第6話 大胆少女の会話力は
そして数時間、服屋に滞在していたがサラにとってとても忘れられない思い出となった。
サラは女友達と一緒に服を買うときよりも楽しく過ごすことができた。
服屋での買い物が終わり、現在は近くの喫茶店に入ってアヒトたちと紅茶を飲んでいる。
服屋ではアヒトと一緒に買い物をするのが楽しくてついはしゃいでしまった。
アヒトに子供っぽく思われないためにも落ち着いた雰囲気を出さなくてはならない。
そう考え、サラは紅茶をひとくち口に含む。
花のような香りと心地よい渋みが口の中いっぱいに広がる。
とても落ち着ける味だ。
「今日はありがとう。とっても楽しかったよ」
サラは今日あった出来事に対してお礼を言った。
「それは良かった。こっちもティアの下着選びなどで助けてもっらたし感謝しかないよ」
アヒトもサラに返すかたちでお礼を言った。
紅茶を飲みながらふとベスティアのフードの中に見える髪色について気になった。
「少し聞いてもいいかな。ベスティアちゃんのその髪についてだけど、産まれた時からそんな髪なはずないよね」
アヒトがベスティアについて答える。
「実はおれにもよくわかってないんだよね。過去に辛い出来事があったっていうことくらいしかわかってないんだよね」
アヒトはベスティアから話してくれるのを待つらしい。
「そう……ごめんね。ちょっと気になっちゃったからさ」
「いや、誰もが気になることだし、しょうがないさ」
会話が途切れてしまった。
どうしたらいいかわからず、視線を彷徨わせる。
ふと、サラが窓の外に視線を移すと情報屋が新聞というものを販売しているのが目に入る。
サラは会話の繋ぎとして最近聞いた噂をアヒトに伝えることにした。
そのおかげで少し会話がはずむ。会話をしていると、相手の顔を見ることができるため、サラにとってはアヒトの表情を見ているだけで今は幸せになれる気がした。
しかし、アヒトの顔をずっとみていることもできないため、たびたび窓の外に視線を向ける。
そこで道の向かい側にアンとリオナが立っており、何やらサインを送っていることに気づいた。
アンが身につけている腕時計に指を指して手を振る仕草をした。
どうやら先に帰るみたいだ。
サラの表情に焦りが浮かぶ。今帰られるとサラにとってはかなりきつい。
だが、そんなサラの内心など知る由もないアンとリオナはサラを置いて歩き出す。
サラの心臓の鼓動が急激に早くなる。
動揺しながらもアヒトとの会話に乱れを作らないようにする。
そして、アヒトとの会話がいい感じに終わりをむかえる。
サラは店の壁にかけられている時計をみるふりをする。
「……私そろそろ行くね」
「ああ、今日はありがとう。気をつけて帰るんだよ」
アヒトが自分の身を安じてくれていることに嬉しく思い、自然と微笑むことができた。
「こちらこそありがとう。またアヒトとでかけられるといいね」
サラは自分の分のお金をテーブルに置いて店を後にする。
「すうう……はあ〜」
未だに心臓の高鳴りが治らず、サラは深呼吸を繰り返した。
そして、アンとリオナを追って走り出す。
アンとリオナはすぐ近くを歩いていた。
「もう!二人ともなんで帰っちゃうの!」
アンとリオナの後ろからサラは声をかけた。
「え、サラちゃんなんで出てきちゃったのさ!」
「だって、ひとりになった途端に緊張してきちゃってさ」
サラは二人を後ろから抱きしめた。
「まあ、今回はこれくらいにしておくのがいいかもね」
「うん、急ぎすぎるのは良くない」
アンとリオナはサラの頭をなでる。
「「よく頑張りました」」
頭をなでられたことでサラの頰が緩む。
「私、次アヒトにあったらひとりで頑張ってみるよ!」
サラは拳を強く握る。
「あれ?サラちゃんアヒトさんのこと呼び捨てにしてる!」
「い、いいでしょ!呼び捨てにしても。アヒトだって私のこと呼び捨てにしてくれてるし」
サラの顔が赤くなる。
「顔、赤いよ?まだ呼び捨てにされるの慣れてない?」
リオナが指摘する。
「そ、そんなことないよ!」
三人は今日起きたことを話しながら寮へ向けて歩を進めるのだった。
これでこの章は終わりです。次からはしっかりとしたバトルの話に戻していきたいと思います。
その前にちょいと幕間の物語を書いてみました!幕間の話を挟むほどの文字数を書いてはいないけど、まあ読んでくれたら嬉しいです。




