油断している隙に……なんだよ
誤字脱字はいずれ手直しおば。
エスターは俺を発見して驚くと、直ぐにソニアに向かって「発見致しました!」と、涙目ながらも嬉しそうに報告した。
そんなエスターの頬をソニアは引っ張りながら、怒気を込めた声で叱咤した。
「発見致しました、ではないわ。だってエスターが発見したのではないでしょう?」
「ふぁっ………ふぁい。そ、そうれした」
ソニアに頬を引っ張られているせいで、エスターの言葉はちゃんと発音出来ていない様だ。
「全くエスターのせいで無駄な時間を過ごしましたわ」
ソニアが俺の方へと視線を向ける。
過激な発言や行動を聞いていたせいで、勝手にキツイ容姿をしていると思っていたが、こちらを見たソニアの両目は垂れぎみであった。
うーん…………。
女性に対して失礼だが、このソニアという人の見た目はまんまタヌキだな。
バラモス氏がカエル、ペリドート少年が子ガエル、そして目の前のソニアがタヌキ。
エスターはパッとしない安定のモブ顔(失礼)だ。この世界の人間すべてが動物顔では無いようだ。
「さあ、そこで隠れているつもりの貴方?いつまで黙って私たちを見ているのかしら?高貴な私自ら、ワザワザ参って差し上げたのですから挨拶くらいはすべきですわ」
おおっ!?
俺が失礼な感想を抱いていると、ソニアが好き勝手な事を言って来る。
無理矢理部屋に侵入して来たくせに、なんともまあ図々しい事をほざいたものだな。
「…………………どーも。初めましてー」
内心では上から目線のソニアにムカッと来ていたが、一応俺から挨拶をしてやる。
棒読みなのは許してほしい。挨拶はこちらが先にしてやったのだから。
「あら?それが高貴な身分の私への挨拶ですの? これだから下賤な者は嫌ですわ」
「げ、下賤?」
「あら、貴方自分の出自も知りませんの?」
知らんし。てか、気付いたらこの身体でこの部屋に居て、おまけにバラモス氏にぺろぺろされてましたが、何か?
それにその下賤の者の足を、バラモス氏は躊躇なくぺろぺろしてました。どんだけ~?
「知りませんね。気付いたらこの部屋に居たんで」
「ふぅ、嘘を付くにしてももう少しましな嘘があったでしょうに……………。まぁどうでも宜しいですわ。貴方はあの女の子供ですもの………それだけで私がこの後、貴方に対して取らねばならない行動が決まるのですもの」
あの女の子供とは、一体なんだろうか?
この身体の持ち主の母親は、ソニアになにか恨まれる事でも仕出かしたのだろうか?
まぁ、母親がソニアに何かしていたとして、それが子供の俺には関係が無いと思うのは、俺が日本人だからだろうな。
この世界の事はまだ良くわからない。
俺の居た世界とは別の世界で、魔法があり魔獣や魔人が普通に居るって事位かな。
あ、後俺は愛し子って奴で他人に魔力を分け与えられる………らしい。
バラモス氏のぺろぺろの言い訳じゃなければ、だが。
「さ、その子供を連れて参りますわよ、エスター?」
「は、はい!……………………ええっと?どちらにでしょうか、ソニア様?」
「………………奴隷ギルドですわよ?」
「ど、どどどど奴隷ギルドですかっ?あ、あの様な場所にソニア様が参られるのは…………」
「あら、誰が参るといって?行くのは貴方と、この子供だけですわよ」
「ええっ!?あそこは治安がかなり悪いので、私も行きたくないですよ。そ、それにバラモス様の囲ってる少年を、勝手に売りに行く何て…………バ、バレたら私の首が胴からオサラバしてしまいます」
「大丈夫ですわ。貴方がやったと露見せぬよう、私がとり計らいます」
「ほ、本当ですか?全部私に罪を着せて、ポイとかでは御座いませんよね?」
「………………………………………まさか。高貴な身分の私が、その様な事は致しませんわ」
「そ、そうですよね。この件にソニア様が関わっているのは、フルフロントさんにはバレてしまってますし、何らかの対策案がお有りですよね?」
「………………ええ、勿論ですわ。うふふ…………」
「では安心ですね! それでは行って参りま…………あ、あれっ?ソ、ソニア様?あの少年が居りませんが?」
「な、何ですって?クッ………。エスターがグダグダと文句ばかり言って、直ぐに行動に移さないせいで逃げられたのですわっ!あの子が捕まらなかったら、酷いですわよ?」
「ひっ………ひいっ!!す、直ぐに捜して参りますっ!」
***
やれやれ。誰が奴隷ギルドに何か行くかっての。
奴隷と付くんだ。決して良い場所じゃないだろうと予測出来たので、俺はこのままバラモス氏の邸から逃げる事にした。だってこのまま部屋に居たら、いつぺろぺろ以上の事をされるか分からんし、それ以上は絶対にごめん被りたい。
あいつら話に夢中で俺がゆっくりと破壊された扉の方向に向かっても、全然気付かないんだもんなー。流石は高貴な身分(笑)のお方だよ。
それにしても何段あるんだよ、この階段。部屋から廊下へと出た俺は、途中で気絶している男性を跨ぐと、邸から脱出するために、階段へと向かったのだがこの階段が無駄に長い。流石は高位貴族の邸だ無駄が多い………いや、無駄しか無い。
ペリドート少年の口振りからは、3階程度の高さとの事だが、謀られたのか?
「ひぃ、ひぃ、ふぅ、ふぅ…………………」
つ、辛い。この身体、あんまり体力無いな。
階段降りるだけで息切れとか、ヤバくね?
部屋でゴロゴロしていたのが祟ったか。少しは運動とかしとけば良かった!悔やまれる。
ソニアに捕まったら、奴隷ギルドへ連れていかれるので、絶対に捕まりたくは無い。
俺の身体よ、根性だっ!熱くなれっ!もっと熱くなれよぉっっっ!!!
修造魂が宿ったかの様に、俺はがむしゃらに邸の外まで走り出たのであった。
かわいこちゃんとは上手くお喋りできない。
中学生男子のような、今日この頃。