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黒山羊様の導きで異世界で令嬢になりました  作者: sisi
第五章 シャルロッテ嬢と噛みつき男

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274話 手練れです

 とにかく、私みたいな子供に経産婦かどうか聞くのはおかしな話だが、未婚の女性にする質問としては不適切であるには違いない。

 ハイデマリーの勢いに押されてか、ガルシアは少し気圧されたように言い訳をした。

「これは失礼したね。仔山羊様への物言いや何やら母親っぽく見えたもので、つい口から出てしまったんだ。そもそもうちの国では10歳やそこらで子供を産むのは聞かない話でもないもので……」

「10歳で!!?」

 私は素っ頓狂な声を上げた。

「若い妻を求める男は少数ながら一定数いるし、なんと言っても私の国は金さえあれば何でも出来るものでね」

 確かにそうとは聞いていたが、配偶者まで金で見繕うとはなんとも言えない気持ちになる。

「かく言う私の母も11歳で私を産んでいるので、つい母を思い出してしまって失礼な事を聞いてしまった」

 ポリポリと頭を掻きながらの様子を見ると、あまりその事を口外する気はなかったのだろう。

 失礼な事を言ったお詫びにと、自分の弱みを話してとりなそうとしている感じだ。

 今の私と変わらない歳で出産するとはいろいろ大変だったろう。

 昔の日本でもそういうことがあったのは薄っすらと覚えているが死亡率も高かったはずだ。


「父の家は豪商で、爵位を求めて困窮した伯爵家とその娘である母を買ったのですよ。我が国は拝金主義に変じてからは金を積めば大体の事は通ってしまう。成金が貧乏だが血筋のいい少女を妻に迎えいれて、名誉まで望むような事はざらにあるのです。我が家のようにね」

 ハイデマリーも商業国家を知識としてはわかっていても、当事者からの言葉に驚きを隠せないようだ。

「幼い母はいつまでも少女のようでした。まあろくに学も無いうちに買われては仕方のないことかもしれませんね」

 成金と名家の縁組、それ自体はこの国にも無い話ではない。

 歳の差結婚というのも、珍しいものでもない。

 血統や爵位を重んじる為に、20や30歳離れた夫婦もいないことはないのだ。

 但し、王国では婚姻年齢は18歳と決まっているので子供が人身御供のように差し出されることはないはずだ。

 いや、国王を隠居したノルデン大公に求婚した私が歳の差婚に何かを言うのは変な話だが……。

 ともかく歳の差があろうがなかろうが、未熟な体での出産は帝王切開になったりと大変なはずである。

 いくら魔法があるとはいえ、この時代の外科手術など一歩間違えれば命に関わるのだから。

「まあ、そんな訳で聖女様を見ていたら母を思い出してしまったということです」

「今、お母さまは?」

 ハイデマリーの言葉に、ガルシアの顔が寂し気になる。

「若くして亡くなりましてね」

「まあ、それはお気の毒に……」

 確かに気の毒な話なのだけれど、ハイデマリーはすっかり彼に同情し、先ほどの叱咤を後悔しているように見える。

 この子、こんなに人が良くて大丈夫かしら?

 よくよく考えれば、初対面の人間にこんな話をするかしら?

 すっかり同情的になったハイデマリーは、先ほどまでの警戒心は何処へやらという様子である。

「シャルロッテにお母様の面影を見たのはよくわかりますわ。お小さいのに母親みたいなところが、んんっ……、うん。失礼しましたわ。少し喉の調子が。ええ、シャルロッテは包容力がありますもの」

 ん?

 今ハイデマリーは、私の事をおばちゃんっぽいって言った?

 いや、母親みたいなって言ったわね。

 もしかして、やはり年齢が滲み出るものがあるのかしら?

 私は自分の身なりを確認するかのように、その滲み出る何かを確認しようとドレスの裾や袖を見てみるが自分でわかるものでもなかった。


「名乗りが遅れましたね。申し訳ない。私はルフィノ・ガルシア。伯爵位を継いでおります。グローセンハング共和国から参りました。お優しい貴女のお名前を聞いても?」

「ハイデマリー・レーヴラインですわ。以後お見知りおきを」

「貴女が、かの高潔姫ですか。リーベスヴィッセン王国の宝玉のひとつであると噂には聞いております。聖女様への不敬を臆することなく正そうとするその姿勢、確かにその高潔な精神を感じ入りました。こんなにも美しく素晴らしいご友人をお持ちで聖女様は幸せ者ですね」

「まあ、そんな」

 ガルシアの言葉にハイデマリーは頬を染めた。

 ああ!厳しく育てられた彼女は手放しの称賛に弱いのだ。

 国内では「お堅い」とも言われているので、彼女に気安く軽口を叩く様な異性もいない。

 私は確信した。

 母親の話は女性を落とす為の常套句なのだ!

 ああして同情を引いて女性の懐に入るのは色男にありがちではないか!

 清純なハイデマリーの気をそんな風に引こうだなんて、お母さん許しませんよ!!

 見ればすっかりガルシアのペースに飲まれている。

「是非、お近付きに」

 そのまま彼女に詰め寄ると、ガルシアは手の甲に口付けをした。

 優男風と最初思ったが、風ではなくまさに優男だ。

 ハイデマリーに目をつけるのは当然とは言えようが、私に対してはお母さん扱いではないか。

 そういう扱いの差は紳士とは言えない。

 そんな人との交際は認めませんよ!

 まあ、私はハイデマリーの母ではないし、この人は趣味ではないから構わないし、お母さん扱いも間違ってはいないのだけれど。


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