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突然の宣言

勢いでやっちまった感満載。

「ごめん、もうしたくない……」


 ある日の夜。

 俺は愛する嫁に求愛したところ、そのように告げられた。

 結婚してから十年。

 結婚前は毎晩のように激しく求めあっていた。

 結婚し、子供が産まれる前はお互いに求め合うも、産まれたあとはその回数は激減した。

 無理もない。

 二十四時間三六五日、子育ては休みなしだ。

 慣れない子育てに、家事が加われば嫁のキャパは間違いなくオーバーする。

 嫁と一緒に肩を並べて横になれば、そりゃどうしようもなくムラムラしてくる。

 ここはグッと我慢だと、俺は堪えた。

 堪えてどうしようもないときには、一人ひっそりと自分で済ましたりもした。

 むしろそれである程度は抑えられるからシメたものだったが。

 それに、育児にも出来る限り協力はしてきたつもりでもある。

 職場で、既婚の女性がいればアドバイスを貰ったりして、それを実践もしてみた。

 嫁からは賛否両論だったが……

 あるいは、自分以外の女性からのアドバイスは、良く思っていなかったのかとも思う。

 それも今となれば、というところか。

 そんな子供も、もう小学生だ。

 すくすく成長し、俺も嫁も少しずつ時間が出来、夜の営みが再開された。

 だが、月一回あるかないか。

 それも俺が求めた際に応じてくれれば……の話だ。

 むしろ、応じてくれないことの方が多い。

 その度に聞いてみた。

 なぜ応じてくれないか、を。


 嫁からの答えといえば、


「疲れてるの」

「今日は眠たいな」

「明日早いから」


 というのが殆ど。

 そう言われて拒否られることが続いたから、俺もお互いが次の日が休みというときに求めることにした。

 それでも成功率はごく僅か……


 おいおい、これじゃ飼い殺しじゃないか……


 ため息混じりに苦笑いながらそう自分を卑下してみたこともある。

 それに営みも若い頃とすれば随分と変わった。

 以前はギブアンドテイクではないが、お互いにお互いが気持ちよくなれるようにしあったものだ。

 それが今となれば、俺は嫁が気持ちよくなるよう努力する。


「こうじゃない」

「あぁじゃない」

「こうしてほしい」


 と言われれば、その都度言われたことに合わせて愛撫等を変えていった。

 だが、それでも嫁のパターンにハマらなければ、


「もう、しつこい!」

「痛い! それじゃやだ!」

「なんで同じこと繰り返すの? それ嫌って言ったじゃん!」


 となり、雰囲気は最悪……

 そのまま終了となることも多々あった。

 加えて、俺がこうして欲しい(自分の気持ちよくなること)を伝えれば。


「それ、苦手……」

「苦しいんだよなぁ」

「あんまり得意じゃないから。ごめん」


 て……

 おいおい。それじゃ、俺は自分のして欲しいことは全てお預けじゃないか……


 なんだかな、これじゃ何だか主従関係のようだ。

 亭主と嫁は本来は対等な立場のはずなのに。

 嫁からすれば、要求に応じてやってんだ的なことなのだろうか?


 まぁ、そんな営みが月に一回あるかないか。

 それも成功率は低く、成功したとしても途中で雰囲気最悪のままで途中下車もある。

 その度に嫁は、


「ごめん。私のせい。私が悪い」


 と言うが、嫁は俺の為を思って言ってくれるのだろうが、それは違う。

 俺は俺の男たる全てを否定されたかのような気持ちになる。


 次は絶対にしない!

 誘わない、求めない!


 その度にそう思うのだが、男とは悲しい生き物なのだ。

 やはり嫁を求めてしまう。

 夜の生活が不満ならば、風俗や愛人とか、幾らでも方法はある。

 だが、嫁がいい。

 嫁との営みが最高なのだ。

 風俗や愛人はただの欲求のはけ口なのだろう。

 だが、嫁は違う。

 愛を誓い合った相手だ。

 求めるのは、愛情を感じたいからだ。

 男として、大人として一人の女性を愛しているという証明のようなものかもしれない。

 それをお互いに確認する行為ではないのか。


 だが、……そう、嫁にしてみれば、俺が求めるから嫌々応じていたのだろうか?


「もう、したくない」


 と言われた後、


「嫌になった訳じゃないんだよ。ただ、その、なんて言うか……、今はちょっと……」


 と言いにくそうにブツブツと繰り返している。

 もちろん、仕方のないことだと思う。

 原因は分かってる。

 あの時だ。

 後味の悪かった夜がある。

 恐らく、それがキッカケだ。

 思い返しても後味が悪いのだ。

 実際、俺もそのすぐあとは流石に求める気になれなかった。

 時間が経ってから、そろそろどうかと思い、嫁にキスしてみた。

 胸を触ってみた。

 感じていた。

 嫁は確かに感じていた。


 だが……


「ごめん……」


 小さな声で、申し訳なさそうに告げられた。

 思い当たる節はあったから、仕方ないと思った。

 だが、それが続くと、一緒に寝るのが正直辛くなってくる。

 同じ布団に潜り込み、嫁の匂いと柔らかい感触が伝わってくれば、我慢しろと言うほうが無理がある。


 求めたくなる。

 欲しくなる。

 抱きたくなる。


 だが、答えは「NO」なのだ。

 理由はいつも同じなのだ。


 正直、最近嫁が分からなくなってきた。

 仲良く話してはいるものの、嫁の本心が分からない。

 自然とストレスが溜まる。イライラする。

 今までは聞き流していたどうでもいいことでも引っかかる。

 腹が立つ。

 声が荒くなる。言葉が汚くなる。


 最近ケンカも増えた。

 そう言えば、以前はケンカした後はお互いが謝り、行為に及んでいた。


 今思えば、それを繰り返していた気がする。

 それって、実は良くないんじゃないのか?

 何の解決にもなっていないんじゃないのか?

 よく分からない……

 何が正しくて、何が悪いのか?


 俺は……

 俺はどうすればいいんだろう?





こんな作品ですいません。

でも、自分の思いの丈を吐き出したく、勢いで書きました。

家庭の問題を持ち込むわけではありません。

一人の男の苦悩がここにある。

そんな事を残したかったのです。

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