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第六章 2  勇者、集結!

 「一班、配置着いたわよ」


 北側から攻める一班を任されたのは北村沙織。

 勇者ギルド発足直後から名を連ねている古株のメンバーであり、人呼んで『食堂の主』『みんなのおっかさん』。もちろん本人はこの全く有り難くない二つ名を認めてはいない。

 銃とナイフを使いこなし瞬足で敵を屠るアサシンタイプの戦い方を好む。

 その下には茶々とも共闘した無敵のロボット、ドミニオンAエースを従えた「みっくん」こと高橋光邦たかはしみつくにを含め三人がつく。


 

 「二班、いつでも行けるぜ!」


 西を任された二班を任されたのは天宮統也あまみやとうや

 白いハチマキを頭に巻き木刀を肩にのせて不敵に笑うが、実の所ギルドに入ってまだ半年程度である。

 「人数不足だから仕方ない」という消極的な理由でチームリーダーに選ばれたのだが本人はやる気十分である。

 その左隣では活発そうな少女が手のひらに拳を打ち付け闘志を燃やし、右隣では褐色の肌に複雑な紋様を刻んだスタイルの良い少女が短く祈りの言葉を呟く。

 その三人の後ろでは、どこで買ったのか分からない瓶底眼鏡をかけた少年が緊張の面持ちで突入の時を待っていた。



 「三班、準備完了!」


 東を任されたのは咲村誠さきむらまこと

 「光剣の勇者」とも呼ばれる二振りの光線剣の使い手だ。

 その隣には黄色のローブに黒いコートとなんともちぐはぐな服装に身を包み、白い宝玉を先端に備えた杖を持つ少女が深呼吸をして呼吸を整えている。

 三班はこの二人だけだが、それは二人の実力とコンビネーションを考慮してのことである。



 「…………」

 「あっ、四班もいつでもオーケーですよ!」


 何も言わないリョウの代わりにいつものように茶々が耳に付けたインカムで元気に状況を報告する。



 「よし、それじゃ各班突入を開始してくれ!今まで色んな場所でタダ飯を喰らってきた奴らに支払いの時間(ペイバックタイム)が来たことを教えてやれ!」

 『おう!!』


 

 「でもこの中にどうやって入るんですか?そう簡単に入れる訳じゃないですよね?」

 「本来は専用の機材を用いて無理やり入り口を作るのじゃが、今回は不要じゃな」

 「それってどういう……」


 ガキガキガキと何か金属が引き裂かれるような音に驚いた優子が見たものは。

 右腕を獣腕に変えたリョウが次元を隔てる黒い膜を力づくで引き裂く光景だった。

 

 同じ頃。

 沙織のナイフが、統也の木刀が、誠の光剣が、同じように道を切り開いていた。


 「……あの、こんな強引な方法でいいんですか?」

 「侵入した時点でバレるんだから気にしない!さぁ、行くよ、優子ちゃん!」

 「うむ、急がんと修復されてしまうでな。ゆくぞ」


 さっさと中に入っていったリョウを追う形で三人が巣の中へと入っていく。

 その五秒後、彼女たちが入った穴は綺麗に閉じられた。



 所変わって。


 「チーフ、状況は?」

 「巣の存在を感知した一団が北上中だ」

 「んじゃ、ちょっと行ってくる。後は任せたぜ」

 「了解だ」


 短い会話を終え陽太郎は境山中学校の屋上から大きくジャンプして飛び降りた。

 そして、その体は風に乗って空を舞う。

 

 「お~お~、ぞろぞろ来たな」


 多くの戦いを経験し鋭敏になった陽太郎の感覚ははっきりと喰らうモノの存在を感知していた。

 先に述べたように地球の環境に適応できない喰らうモノは弱い。

 それ故に力のある個体の元へ寄生するために集まろうとする習性がある。

 そしてもう一つ、喰らうモノたちは己がもつ情報を己の体を媒体にして情報を共有することが出来るのである。

 陽太郎が突入班に参加しなかった理由はここにある。

 地球環境の適応を目指し『情報』を集めている喰らうモノ達の情報統合は出来るだけ阻止せねばならない。

 もし、まかり間違って地球環境に完全に適応できる喰らうモノが生まれてしまえば、例え勇者たちの力を合わせても侵略を阻止することは難しくなる。

 何より、生物、無機物問わず情報が集まれば、それだけ喰らうモノの変身パターンが増え突入班の負担が増えることになる。


 「まっ、竹内さんに偉そうなこと言った手前、きっちり仕事はしないとな!」


 ステルスを維持して地上に降りた陽太郎が、通行人を器用に避けながら進んでくる喰らうモノたちに向けて軽く剣を振るう。

 ただそれだけで、抗う事の出来ない竜巻に巻き込まれ喰らうモノの群れが消し飛んだ。

 一方、通行人たちは微風すら感じず談笑しながら歩き去っていく。

 これが、十塚陽太郎、『始まりの勇者』『旋風せんぷうの勇者』の力だ。


 「陽太郎、次は北からくるぞ」

 「東西は前に茶々たちが数を減らしておいてくれたから来ないとは思うが、その分南北は多そうだな」

 「だが、普段は隠れている奴らも自分から出てきてくれているのだ。盛大にもてなしをせねば失礼にあたるだろう?」

 「だな。エデンへの遠征の前に出来るだけ数は減らしておきたいからな」


 喋りながらも、電車よりも速く北へ向けて疾走する。

 こうして、誰にも知られることのない、知られてはならない戦いが静かに幕を開けた。

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