第1話 大胆少女の初恋は
時は戻って始業式が終わり、アヒトに路地裏で助けられたサラ・マギアンヌは、アヒトに魔術士育成学園まで送ってもらった。
アヒトが背を向けて去って行くのをずっと見ていると、学園の方からサラに向けられて声がかけられた。
「あれれ?サラちゃんだ!先に帰ったんじゃなかったの?」
「……アンちゃん」
声をかけてきたのは幼馴染で親友のアリソン・フローレス。茶髪のボブヘアーでいつも明るく、サラが行くならと魔術士育成学園に入学を希望してくれたのだ。サラはアンと呼んでいる。
「元気ないけど、大丈夫?」
アンの後ろからひょっこりと顔を出して声をかけてきたのはリオナ・カーティス。
流れるような綺麗な黒髪を一つのおさげにしている。口数が少なめで一人でいる時は本を読んでいるような子だ。この子はサラが十歳の頃にアンが一人でいるリオナを連れてきたのだ。サラよりアンの方によくべったりだ。
二人が不思議そうに近づいてくる。
「……私、恋しちゃったかも」
サラは頰が熱くなるのを感じながら正直に自分が思っていることを口にした。
「えええええ!だれよだれよ?この学園の男子?」
「あのまじめなサラが……意外」
当然のように二人の興味溢れる視線がサラに集中する。
サラは頭から煙が出るのではないかというほどに顔が熱くなっていた。二人には気づかれたくなかったのか少し俯く。
「えっとね……使役士育成学園の男の子なの」
サラの言葉に二人は顔を見合わせる。
なぜそんな困った顔するのかとサラは困惑するがその答えはすぐに聞けた。
「サラちゃん、その恋は諦めた方がいいと思うよ」
「えっ、な、なんでそう思うの?」
「だって、会う機会がないじゃん。これからどう関わっていくの?学園に押しかけるわけにはいかないでしょ」
アンの言葉にサラは地面に両膝をついた。
「終わった……私の初恋……」
サラの明らかにショックを受けた行動にアンが自分が言った言葉が悪いと思い慌てだした。
「ちょちょ、だ、大丈夫だよ!なんとかなるよきっと」
「そ、なんとかなるはず」
リオナが便乗して慰めの言葉を送る。
「ぐすっ……そうかな」
「そうそう!と、とりあえず学園寮に帰ろ、ね?ね?」
そうして三人は学園寮に向けて足を運ぶのだった。
寮に帰る途中、アヒトについて訊かれたので商店街での出来事を二人に話すことにした。
話している間、やけにアンがニヤニヤしていた気がするが気のせいでありたいとサラは思うのだった。
学園寮に帰って現在、サラの部屋にアンとリオナは居た。
帰り道に今日はサラの部屋でお泊まり会をするという話になったのだ。
「泊まるのはいいけど、アヒトさんのことは帰り道で話したことが全部だよ?」
サラはアンとリオナのためにキッチンでお茶を入れながら言った。
「何言ってんのさー、サラちゃんの恋を終わらせないための作戦会議をするに決まってるじゃん!」
「私も、微力ながら手伝う」
アンはサラのベッドに仰向けで大の字に寝転んだ。リオナはその横の床に膝を立てて座り、本を開く。
「そんな申し訳ないよ!叶うかわからないことなんだよ?」
サラはテーブルにお茶の入った湯呑み二人分を置く。
「あの魔術バカのサラちゃんが恋したとか言いだしたんだよ?そりゃ全力で手助けするよ」
「うんうん」
アンがニヤニヤと笑みを浮かべ、リオナがアンの発言に頷いて便乗する。
「むぅ、二人とも私にも怒ることだってできるんだからね?」
サラが両頬を膨らませて軽く二人を睨む。
「きゃーサラの必殺魔術が飛んでくるぞー。りっちゃん防御体制だ!」
「うん!はー!」
リオナがアンの前に立ち、サラのベッドにあった枕を構える。
「もう!そんなことしたらこの寮が大火事になっちゃうよ!」
二人ともいい加減にして!と言ってリオナが構えた枕に向かってポカポカと拳を打つ。
「むむむ……」
リオナが踏ん張っているその後ろでアンがクスクスと笑う。
「くくく……隙ありぃぃい!」
アンがリオナの後ろからサラの脇腹に手を伸ばした。
「ひゃあ⁉︎……ちょ、アンちゃん……や、やめ……」
サラが脇腹をくすぐられたことでバランスを崩したところにアンがそのまま仰向けに押し倒して腰にまたがる。
「うひひひひ、ここかぁ?ここがええんかぁ?」
アンが変態おじさんみたいな口調になりながら追撃のくすぐりを行う。
「やぁ……お願い……も、もう……ゆ、ゆりゅひてぇ」
「やーだね。サラちゃんから恋の手伝いの了承を得るまではやめないんだから」
そう言ってアンはサラのくすぐる場所を徐々に上に移動させる。
「アヒトさんだっけ?その人にこのなかなかの大きさのある胸を使うのもありだね!」
アンはサラの綺麗な形の胸を鷲掴みにした。
「ちょっ、アンちゃん!どこ触って」
サラが両手で胸を隠そうとするが、アンの両足に挟まれることによって身動きをとれなくされる。
アンの胸を触る手の動きがいやらしくなる。
「ちょ……んっ……わ、わかった……んんっ……わかったから……やめてぇ」
サラの声がどんどん甘いものに変わっていく。
その光景を見ていたリオナは自分の胸を見下ろした。
「……私も、胸があったらアンに……」
リオナのつぶやきは、サラは聞く余裕がなく、アンはサラをいじることに集中していたため聞くものはいなかった。
「はぁ……はぁ……んっ……なんでやめてくれないの……んっ」
サラは体をよじろうとするがアンの方が力が上なようでびくともしない。
「ちゃんと言葉で言ってくれなきゃやめないぞぉ〜」
アンの胸を揉みしだく動きは止まらない。
心なしか、アンの頰が紅潮しているように見える。
「いうからぁ……いうかりゃぁあ……わ、私の恋を……てつだってぇ」
「…………よ、よぉしいいだろう」
そう言ってアンはサラの腰の上から退いた。
「はぁ……はぁ……も、もう……これっきりにしてよね」
サラは涙目になって懇願した。
「う、うん……ちょっとやりすぎたかも」
サラはアンにいろいろやられたことによって服がかなり乱れており、頰が紅潮し肩で息をしている。
「……なんか」
すごくエロいとアンは思った。
これを機にサラの胸を触るのはやめようと誓うのだった。




