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亜人娘が得たものは  作者: 戴勝
第8章
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第6話 彼女たちはただはしゃぐ

岩がたくさん並び人があまり近づかない場所に、紫に輝く扉のようなものが出現する。


そこから七人の女性が現れた。


「こちらの世界の海は青いのだな」


海を見た鍔鬼がそう呟くのを見て


「楽しみだった?」


とルシアが鍔鬼の顔を覗き込んで微笑む。


「そんなわけないでしょう? 子供じゃないんですから」


鍔鬼はルシアに視線を向ける事なく、水着に着替えられる場所を探して歩き出す。


「君も素直じゃないね。あのぐらい素直なら、私も喜べるのだけれどね」


そう言ってルシアが指をさした先には水着姿になって大喜びで海に駆けて行く狼亜の姿があり、その後ろを追いかけて行くのはリーダムとサグメだった。


「おい、狼亜。もう少し落ち着け!」


リーダムはそう言うが狼亜は止まらない。


「はぁ……」


鍔鬼が深いため息を吐いているところに、フラフラとまるで生まれたばかりの子鹿のような足取りでアニがやって来た。


「ルシアお姉ちゃん……」


「ん? どうしたのかなフラフラして」


「えっと、もう何年も歩いてなくてそれで……」


アニの言葉を聞いてルシアが困った表情になりながら口を開く。


「それは大変だね。すぐに休める場所を作るとしようか」


アニは一日のほとんどを宙に浮いて過ごしている。地面に降りるときは食事の時くらいだろう。そのため、歩き辛い砂浜はアニにとってかなり酷なことだろう。


ルシアはアニを連れて歩き出す前に鍔鬼へと振り向いて


「たまには姉妹で遊ぶのも悪くないと思うのだけれどね」


と言ってアニとともに去って行った。


「……余計なことだ」


そう小さく呟いた鍔鬼は自分も着替えるべく歩き出した。


それを横目にアニのためにブルーシートとパラソルを設置していたルシアはふと『ヘキサグラム』のメンバーの一人がいないことに気づいた。


「おや? デュランちゃんはどこかな?」


「デュランお姉ちゃんならさっきあの岩場の方に向かっていったよ」


ルシアの呟きにアニがデュランと呼ばれた女性の方向を指差しながら答える。


設置を終えたルシアはアニに休むよう指示を出して岩場へと向かう。ちらっと顔を覗かせたルシアはその陰にデュランがうずくまっているのを見つけた。


「どうしたんだい?」


「し、司令官ッ……。その、このような恰好は些か恥ずかしいというか……なんというか」


デュランはルシアに水着姿をみせる。


それはルシアがここへ来る前にデュランに着るようにと指示を出して渡した水着である。


ルシアは「ふふふ」と微笑むと


「大丈夫。今のデュランちゃんは百合のように美しい」


と言って手を差し伸べた。


ルシアは女性を口説くことには慣れているため、このような歯の浮くようなセリフも眉一つ動かすことなく言える。そんなこと言っても許されるほどに美しく凛々しいという外見だけで言えば完璧なのだが、いかんせん中身がアレなのだ。


「仕方ありませんね」


そう言ってデュランは立ち上がった。


少し人の多い場所に行くとデュランの水着姿は多くの人の視線を集めた。なにせただの水着ではなく、大胆なカットアウトがされたホルターネックタイプのモノキニワンピースだからだ。隠しているところがほぼ大事なところだけといった感じである。


しかもデュランはいろいろと大きいボディラインが強調されてただでさえセクシーな水着がますますセクシーな水着に見えるという緊急事態である。


デュランは少し頰を染めて俯く。


「さて、じゃあ皆自由に遊んでいいけど、夕暮れ時には戻ってきてね」


ルシアはそう言うとルンルン気分で砂浜を歩いてどこかへ行ってしまった。


それを見届けてサグメはアニのいるシートの上にゆっくりと腰を下ろす。


「あたしはそこらへんブラブラしてくるわ」


リーダムはそう言って歩いて行く。


「狼亜は泳ぐのだ!」


そう言って勢いよく海に向かって駆け出したのを見て、鍔鬼はデュランに向けて口を開く。


「デュラン、アニとサグメを見ておいてくれ。私は狼亜を見ておく」


そう言って海へと向かって行った。








一方その頃、アヒトは人があまりいない、いい感じの場所を見つけ、そこにパラソルとビニールシートを設置していた。設置が終わったころ、ちょうどそこに更衣室から出て、アヒトを見つけてやって来た人物がいた。


