失敗
失敗した。
死ぬ勇気もないのに、死のうと思ってた。
飛び降りようと思えば脚がすくむし、飛び込もうとしても動けなかった。
情けなかった。
現場の足場の上で泣いてた。
なんで今日も死なずに現場に来て、仕事をしてるのか分からなかった。
意気地無しで、塵みたいな存在で、居ても居なくても変わらなくて。
それなのに、当たり前のように朝礼をして、当たり前のように仕事をして。
動きが悪いから怒られた。
死にたいと思った。
休憩中にからかわれた。
死にたいと思った。
それなのに、帰る電車に乗って、宿舎へと戻る自分が気持ち悪くて吐いた。
なんで死にたいのに動かないのか考えた。
安物の包丁で腕を切ってみた。
浅く切っただけで痛くて、深くは切れなかった。
首を吊ろうと思って、ベルトを引っかけてやってみたらベルトが壊れた。
踏み出してから意識が途切れたけど、その後に落ちて打った身体が痛かった。
山に登ってみた。
電車で遠くまで行って、山の中で死のうと思った。
高々2000m程度の山で、山頂から下へと道のない道を進んだ。
夜は怖かった。
獣には会わなかった。
お腹が減るのが、こんなにも辛いと思わなかった。
がむしゃらに進んで、道を見つけた時に涙が出た。
喉が乾いた。
麓の駅まで降りて、自販機で水を買ってしまった。
飲んだら生き返った気がした。
無断欠勤して怒られた。
それでもクビにはならなかった。
何をしてたのかは聞かれなかった。
親に連絡がいってた。
着信が何十件も来てた。
死ぬ為に行ったから、携帯なんか持ってなかった。
終業後に電話をかけた。
怒られた。
涙が出た。
なんで安心しているのか、情けないと思った。
どれだけ心配したか、死にそうだったと言われた。
私は死ぬ為に行ったとは言えなかった。
失敗だった。
今まで生きてきて、何を学んでいたのか、私は何なのか、分からなかった。
何をすべきなのか、どうするのか、何も分からなかった。
死にたいと思った。
また仕事へ行った。
顔色が悪いから帰れと言われた。
宿舎に戻って考えた。
考えたけど分からなかった。
情けない。
生き恥。
死ぬしかない。
そんな考えしか浮かんで来なかった。
また包丁を握って、手首を切ろうとした。
でも、痛みを思い出して力が入らなかった。
情けなかった。
今までと同じで中途半端で、糞みたいな自分に死ねばいいのにと思った。
失敗した。
死ぬのが怖いことだと思った。




