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黒山羊様の導きで異世界で令嬢になりました  作者: sisi
第三章 シャルロッテ嬢と風に乗る者

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132/650

132話 目覚めです

「じゃっるろっでさまああああぁ!」

 目を開けるとコリンナの泣きじゃくる顔。

 ソフィアも泣きながら私を見下ろしている。

 あら?これはお茶会の後だったかしら?

「顔と言葉が大変な事になってますわ」

 なんだか懐かしい。

 あれはまだハイデマリーと友達にもなっていない頃だった。

「なんでいっづっも、私がいないどごろで無茶するんですがあああ」

「心配ばかりかけて、何だかごめんなさいね。コリンナ」

 勢いに押されてつい謝ってしまう。

「シャルロッテ様! もう大丈夫ですか? うちの馬鹿息子が連れ出したせいで大変な事になってしまって」

 ヨゼフィーネ夫人が、目に涙を溜めながらベッドに駆け寄ってきた。

 えーと、結局どうなったのかしら?

「シャルロッテ様! お嬢様! 目を覚まされましたか!!」

 扉がバーンと開いて、ラーラがすごい勢いで駆け込んできた。

 あれ?ラーラってこんなことをする人だった?

 彼女を見れば頭に包帯を巻き、手足にも怪我をしているようだ。

 それをものともせず私のベッドの横で跪いている。

「あの、私よく分からないのだけど一体何があったのですか?」

「目の前であなた様を攫われたのは騎士としての一生の不覚。本当に申し訳ありません」

 ああ、やはり私は攫われたのか。

 でもあの場合は誰にもどうにも出来なかったとしかいえない。

 そんなに責任を感じる必要はないのに。

「あれから何日経ったのですか? 他の皆さんは? リンディは無事ですか?」

 私の他の皆はと問う言葉に目を伏せながら、ヨゼフィーネ夫人とコリンナとソフィアはラーラを見やる。

 なにか気まずい空気が流れた。

 どういうことだろう?誰かが死んだとか重症とかなのか。

「日はそう経っておりませんわ。リンディは無事ですよ。彼女を探しに行ったシャルロッテ様が気を失って戻られて、日が変わって昼を迎えたところです」

 幼女の無事を知り、ひとまず夫人の言葉に安堵する。

 よくわからないが、どうやら私は生きているようだ。

 ベッドに温かみを感じて見てみると、ビーちゃんとクロちゃんが添い寝していた。

 この子達がずっとそばにいてくれたのを知っている。

 こんなに小さいのに私を守ってくれたのか。

「2匹ともずっと……、ずっとそばについていたのですわ。健気なこと」

 動物の献身に絆されてか、夫人の目にはまた涙が浮かんでいる。

「それで何があったのか説明をして貰えると……。どなたか負傷なさったのではないですか?」

 情況を聞こうとしたところ、聖女館の周囲から歓声が上がった。

「聖女様が目を覚まされたそうだ!」

「奇跡の聖女様に万歳!」

 口々にそう叫んでいるのを聞いてまた驚く。

「奇跡って何?」

 ラーラが誇らしげに言う。

「シャルロッテ様は、おしろさんに攫われて生還した奇跡の聖女なのですよ」

 いや、このラーラの反応も何か変なのだけど。

 こんな事を言う人だったろうか?

「聖女様! 目を覚ましたんだって? 嬉しいよ! 大変だったところ悪いんだけど館の周りに心配した皆が押しかけているからちょっと顔見せてあげられないかね?」

 確かに騒ぐ村人を落ち着かせないと話どころではないか。

 心配するソフィアを宥めて皆の前に出れるよう支度をした。


 ホールに出ると、これまた顔に痣を作った学者と怪我をした騎士達が待っていた。

 おしろさん相手に大立ち回りでもしたのか、男性陣とラーラは揃って満身創痍である。

 このズタボロになった男達を見て申し訳ない気持ちがわいた。

 どうみても私の為にこうなったのだ。

 まさかあれほどの巨体と一戦交えるとは思ってもみなかった。

 紳士な彼らは起きたての令嬢の部屋に押し入るのは遠慮してくれていたようだ。

「やあ、お嬢さん。元気な顔をまた見れて良かったよ」

「皆様、お怪我は大丈夫なのですか? ごめんなさい、私のせいで……」

「あ、いや……。これは……」

 私の言葉に騎士達は歯切れの悪い返事をして、またもや微妙な空気が流れた。

 聖女館の玄関は開かれているので、私の姿を目に入れた村人がわっと声をあげた。

 外まで出てみると、大勢の村人達が私を見て喜んでいる。

 聖教師が私に駆け寄り跪く。

「聖女様、無事の帰還おめでとうございます。あなたはこの土地に陰った問題を克服した奇跡の聖女です。目覚められて良かった」

 半日ほど眠っていただけだと思うけれど、本当にどうしたのかしら?

 男爵も騒ぎを聞きつけて小走りでやってきた。

「シャルロッテ様、この度はリンディがお手を煩わせたせいで大変なことになってしまい申し訳ありません。娘の無事はすべて聖女様のお陰です」

 男爵は恐縮しすぎて消えてしまいそうなほどへりくだっている。

「彼女が無事で本当に良かったわ。お互いの無事を感謝しなければなりませんね」

 男爵も聖教師に並んで跪くので、それを見た村人達は興奮したように騒ぎ出す。

「あの、私目を覚ましたばかりでどうも要領を得ないようです。皆様にはご心配をおかけいたしましたわ。もう少し休みたいので皆さま今日のところはこのくらいにしてご帰宅下さいませ」

 そう提案すると村人は口々に「そりゃあもっともだ」とか「ご無事でよかった」と漏らしながら労いの言葉を私にかけて戻っていった。

 男爵と聖教師もやっと立ち上がり、何度も感謝を投げかける。


 おしろさんは一体どうなったの?

 聖女館にいる騎士達が怪我をしているのは何故?

 あの変な雰囲気はどうしたというのだろう。

 本当に何が何だかわからない。

 ソフィアとコリンナがそっと私の移動に手を添えてくれる。

 いつもこの子達には心配をかけてしまって申し訳ない気持ちだ。

 やっと聖女館の周りも静かになったので、ホールに戻って話を聞く時間が出来た。

 気付けばお腹も減っている。

 眠っていて食事もしていなかったのでスープを出してもらってゆっくりと飲む。

 おいしい蕎麦の実のスープは体にじんわりと染み渡り、血が通う思いだ。

「それで何があったかをお話して下さる?」

 皆がどう言ったものかと相談する中、やっと学者が前に座って話をしだした。

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― 新着の感想 ―
[一言]  男爵領の不審死編が、よくわからない内容で長かった。。。  その前までは良かった。  ただ、王太子腹黒属性は好みで無い。
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