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黒山羊様の導きで異世界で令嬢になりました  作者: sisi
第五章 シャルロッテ嬢と噛みつき男

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272話 記憶力です

「そういえば、軍部の方の見学って先ほどハンプトマン中将がおっしゃったように普通のことですの?」

「いや、どうなんだろう? うーん、私の時は見学はなかったけれど、父と一緒だったからね。今回も都合があえば来てもらえたのだろうけど」

「私は兄が来ましたけど、エーベルハルト侯爵もうちの兄もどちらも軍で職位についてますから、軍部の立ち合いという意味では間違いでないかと」

 ラーラは軍人の家系であるし、うちも代々軍の職位についているので参考にならない。

 デニスとソフィアの家は違っていたが、魔法の適正はあっても発動させるに足る量がないのが魔術儀礼でわかっていたので練兵場に足を運ばなかったというのだ。

 案内人の兵士が告知の不備だと八つ当たり的に叱咤されないか心配であるが、そこはラーラの方から手を回してもらえるらしく安心できそうだ。

 とりあえず感じの悪いハンプトマン中将の事は忘れて、その後何度か魔法の練習をしたが最初だからか5回に1度くらいしか成功はしなかった。

 普通の火を想像しても発火しないので、私の中の火の神様はお花になってしまったようだ。

 何度も練習を続けて魔力を体から出すコツを掴めば失敗はなくなるというし、地道にやってみようと思う。


 練兵場を後にして、自室へ戻ってから魔道具を兄から渡された。

「これは火魔法修練のランプだよ」

 真鍮とガラスで作られた少し重さのあるランプだ。

 毎回、練兵場を借りて練習したり郊外に出るのは効率が悪いし、こういう手軽な練習用の魔道具で自室で訓練を積むらしい。

「杖の先を、このランプの芯に当たるようにして練習するんだよ」

 水の魔法だと水盤、風だと風車、土だと木鉢とそれぞれの属性にあった修練用魔道具があるそうだ。

 普通の令嬢は適性があっても、軍属を目指さない限り魔法の練習をしたりしないらしい。

 魔力の多さは嫁入りに影響するが、魔法を操れるかどうかは関係ないからだそうだ。

 せっかく魔法がある世界なのに、それはなんだかもったいない気がしたけれど当たり前に魔法が存在するからこそかもしれない。

 足が速いからといってその全員が陸上選手を目指す訳ではないし、心肺機能に優れている人が全員水泳選手にならないみたいなそんな感じなのだろう。

 とりあえず私はこの世界を見て回りたいし、行く先では火種に困ることもあるかもしれないので練習するのにやぶさかではない。

 部屋でマシュマロを食べる時に、魔法があれば火で炙って焼き立てを口に頬張れるのだ。

 他にも、もし手にはいるなら干したスルメイカとか……。

 いや、侯爵令嬢の私室でスルメを焼くのはちょっといただけないか。



 私の魔法については、どのような形であっても着火したのだから結果として成功であると納得したのだが、そんな単純な事では終わらなかった。

 後日、私が火の華を咲かせると市井にまで噂になってしまったのだ。

 あの場にいた身内は無用な騒ぎを起こさないよう特に言いふらす事はなかったが、ハンプトマン中将が部下を連れてきたせいで複数人がそれを目にした事になる。

 彼らの口に戸を立てる事は出来ない事であった。

 軍部に身を置くものが変わった造形の火の魔法を目にした事により、疑問を解消すべく過去似たような魔法の存在がないかを確認する為色々漁ったのが原因のようだ。

 私の噂については詩人が色々と脚色している事もあるし、南の方ではあろう事か私は人魚で魚を呼んで豊漁をもたらしたとか、全くの出鱈目な内容まで出回っているので今更と言おうか。

 ただ、私を嫌う賢者派の行動が逸話を増やしてくれたというのは、皮肉なものである。


 結果的に魔法の大家が私の魔法を検証することになったが、その特殊性は魔力によるものではないことが判明した。

 あの形を作ったのは魔力ではなく、記憶力だと言うことだ。

 どうやら私は人よりも心象を結ぶ力が強いらしく、それが魔法に現れたというのだ。

 この世界の普通の人は火の神様と言えば炎そのものを思い描くらしい。

 私は前世が影響してか、そう思えなかったのだ。

 結果、あの形になってしまったのだが確かにこの体は記憶力が良いと思っていた。

 そして心の中での記憶の再現精度も高い。

 あやふやなイメージしか描けなかったら、私の心で描いた姿を借りたクロちゃんもビーちゃんも、きっと子供の落書きの様な歪な存在となっていただろう。

 彼らは何処からどう見ても立派な山羊と小鳥なのである。

 何かに形を与えるというのは、神の創造にも繋がる畏れ多い行為であり、ある種の奇跡であるという。

 偉い魔法使いの人に大仰に説明されたが、私はとにかく思い描いただけなので実感があまりわかなかった。

 こうした訳で私は一芸を身につけ、珍しいそれを見たいという申し込みを捌く羽目になった。

 まあ、対応に追われたのは母と侍女達で私自身にはそこほど被害はなかったが、いつぞやの求婚騒ぎのように母が切れる前にコリンナに応援を求めなければ……。

 それまでは私の化粧術を直接母へ施すのを報酬に、怒りをおさめてもらう事となりました。



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