「お、チスイか。意外とはやかっ……た、な」


アヒトは近づいて来た影に気づいて振り返り、思わず見惚れてしまった。


チスイの水着は、クロスネックビキニの腰に藤色のパレオを身につけたものであり、アヒトは服屋でかなりの数の水着を見て耐性が付いていたと思っていたが、誤りだったと感じた。太陽の光によって美しく輝く宵闇色の髪に引き締まった腹部にさす影がチスイの体を艶めかしく魅せていた。


「何を呆けている。早く感想を言わぬか。まさか、店で見すぎて何も感じなくなったとは言わせぬぞ?」


チスイは腰に手を当てて体を屈め、顔を下から見上げるようにして近づけてくる。チスイの胸の谷間が容赦なくアヒトの目に突き刺さる。


「い、いや、そうじゃなくて」


とっさにアヒトは後退り、頰を赤くしチスイから目をそらす。


「む、目を背けるな。私をしっかりと見ながら口にしろ」


そう言ってチスイはアヒトに更に一歩近づく。


「うっ……と、とってもよく似合ってる、可愛いと思う。正直、見惚れたぞ」


アヒトは視線が胸に引き寄せられるのを必死にこらえ、チスイの顔を見ながら感想を言った。


「……そ、そうか。ふん!まあいいだろう。私に見惚れぬはずがないからな」


ぽっと頰を赤くしたチスイだが、誤魔化すように胸をそらしてドヤ顔を晒す。


それを見てアヒトは薄ら笑いを浮かべる。が


「鼻の下、伸びてる」


「え!嘘だろ」


反射的に口元を隠したが、その声がチスイのものではないことに気づき、チスイの背後からやって来る人物に視線を向ける。


そこにはムスッとした表情をしたベスティアが歩いて来ていた。チスイの隣に並ぶなりベスティアはムスッとした表情から少し照れたような表情になりながら口を開く。


「ど、どう……かな」


アヒトは一番楽しみにしていたベスティアの水着姿を見る。


キャミソールのような細い肩紐で大胆に肩を露出させてはいるが、そこから下はワンピースのようなデザインという露出は控えめになっており、所々にあしらわれているフリルがベスティアに可愛さを引き立てさせている。髪の色に合わせた青を基調とした水着になっており、何より、ベスティアの三角の耳とふわふわの尻尾が違和感なく、もはやなければならないと言わざるおえないほどかみ合っていた。


「あ、ああ……すごく、可愛いぞ」


アヒトはチスイとはまた違った可愛さを持つ少女に見惚れてしまった。


アヒトの言葉を聞いたベスティアは頰を赤らめてはにかんだ。


「うれしい……」


何を着たらアヒトに喜んでもらえるのか、必死に一人で考え、選んだ水着である。今までは「可愛い」と言われただけで動揺していたベスティアだが、それ以上に嬉しさが勝った。その行動、表情、今のベスティアはアヒトを見惚れさせるだけの魅力を大いに放っていた。


「ぐぅ……これは、結果が分からぬぞ」


チスイがベスティアを見たアヒトの表情を見て、ボソッと呟く。


実は、これはベスティア、サラ、チスイの三人による、アヒトが一番見惚れたさせたものは誰かという勝負であった。現在、ベスティアとチスイが終わり、両方とも同じ評価かどちらかが上という感じになっている。残るはサラ。すぐに結果はわかることとなる。


「おーい、みんなー!」


ベスティアとチスイの背後、つまり、アヒトの見る先にサラは走ってやって来る。


大胆な三角ビキニ姿であり、中心にリボンの飾りをつけた白を基調とした花柄のものである。そして、その誰が見ても大きいと言わざるおえない胸が、サラが走るたびに揺れる揺れる。


アヒトはその時点で限界だった。


鼻の奥から鉄の匂いが感じられ、アヒトは手で覆う。ただでさえ、見惚れるほど可愛い少女二人を見た後なのだ。今のサラの姿はアヒトには強烈過ぎた。そして、とどめを刺すべく、事件は起こった。


サラの首元で結ばれていた紐が走る度に揺れることで徐々に解けていき、そしてついに、ぽろんっと二つの大きな膨らみが露わになった。


「へ? ひゃあああああ」


サラはしゃがんで体を丸めることで胸元を隠す。


「――⁉︎」


ぶひゅっという音と共にアヒトの鼻から勢いよく血が噴き出した。手で押さえていたものの、勢いが強く、指の間から流れ出てくる。


「ご、ごめん!ちょっとトイレ行ってくる!」


そう言ってアヒトは鼻を抑えながら走り去っていった。


ベスティアとチスイは未だに涙目になりながら二人に助けを求めるサラの言葉を聞き流し、遠い目をするのだった。


デュランはヘキサグラムの強さ順でいうと下から二番目になります。

ですがそれ以外、身長や胸囲等々は圧倒的に一番上です。

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