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黒山羊様の導きで異世界で令嬢になりました  作者: sisi
第二章 シャルロッテ嬢と悪い種

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18話 茶会の目的です

 はっきり言って茶会に興味がない私はクロちゃんも王宮へ連れていきたいとゴネてみたのだが、見事な黒毛の山羊が王族の目に止まって召し上げられたらどうするのかと諭され大人しく引き下がることにした。

 そもそもペットを連れての入城は禁止だということだ。

 考えてみれば確かに犬猫を連れてパーティに出る人はいないか。

 クロちゃんがいなくて寂しいけれど、兄も子供だし一緒に出席だと高を括っていたら意外な答えが返ってきた。

「うーん。私は招待されてないんだ」

 ちょっと目が泳いでいるように思える。歯切れが悪いのはどうしたことか?

「王太子様と仲がお悪いとか? 何か問題があるのですか?」

 つい前のめりになって問い詰めてしまった。

「ああ、いやあ」

 頭をポリポリと掻いて何か思案している様子だ。

 クロちゃんをモフモフしながら私は首をかしげる。なんてすべすべふかふか。

「まあ当日知るよりはいいか。今度のその王宮茶会は伯爵位以上のお嬢様方だけが招待されてるんだよね」

「え? 女の子ばかりということですか?」

「まあそうなんだ。実を言えば今年10歳になる王太子の花嫁選びなんだよ」

 私はあんぐりと口を大きく開けて固まってしまった。マーサがいなくて良かった。こんな顔をしたら嘆かれていただろう。


 10歳で結婚?どういうことなの?そりゃあ早婚の文化があってもおかしくないけれど、この世界ではそれが普通なの?倫理的におかしくない?第一、王子より年上の兄には嫁はいない。

 混乱していると、そんな心の声が届いたわけではないだろうが兄が説明をしてくれる。

「花嫁と言ってもあくまで候補、婚約者ということだよ。実際に結婚出来るのも16歳からだしね。この国では12歳以降に4年間王都学院へ貴族の子供達は通う事が義務付けられている訳だけど、王族が入学する前後には玉の輿を狙う下位貴族の娘や庶民から器量の良い娘を養子にして妾に迎えてもらって縁続きを狙う輩が湧いて出るんだよね。修学中に変な女に捕まらないようある程度の身分の高い子女を集めて女慣れをさせて、あわよくば良い血統から未来の花嫁を探そうという試みというか……」

 まるで女衒ではないか!犬のブリーダーかなにかなのか!

 貴族社会が地位や血筋を大事にしているのはわかる。わかるけれどこうやって自分が品評会に出品されるかと思うと何ともいえない気持ちになった。

 気の毒なのは一番高貴であるはずの王太子かもしれないが。せめて王子に女友達を作ろう会とかではいけなかったのか。


「え……。でも、それって婚約者がいても変な女に騙される可能性はありますよね?」

「まあ真実の愛とやらを見つけて、婚約者を置いてそういう女性に走る王族もたまにいるらしいけどね。庶民的というか気さくな自然体が新鮮らしいね。ただ結末は冷静な判断が出来ない人物であるとされて王位継承権のはく奪か、自身で愛の為に身分を捨ててしまう訳で物語のようにはいかなかったらしい。金目当ての女に篭絡されて地位を捨てたものの、結局女から見捨てられたという話が40年程前にもあったそうだよ。中には本当に純愛を貫いた人もいただろうけどね」

 呆れた感じで兄は手のひらをひらひらさせた。

 なんだかワイドショーのスクープみたいなことがこの世界にもあるのね。人ってどこも同じなのだなあと、妙なところで感心してしまった。

「でもそれでは婚約されてた令嬢は気の毒ですわね。他の女性に獲られてしまっては立つ瀬がありませんもの」

「だからさっきあくまで候補といったのさ。形式上は婚約者というだけで、最終的に結婚するかもしれないけれど破棄の可能性も拭えない。いわば婚約者が王子の結婚相手の物差しとなるんだ。結局、彼女を追いこす技量や器量、もしくは愛がなければ王妃の座はその令嬢のものだしね」

「王宮のロマンスみたいなものを想像しておりましたがその実、殺伐としているのですね」

「まあ、苦肉の策なんだろうね。婚約者をあてがうこともしなかったら、それこそ王族は肉食獣の群れに投げ込まれた新鮮な子羊さ。まあ婚約破棄された場合、普通は慰謝料を貰っても令嬢は傷物扱いになってしまうものだが、相手が王族だとここが違う。王位継承権を持つ者の婚約者であったというステイタスだね。そもそもがこの国で一番優れた令嬢である証拠でもあるし、優秀で貞淑な令嬢と王宮のお墨付きな訳だから、それこそ男に選ばれるのでなく自分が選ぶ立場になっての結婚が可能になる。だから皆こぞって王子の婚約者になりたがるのだよ。上手くいけば王妃、ダメでも引く手あまたな訳だから」

 なるほど、納得した。

 権力が手に入らなくても、自分の商品価値を上げた令嬢はその後、薔薇色の人生なわけだ。

 しかし色気のない話ではないだろうか。

 もう少し夢があってもよいのではないかと思ってしまった。

「普通は相手を慎重に選ぶし家同士の話し合いで決めたら尚更、婚約破棄なんて信用も財産も無くすような事は起こらないとは思うけどね。まあ面倒な話だし私みたいに婚約者がいない人間の方が多いさ。結婚相手を探す為の社交界でもあるしね。王太子は3年前に王妃である母親を亡くしていて、かなりふさぎ込んでいた期間があって今回が初めての彼主催の茶会になるからそれは各家色めきだっているそうだよ」

「お母さまを……。それは、お気の毒に……」

 前の生で早くに親を亡くした痛みを覚えている。王族であろうと悲しみは変わるまい。

 それなのに花嫁選びとは周りの大人は無神経ではない?

「そんな感じで茶会は女の子ばかりなのさ。小さいながらも皆やる気だろうし、楽しい事ばかりではないと思うけどシャルロッテも頑張ってね」

 自分は関係ないという気楽さがにじみ出ていて笑顔の兄に、つい元の姿のクロちゃんをけしかけようかと考えてしまった。



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