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亜人娘が得たものは  作者: 戴勝
第7章
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第6話 少年に加わる仲間とは

「――ッ⁉︎」


咄嗟にチスイは横に大きく跳んで回避する。刹那、先程までチスイがいた場所の地面が爆ぜた。爆風によってチスイが地面を転がる。


すぐに起き上がり、横に跳ぶ。理由は単純、ベスティアが追撃の拳を放ってきたのだ。そしてまたもや地面が爆ぜる。


「おい、チビ助! やめろという言葉が聞こえぬのか!」


チスイは避けながらもベスティアに呼びかける。だがベスティアは止まらない。


「ティア! やめろ、やめるんだ!……ベスティア!!」


アヒトのその言葉にピクッと反応したベスティアは攻撃をやめてアヒトに視線を向ける。


「……ッ、君は、誰だ……?」


アヒトはベスティアの見たことのない表情に目を丸くする。


ベスティアは不敵な笑みを浮かべたままアヒトに近づいて行く。今にもアヒトに襲いかかりそうである。


「いったい何が起こってるんだよ、ティア‼︎」


再度ベスティアを呼んだアヒトの言葉によりベスティアが目を見開き、灼熱の瞳が元の青い瞳に戻る。


「……え、あひ、と?……一体何が」


ベスティアは目の前の人物の名を呼び、周りを見渡す。周りの地面はいくつものクレーターが出来ていた。


「なに、これ……ぁ……」


周りの惨状に呆然と声を漏らし、急にか細い声とともにペタンと地面に座り込んでしまった。


「お、おい大丈夫かティア。いったい何があったんだ?」


「あ、脚に力が……」


見るとベスティアの脚は小刻みに震えていた。


そこにチスイがものすごい剣幕で近づいてくる。


「おい、チビ助! 何故試合をやめなかった? 答えろ!」


チスイはベスティアの胸ぐらを掴んで持ち上げる。今のベスティアにはなんの抵抗もすることができず、されるがままに浮き上がる。


「し、知らにゃい! にゃにも、にゃにも覚えてにゃいの」


「虚言を吐くな! 現におまえは私に傷を与えたのだぞ⁉︎」


「嘘じゃにゃい!……ただ、さっきまでとても気持ちのいい空間にいた気がする」


「……とても信じられる話ではないぞ」


チスイはベスティアから手を離す。ベスティアは重力に引っ張られるかのようにペタンと元の座り込んだ形になる。


「立て! もう一度勝負をするのだ。こんな一方的に攻撃を受けたのは久しぶりだ。ぶっ倒さないと気が済まない!」


チスイは鞘から刀を抜いてベスティアに剣先を向ける。


「待て待て、ベスティアはもう動けそうにないし、君もボロボロじゃないか! もう少し自分を大切にしろ」


「ふん、戯言を。これくらい私にはどうだッ……」


チスイは胸を張ろうとしたが、肋の骨折があまりにも痛すぎて固まる。急激に額に玉の汗が浮かび上がる。


「ほら見たことか。今日はこのくらいにして、別の機会にしたらどうなんだ?」


「む……しかし、次にいつおまえたちに会えるかわからぬではないか」


チスイはアヒトを睨みつける。


「そ、そうだな……それなら、君で良ければおれたちと夏休みの間だけ冒険者のパーティーを組まないか?」


「冒険者?」


「ああ、君は強いし、何よりおれたちのパーティーは唯一剣士だけが欠けていたんだ。それにおれたちと行動を共にすることでいつでもベスティアに勝負を挑むこともできるぞ」


それを聞いてベスティアが嫌そうな顔をアヒトに向ける。アヒトは申し訳なさ気に苦笑いを浮かべる。


チスイは少しの逡巡の後、「うむ!」と頷いて口を開く。


「わかった。おまえの提案にのるのだ」


ベスティアが「えぇ、のっちゃうの?」といった風な表情になる。


「ありがとう。これからよろしくなチスイさん」


アヒトはチスイに手を差し出す。


「チスイで良い。それと、私はおまえ見たいな嘘つきを信用しておらぬからな」


チスイはアヒトを睨みながら手を握る。


アヒトは苦笑しながらこれからゆっくりと信頼を得て行こうと思うのだった。


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