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亜人娘が得たものは  作者: 戴勝
第6章
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第7話 魔獣たちを操るものは

時を同じくして、アヒトたちもアンたちと同じく多くの魔獣に囲まれていた。


「おかしいだろ⁉︎なんでこんなに魔獣がいるんだよ」


アヒトは突進してくる猪の魔獣の眼球にめがけて杖剣を突き刺して絶命させる。


「わからない!とにかく逃げ道を作らないときりがないよ!」


サラは初級風属性魔術『風刃(エア・ブレード)』を使ってなるべく魔力の消費を抑えながら戦っているがいつまで持つかわからない。ベスティアも『無限投剣』と体術を駆使して倒しているが、あまりの数の多さに体力が消耗するだけである。


「くそっ!サラ、何か広範囲系の魔術は使えないのか⁉︎」


「あるにはあるけど、魔力の消費が大きすぎるんだよ」


「構わない!このままだとおれたちは全滅する!使ってくれ!」


「……わかった。少し時間をちょうだい」


そう言ってサラは目を閉じて意識を集中させる。


それを見てアヒトはベスティアに指示を出す。


「ティア!サラを守ってやってくれ!」


ベスティアは瞬時にサラの前に立ち、防衛を始める。襲い来る虎の魔獣の頭を跳び上がって踵落としで叩き潰し、左右から襲いかかる魔獣を左方は空間から取り出した『無限(メビウス・)投剣(ネビュラ)』を右手で投げて倒し、投げた回転を利用して右から来る魔獣の顔面に右拳を叩きつけた。


その光景を魔獣を倒しながら見ていたアヒトはベスティアの反応速度の高さに感心した。しかし、やはり数が多いのかどんどん息が上がってきている。そして、アヒトの方もかなりきつくなってきていた。その時


「二人とも伏せて!……『絶対(アポリート・)零度(ミデン)(ブレード)』ッ」


サラの言葉により、アヒトとベスティアは瞬時に地面に伏せる。


そしてサラが杖を横に構えると、超巨大な氷の大剣が形成された。大剣が現れた場所にいた魔獣は奥にいた魔獣もろとも一瞬で貫かれる。


「そぉれっ!」


そのかけ声と同時にサラは横に構えていた杖を地面と平行に体ごとくるっと一回転させる。それに合わせて氷の大剣がサラを中心に一周した。大剣の範囲にいた魔獣が次々と斬り伏せられていく。何とか斬られずかすめるだけですんだ魔獣もいたが、かすめた場所から一瞬で凍りついていく。


凍り始める魔獣たちは暴れまわるが、凍り始めてからはどうすることもできず最終的には全身を凍りつかせて静かになった。


この魔術はサラが以前、アニと名乗る魔族が使っていた技を見て、サラが自分なりに応用したものである。


「……なんだそりゃ」


一瞬にして広範囲の魔獣を始末したサラの魔術を見てアヒトはただ唖然とした。魔物よりはるかに強い魔獣を一瞬で倒す人なんて聞いたことがない。それこそ、昔話や英雄譚といった物語だけだ。


そんなアヒトの内心の驚きを他所に、魔術を使い終わったサラは力が抜けたようにその場に倒れた。


「サラ!」


アヒトはサラを抱き起こす。その間、ベスティアに周りを警戒してもらう。そして倒れたサラは、呼吸がひどく荒れてビクンビクンと体を痙攣させており、唇が青紫色になっていた。


「……魔力、欠乏症ッ」


魔力を使い果たすと『魔力欠乏症』といって唇が青紫色になり体が動かせ無くなる症状がおこる。通常では痙攣するという事までは起きないのだが、サラは一気に全ての魔力を吐き出したため体を痙攣させるまで至ったのである。


「こんなに魔力を消費するものだったのかッ……おれは魔力回復薬なんかもってないぞ」


アヒトが歯噛みしていると青紫色の唇がゆっくりと動く。


「……わ……しの……ぽ……ち……」


サラが震える腕を動かして自分の身に着けているポーチを掴むのを見たアヒトは急いでポーチの中身を確認する。そこには十本の魔力回復薬の小瓶が入っていた。


「なんでこんなにたくさんの薬が……いや、今はそんな事どうでもいいッ」


アヒトは魔力回復薬の入った小瓶を一本手に取り、サラの口元に持っていく。小瓶からサラの口の中に液体が流れ込むがうまく喉を動かせないのか咳き込んで吐き出してしまう。止むを得ずアヒトは魔力回復薬を自分の口に含み、口移しでサラに飲ませた。


「にゃ⁉︎」


その光景を見てしまったベスティアは尻尾を立てて目を丸くする。しかしベスティアにもアヒトの行動は止むを得なかったためにした事であると理解しているため、すぐに頭を振って思考を切り替える。


サラに飲ませた魔力回復薬一本分を飲ませ終わると、少しは回復したのか、体が動かせるようになった。


「大丈夫か、サラ」


「う、うん。ありがとう」


サラは頰を赤らめて俯く。アヒトに口移しで飲ませてもらったことがとても恥ずかしかったのだろう。耳まで真っ赤である。


「もう一人でも、飲めるよな?」


そう言ってアヒトはサラにもうひと瓶手渡す。


「うん、大丈夫」


サラがそれを受け取り、ゆっくりとアヒトから離れた時、ベスティアが何か嫌な気配を感じ取った。


「――ッ、警戒してッ」


ベスティアの言葉と同時に森のどこからか歪な笑い声と手を叩く音が聞こえてきた。


『フハハハ、素晴ラシイモノヲ見セテモラッタヨ。マサカアノ魔獣ノ群レヲ一瞬デ仕留メルトハ思ッテモイナカッタヨ』


歪な声は森に反響してどこから話しているのか全くわからない。


「どこにいる!姿を現せ!」


『イレギュラーナ存在ハ一人ダト聞イテイタンダガネ、ソコノ魔術士ノ女モカナリ危険ナ存在ナヨウダネ』


相変わらず声が反響してどこから話しているのかアヒトにはわからない。しかし、ベスティアの耳がピクッと反応する。


「……そこっ!」


ベスティアは空間から『無限(メビウス・)投剣(ネビュラ)』を取り出し左前方にある木が密集した場所へ投げつけた。木の間をすり抜けて『無限投剣』はまっすぐ飛んで行き、ある木の幹に刺さる。


その木の裏から人影が現れる。否、そいつは人と呼んでいいものではなかった。


視点が変わりすぎかもしれませんね。

読みづらかったらすみません。

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