第2話 魔術士少女たちの作戦は
サラの手作り夕食を終え、全員がお風呂から上がる。
今は三人全員が寝間着姿である。
「さて、それじゃあそろそろ作戦会議をはじめますか!」
アンが拳を上にあげて指揮を執りはじめた。
「おー」
「お、おー」
リオナがアンに合わせて拳をあげる。
続いてサラが半分だけ拳を上にあげた。
「まず、サラちゃんが出会ったっていうアヒトさんにもう一度会わなきゃならないんだよね。どうやったら会えるかな?」
アンの悩みにリオナが手を挙げて口を開く。
「やっぱり、使役士育成学園に直接赴く?」
「えっ、それだけはだめだよ!周りの人たちに迷惑だし、何より私が恥ずかしいもん」
リオナの意見をサラがすぐに拒否する。
「じゃあ、どうするよ。アヒトさんと出会った商店街をこれから毎日ぶらついてみる?いつかは会えるかもよ」
アンは冗談のつもりで意見を言ったのだが、サラは考え出し
「……それでいいかも」
承諾の言葉を出した。
「え、本気で言ってんの?」
「それ、本気?」
アンとリオナの言葉がサラに向けて同時にかけられた。
「う、うん。学園に赴くよりはこっちの方がいい、かな」
サラの言葉にアンは大きくため息を吐いた。
「はあ……サラちゃん、うちらの学園は商店街に近いからすぐ行けるけど、相手のアヒトさんは使役士育成学園の人なんでしょ?あそこの学園は商店街から結構な距離あるよ?あまり来ないんじゃないかな」
アンはそう言い終えるとサラに両肩を掴まれた。
「どぉしよう……」
サラに涙目で前後に揺さぶられる。
「だ、だから今考えてるんでしょおお……ゆ、揺さぶらないで」
サラとアンのやりとりの横から手が挙がる。
「学園の日は来ない可能性が高いけど、休日になるとわからないよ」
リオナの言葉にアンが目を見開く。
「ナイスだよりっちゃん!さすがだね」
アンがサラの腕から抜け出してリオナの両手を握る。
「う、うんありがと」
リオナが頰を少し赤くしてはにかんだ。
「休日は品揃えのために商店街に赴く可能性が高いよ!だから、サラちゃんは休日に商店街に赴くのがいいってことだよ。まあ学園から出される課題や自主練は休日にできなくなるから学園の日にすることになるんだけどね」
アンの説明を聞いてサラは表情を明るくする。
「たしかに、今日は始業式で早く学園が終わったから商店街に来てたんだね」
「そういうこと!じゃあ次の休日にでも商店街に行ってみる?」
「一緒に来てくれるの⁉︎そこまでしてくれなくても大丈夫だよ!」
「いいのいいの。うちらの仲でしょ。最後までしっかり援助するからね!」
アンはサラに向けてウィンクをした。
「さ、最後までってどこまでかな?」
「そりゃもちろん結婚までに決まってんじゃん!」
「けけけ結婚⁉︎」
サラの顔が真っ赤に染まる。
「そんな、まだアヒトさんがどんな人なのかわかってないんだよ。それにアヒトさんが貴族の家柄だったらどうするの?」
「そんなの推しまでもっていけばなんとかなるでしょ」
「適当すぎない⁉︎」
「まあ、それはまだ先の話だからひとまず休日のことを後々考えていこ!……ということで〜さてさて、うちらの遊びの夜が来ましたぜぇい」
アンが両手を叩いて会議を締めくくり、不敵な笑みを浮かべる。
「あ、アンちゃん、か、顔が怖いよ。明日も学園があるから夜更かしは良くないと思うな……ははは」
サラがお尻で後ずさる。
「ふっふっふ、今日は寝かせないぜ〜。りっちゃん抑えて!」
「りょーかい、とー」
「ちょ、リオナちゃん⁉︎」
リオナがサラを動けなくするために後ろからサラの両脇に両腕を差し込んで羽交い締めにする。
「ま、まって!さっきやめるって言ったでしょ⁉︎」
サラが抵抗しようともがく。
「それは胸を触るのをやめるってことよ。うちの趣味であるサラちゃんくすぐりタイムはやめないに決まってんじゃん」
「そんな趣味はやく捨ててよね⁉︎」
「むりむり、だってサラちゃん感度いいんだもん。こりゃ癖になるよ」
アンが両手の指をいやらしく動かす。
サラが頰を引きつらせる。
その日、魔術士育成学園の寮では楽しそうな声が朝まで続いた。




