳しい方はいらっしゃらないかしら?」

 ソフィアが詳しそうだと思ったのだが、なんて事はない彼女は宝石に造詣が深い訳ではなく、単に流行に聡いだけであった。

 恋愛成就のお守りにしか、詳しくないのは仕方がない。

 誰でも、自分の興味のあるものしか頭に入らないもの。

「ロンメル商会はどうですか? 宝石も扱っていますし、シャルロッテ様も懇意にされているのですから手を尽くして下さるのでは?」

「そうですね。隠蔽されたもの(オカルト)には関わらないようにしているとの事ですが、宝石の意味を重視する貴族の方がいらっしゃるなら、知識は豊富な気がします」

 餅は餅屋というし、石も扱う彼に聞いてみようか。

 私は早速書状をしたためると、従僕に直接ロンメルへ届けるように手配をした。


 あの夢。

 私が起きた時、クロちゃんもビーちゃんもなんの反応も無かったということは、私に直接働きかけたものではなかったのだ。

 私が兄の夢を見たのは、家族だから?

 タウンハウスという近い場所で眠ったから?

 それとも両方かもしれない。

 兄が狙われているなら、クロちゃん達が兄と一緒にいれば夢も遠ざけれそうな気がするけれど、落ち子が出没する中では、私と離れたがらないかもしれない。

 一番いいのは兄も別邸の客室で眠ってもらうことだろうか?

 そうしよう。

 兄妹なのだし、私達はまだ子供なのだから無作法だと怒る人もいまい。


 お腹が膨れたせいか、兄は少し眠たそうな風だ。

 無理もない。

 あんな夢が続いたら、大人だって倒れてしまうだろう。

 兄は気丈な人だから、夢が怖くて眠りたくないなんて弱音は吐かなそうだ。

 早めに寝させてあげないと。

「兄様、夢見が悪い時は枕を変えるといいと言いますわ。別館の私が使っている部屋で少し仮眠をとられてはどうかしら? 今なら、クロちゃんもお貸しいたします! すべすべもふもふで、抱っこして眠るのはそれは気持ちいいんですよ」

 兄は最初遠慮していたが、もふもふという言葉に反応してか、すこしそわそわしたような気がした。

 貴族の子供が、動物と眠る事なんてまずないのだもの。

 猫ならば勝手に寝所に入ってきそうなものだけれど、エーベルハルトの家では飼ってはいないし狩猟犬達は私室へ上がらないように管理されている。

「確かに気分転換に別の場所で昼寝をするのは悪くないかもしれないね。お言葉に甘えてそうしようかな」

 お腹がいっぱいになれば、眠気がくるのは自然の摂理だ。

 兄は素直に誘導されてくれた。

「ええ、是非そうなさって」

 さあ、クロちゃんに兄の夢を守るようによく言い含めないと。



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