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黒山羊様の導きで異世界で令嬢になりました  作者: sisi
第三章 シャルロッテ嬢と風に乗る者

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139/650

139話 仲間外れです

 私がすっかり村の生活をのびのびと満喫しているのとは比例して、学者はどんどんとくたびれていく。

 元々肉体労働向きではないというのに、何故だか毎日農地を走り回っているそうだ。

 今日はあそこの畑でみた。

 何時ぞやはあの辺まで足を伸ばしていたようだと、狭い村では誰がどこで何をしているかはすぐに伝わってくる。

 おしろさんを前にして自分の体力の無さを確認して自信を付けたくなった?

 いや、だとしてもこの土地でジョギングを始めるというのは唐突過ぎではないか。

 男爵も同じ様子で時間を見つけては農地を歩き回っているらしい。

「そろそろお話を聞かせて下さっても良いのでは? すっかり私は蚊帳の外に追い出された気分です」

 私が口を尖らせて抗議すると、居合わせた男爵がまあまあと止めに入った。

「聖女様、アインホルンさんにも考えがあるのですから、もうしばらくは辛抱お願いします」

 すっかり領主らしくなった男爵だが、学者と一緒に何かしているのは明らかだ。

「そもそもウェルナー男爵が私に持ち込んだ問題ではないですか! 私の頭越しにギル様と遣り取りされては失礼というものです」

 少し怒った調子で言うと、途端に男爵はオロオロとしてしまう。

 気の弱い性根は変わっていないようで、私なんかにこんな様子ではロンメルにはいいように使われてしまうのではと心配になる。

 こればかりは商会長の良心を信じるしかないが。

「まあまあお嬢さん、君はもう十分やったじゃないか? 死にかけたのだから少しは大人しくしていて欲しいというのが大人の希望なんですよ。この中の誰より危ない目にあったのですからね? 後は我々にほんの少しだけ時間をくれたらいいだけです」

 そういわれてしまうと何も言えなくなる。

 確かに攫われて一歩間違えていたら死んでいたのだから、周りが大事にするのはわかることだ。

 でも少しくらい何をしているのか教えてくれてもいいではないか。

「知りたいのはわかりますよ。何せあなたは知的好奇心が旺盛なのだから。でも知らないということを味わうのも楽しみのひとつだと思いますけどね」

 何故だか見聞隊隊員も一緒にいてわかった風に口を出す。

 いつのまに学者と行動するようになったのだろう?

 神話生物の勉強をしていると言っていたしきっかけはあったのだろうが、そこに私を混ぜてくれてもいいじゃないか。

「我々を信じて待って下さい。子供が大人を頼って任せる事は当たり前のことですからね。良くも悪くも遠からず結果を報告することは約束しますよ」

ここまで言われたら引き下がるしかない。

 大人3人でなんの企みをしているのか、子供を締め出す彼らに私は歯がゆい思いを味わった。


 そんなはぐらかされる生活もすぐに終わる事となる。

 その日も散歩をしたり、村の人と話をしながら畑の具合を見たりしていたところに、男爵が息せき切って私を目指して走ってきた。

「聖女様! こちらへ! やっと成果が出ましたよ!!」

 走る貴族というのをあまり見ないので珍しい。

 軍人や騎士ならともかく、農地を走る領主の姿にポカンとしてしまった。

「ようやく結果が出たようですね。では、行きましょうシャルロッテ様」

 ラーラが笑みを浮かべて私にそう促した。

 この様子だとラーラも事情を知っていそうだ。

 一体何だというのだろう。

 男爵に案内されて村外れの巨石の見える畑のあぜ道にやってきた。

 男2人がこちらを背にしてしゃがみ込んでいる。

 近付くとそれは見聞隊員と学者が道に落ちている何かを調べているところだった。

「聖女様を連れてきましたよ! ようやく肩の荷も下りるということですね」

 男爵の声に学者は振り向いて手招きをした。

「お嬢さんに良い報告が出来ることになって良かったよ。さあ、これを見て」

 学者は体をずらして、地面に横たわるそれを私からも見えるようにしてくれた。

 にこやかな男達とラーラに囲まれて私が見たもの。

 それはあぜ道に横たわる黄色の布を付けた倒れた農夫の残骸とでも言うものであった。


 それは地面にめり込み、体はひしゃげて手も足も見当たらない。

 頭も無く、少し離れたところにつばの大きい農夫の帽子が落ちているのがわかる。

 明らかに高い所から落とされたと思われる地面に出来た衝撃跡。

「これは……一体……」

 見当たらないのはそれだけではない。

 血の一滴もそこには無いのだ。

 この人達は何故こんなにも落ち着いているの?

 何故祝い事の様に笑っているのだろう。

 周りの様子から見るに最近のもので間違い無い。

 最近の新しいおしろさんの被害者?

 あれだけ事が起きても黄色の布を付けるのを止めれなかった信者がいたのだ。

 その信心深さが死を招くなど神にも信者にも不幸な事でしかない。

「ひっ……。お嬢様、こちらへ」

 ソフィアが怯えながら、それを隠す様に私の前に体を出して引き寄せた。

 目を見開く私に、大人達ははしゃぐように楽しそうに言う。

「さあさあ! もっと近付いてよく見て!」

 一体何が起こっているのか?

 彼らは狂気か何かに捕らわれてしまったのかと驚いているとラーラがやれやれと呆れた様にいった。

「本当に貴殿ら悪趣味が過ぎるぞ。シャルロッテ様大丈夫ですから、近寄って良く見て下さい」

 ラーラまで!

 とにかく調べなければなるまい。



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