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亜人娘が得たものは  作者: 戴勝
第12章
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第3話 鮮花祭の内容は

「いいわよ。まず、鮮花祭への出場条件は推薦か立候補によって決まるわ」


「そうだったのか。てっきり全員強制かと思ってた」


「全学年の生徒全員が他の学園と試合して一日で終わるとは思えないわ」


まるで「当然でしょ?」とでも言いたげな雰囲気で髪を払いながらアリアは説明する。


たしかに、全学年の生徒全員が出場するとなるとかなり時間がかかってしまう。おまけにそんな大勢の生徒が戦える場所の確保も必要になってくるため、経費が加算するということもあって推薦か立候補なのだろう。


「推薦か立候補って言ったけれど、出場できるのは各学年から二人までよ」


「え、それっておれと君だけってことになるのか?」


「ええそうよ」


「他に立候補する人がいたらどうするんだ?」


「安心なさい。私がなんとかするわ」


アヒトの質問にアリアは余裕の笑みで腕を組んで答える。


「貴族にはね、それぞれ地位の高さがあるのよ。見たところ私の右に出る地位を持つ貴族の生徒はいなかったわ。だから必然的に私は選ばれるのよ」


「……なるほど」


そこでアヒトはなんとなく察することができた。アリアは自分の貴族の地位の高さを利用して同じく出場しようとしている生徒を潰そうとしているのである。そして、残りのひと枠は、おそらく合宿の時にアヒトが魔族を倒しているという情報を使ってアヒトを当選させようとしているのだろう。他の生徒たちには申し訳ない気持ちである。


「試合形式はさっきも言ったのだけれど、二対二のリーグ戦よ。ただし、同学年としか当たらないからそこは安心して」


リーグ戦ということは、チーム同士がそれぞれ対戦を繰り返し、対戦結果を総合して順位を決めるということになる。さらに、同学年だけということは一つのチームが二勝すれば一位を獲得することができるということである。


「こんなところね。あとはお互いの使い魔の能力を把握しておくくらいだけど、他に何か質問とかある?」


「いや、十分だ。ありがとう」


「礼には及ばないわ。残りの使い魔の件だけど、食事が終わってからにしましょう」


そう言ったアリアの手元の弁当の中身は何一つ減っていなかった。


「まだ何も食べていなかったのか? なんか悪いことしたな」


「いえ、いいのよ。子供の頃に教わった礼儀作法が抜けていないだけだもの。食事中に説明を始めた私にも落ち度はあるわ」


それだけ言ってアリアは静かに昼食を取り始めた。


アヒトも自分の残りの弁当を食べることに集中することにした。ベスティアの方はすでに食べ終えているようでアヒトの弁当に視線が固定されている。瞬き一つしていない。


仕方がないのでアヒトは呆れた溜息を吐きながらベスティアに自分の弁当を渡す。


当然のようにベスティアは瞳をキラキラとさせて美味しそうに口に放り込んでいく。


そうしてしばらく会話をすることもなく、アリアが食べ終わるのを静かに待っていること数十分。


食事を終えたのか、アリアは布巾で口を拭って後片付けを始める。


「待たせてしまったかしら。別に食事中に私語をしてはならないなんてマナーはないのよ? 気軽に話しかけてちょうだい。じゃないと私が恥ずかしくなってくるわ」


「そっか。次はそうするよ」


アヒトの返事を聞いた後、アリアは立ち上がり、スカートのシワを直してからアヒトに向き直る。


「じゃあちょっとあなたの使い魔……ベスティアの能力を見せてちょうだい」


「わかった。ティア」


「ん」


次の授業が始まるまでの時間はそれほど長くない。そのためアヒトはすぐに行動に移る。


ベスティアも先ほどのアリアの説明によって何をしたいのかだいぶ理解できているため、アヒトの指示に素直に従う。


「能力を見せてくれって言われてもそれほど多くはないぞ?」


そう言ったアヒトは土魔術を使って人の背丈ほどの壁を出現させる。


「ティア、頼んだ」


「ん」


アヒトの指示にティアは土の壁に向かって高速で駆け出し、一瞬で距離を詰めたかと思うと土の壁が一瞬で木っ端微塵に砕け散った。


ベスティアが後ろ回し蹴りを繰り出したのだ。


「とても足が速いのね。それと力もある。魔法とかは使えるのかしら」


「身体強化が使えるくらいであとは、ナイフで攻撃するくらいかな」


アヒトの説明を聞いてアリアが目を丸くする。


「あなたたちこれだけで魔族に勝てたの? とてもじゃないけど信じられないわ」


アリアの見解は間違ってはいない。実際にアヒトたちは勝つことができなかった。しかし、あの時よりかは確実に強くなっているはずである。先日のキマエラとの戦いでは身体強化を使わずともそこそこのダメージを与えることはできていた。だがそのことはアリアは知らないし、言ったところで信じてはもらえないだろう。だからアヒトは苦笑いで誤魔化すしかなかった。


「ははは……あの時はおれたちだけじゃなかったからな」


「そ、なら一緒にいた魔術士か剣士のどちらか、またはその両方が優秀だったってことね」


それだけ言ってアリアは屋上から去ろうと扉の方へ歩いていく。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。君の使い魔の能力は教えてくれないのか?」


アヒトは歩いて行くアリアの腕を掴んで質問する。


すると、アリアは風で髪を揺らしながらゆっくりと振り返って口を開いた。


「ごめんなさい。さっきの話はなかったことにしてくれるかしら」


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