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亜人娘が得たものは  作者: 戴勝
第5章
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第5話 大胆少女のライバルは

作戦会議があった日から二回目の休日。


まさかこんなに早くサラの想い人が見つかるとは誰もが思わなかった。


「サラちゃん!アヒトさんが見つかったってほんと⁉︎」


アンがサラに向かって勢いよく走ってきた。


「しぃ!アヒトさんに気づかれちゃうよ」


サラがアンのはしゃぎを注意する。


「それで、そのアヒトさんは?」


リオナがアヒトの居場所を聞いてきた。


「あそこのベンチに座ってる人だよ」


アンとリオナは店の看板や柱の陰に隠れながらアヒトのいると言われたベンチを見る。


「ほんとだ。いかにも優等生っぽい男子がいるね」


「隣で何か食べてるフードを被った子は誰だろ」


アンとリオナがそれぞれ口を開いた。


「男には見えないね」


「デートだったりするのかな。……さよなら、私の初恋」


サラが空を見上げて涙をこらえる。


「何言ってるのサラちゃん。まだデートって決まったわけじゃないでしょ」


「ぐすっ、かなり仲よさそうだけど?」


そう言ってサラはアヒトの方へ指を指す。


そこにはアヒトの隣にいたフードを被った子から食べ物をもらおうと頼み込んでそっぽを向かれて苦笑いを浮かべるアヒトがいた。


「き、兄妹ってこともあるでしょ!とーにーかーく、近づいて見なよ」


「う、うん」


返事はするが一向に動こうとしないサラ。


そうこうしているうちにアヒトの隣の子が食事を終えたのか、アヒトがベンチから立ち上がった。


「ほら、何してるの!行かなきゃ」


「きゃっ」


アンはサラの背中を押して前に出させる。


サラが振り返る。


アンとリオナがガッツポーズを送る。


サラは服の乱れを直し、アニからもらった小瓶をポケットの外側から握り、深呼吸をする。


そして、アヒトのいるところへ足を踏み出した。


「……そこにいるのはもしかしてアヒトさん?」


偶然にも出会ったように声をかけてみた。


「……あ……」


サラの呼びかけに気づいて振り向いたアヒトは口を半開きにして立ち止まった。


固まってしまったアヒトを見て、もしかしたら自分のことを覚えていないのかもしれないとサラの表情に焦りが浮かぶ。


「君は確か……以前路地裏にいた、サラ……マギアンヌさん?」


アヒトの言葉を聞いてサラは表情を明るくする。


「そう!覚えていてくれたんだね。あの時はどうもありがとう」


アヒトが覚えていてくれたことの嬉しさを気づかれないように頭を下げた。


礼を言って頭を下げたが、その後のことを何も考えていなかった。


何か話すこと、何か話すこと、とひたすら頭の中をグルグルと飛び回っていて混乱してきた。


「痛っ⁉︎」


サラが頭を下げながら考えていると小さな呻きが聞こえた。


サラが不思議に顔をあげると、アヒトがフードを被った子と話をしていた。


「?……そっちの方は?」


とりあえず、隣にいる子が何者かを訪ねて見た。


「ああ、彼女はベスティア」


ベスティアと呼ばれた子を見たサラは、自分よりもちっちゃくて可愛いということに少し嫉妬してしまった。


「へえ、サラよ。よろしくね、ベスティアちゃん」


サラはベスティアに手を差し出すが、睨まれてアヒトの後ろに隠れてしまった。


「あらら、私何か悪いことしたかな?」


もしかしたら嫉妬していたことに気づかれたのかもしれない。それともやはりデートをしていて邪魔したことに怒っているのかもしれない。


サラは内心気落ちしていると、アヒトが否定の言葉を口にした。


「あはは……気にしないでくれ。少し人見知りが激しいだけだから。こんな態度はまだ可愛いもんさ。怒った時は死を覚悟した方がいいね」


そんなに怖い子には見えないと思っていると、アヒトの背中の肉をベスティアが引っ張った。それに涙目になっているアヒトを交互に見て、笑いがこみ上げてきた。


「ぷふっ……くふふ、二人とも仲がいいんだね。どういう関係なの?」


デートではないという確証が欲しくて二人の関係を聞いてみた。


アヒトによればベスティアは親戚の子らしく、今日は服などを買いに街まで来たようだ。


「てことは今日はアヒトさんとデートだったんだね。ごめんね、なんか邪魔しちゃって」


サラは小さくため息を吐いた。


サラは帰ろうかと口を開こうとすると


「ははは、デートだなんて、そんなわけないじゃないか」


アヒトが苦笑しながら否定の言葉を口にした。


サラの落ち込んだ気持ちが再び最高潮になった。サラはとっさにアンやリオナが隠れている方に顔を向ける。


アンとリオナは拳を前後させて「ごー!ごー!」とやっている。


サラは二人に大きく頷き、アヒトの方へ顔を向ける。


「あ、アヒトさん!もしよかったら、私も一緒に行動してもいいかな?ちょうど私も新しい服を買いに来ていたの」


勇気を出してアヒトに聞いてみた。


「それはありがたいな。服はどうにかなるとして、下着類はおれが近くにいるとまずいと思ってたんだ。サラさんがいてくれると助かるよ」


その言葉を聞いてサラは表情を明るくした。サラは跳び回りたい気持ちを抑え込む。


本当はアヒトと二人きりが良かったが文句は言ってられない。今はアヒトと行動できることを喜ぶことにした。


こうして、サラはアヒトたちとともに服屋へ向かうこととなった。


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