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牛若と霧原  作者: 浮雲
3/6

お菓子と弁当

霧原目線です。

彼のおかんっぷりが発揮されます。

「……何食ってんの?」

 昼休み、図書委員の仕事で遅れて屋上へ向かうと、牛若がお菓子を食べていた。柵によりかかり、あぐらをかいている。

「ポリッツ」

 パッケージの箱には、シュガー&メープルと書いてある。新しい味だろう。

「朝、昼飯買おうとコンビニに寄ったら、新しく発売してた」

 やっぱり、と内心思いつつ、隣に座る。しかし砂糖にメープルとは、さらに甘いもの足す必要ないんじゃないか。十分甘いだろ。

 ポリポリと美味そうに咀嚼する牛若。

「……食べるか?」

 牛若が差し出してきた。

 一つ頷き、受け取って口に入れる。

 さくさくとした食感と香ばしさがたまらない。……そんなにくどくないな。

「思ってたほど甘くないね」

 牛若が頷く。そういえばこいつはもう昼飯は食べたのか?

「昼飯は?」

 指さした先には、お菓子とあんぱん。

「……お前なぁ……」

 呆れてものも言えない。はあ、とため息をつく。栄養バランス考えて食えっつうの。

「ったく。ほらよ」

 ひょいと自分の弁当とあんぱんを交換する。じろりと牛若が睨んだ。

 大丈夫。さすがに菓子は取り上げねえよ。

「たまにはいいだろ?」

 彼の隣に腰を落とし、パンの袋を開けてかじりつく。

「……おかんみたいだな」

 不満ですと書きなぐっている顔で、ぽつりと呟いた。

「そんなんばっか食ってるお前のせいだ」

「……牛乳はちゃんと毎日飲んでるぞ」

 思わず声を張り上げる。

「毎日⁉……これ以上でかくならんでいい」

 ふと、牛若を見上げる。

「今、何センチ?」

「百八十五」

「がたいもいいし、バスケ部とかに入ればいいのに」

「……小学生の時、バスケクラブに入っていた」

「へえ」

「だが、顔が怖すぎて味方がミスを連発してしまい、やめた。俺がいると勝負にならん」

「そ、それはご愁傷さま……」




「ところで……今日に限ってなぜ屋上なんだ?」

「春の麗らかな陽気の中、こうやって食事すんのもたまにはいいかなあと思って」

 両手をあげ、伸びをすると柔らかな風が頬をなでた。

「よくない?」

 牛若へ顔を向ける。

「ああ」

 口調こそ淡々としているが、口元に浮かぶ笑みから満更でもないことがわかる。

 こいつの笑ったとこ、初めて見た。

 少しは心を開いてくれているようだ。最初会ったときなんかは表情筋が死んでて、ロボットみたいだったからなあ。これから地道に百面相にしてやろう。驚いた顔とか見てみたい。今度、ドッキリ仕掛けてみるか。

「……どんな風になるんだろう」

「何がだ?」

 はっとする。口に出ていたらしい。

「なんでもないよ」

 くすりと笑って、空を見上げる。


 いつか牛若の満面の笑顔を見られる日が来るといいな。



次回は多分、一ヶ月か二ヶ月くらい間が空くかもしれません……。

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