彼の目は節穴なんだよ
ちょっち短い。
「うっうわぁぁぁぁぁ!!!」
続き部屋に退避していても感じる、物凄い部屋の振動と轟音に俺は、床へとしゃがみ込みながら悲鳴を上げた。
しばらくすると、やっと振動が収まった。
俺は続き部屋から、そおっと顔の左半分だけ出すと、扉のを方を確認して絶句した。
「うふふ…………。私に掛かれば、この程度の扉なぞ、こんなものですわ」
「ソ、ソニア様っ!!扉だけでは無く、壁も破壊してしまって居りますよ。ああっ…………豪華な内装や、家具までも魔法の余波でグチャグチャでは御座いませんか~!」
「う、うるさいですわエスター。それ以上ギャーギャー囀ずるならば、この扉と同じ様にして差し上げても宜しいのですわよ?」
「………………………………………………………………」
う、うん。エスターと呼ばれた人が黙り込んでしまうのも頷ける。
さっき部屋の惨状を見た俺も絶句しちゃったからな。
攻撃魔法、怖っ!!そしてそれを家の中で躊躇なくぶっ放す、ソニアって人、すっげぇ怖っっっ!!!
「あら、お利口ですわねエスター。 さぁ次はこの部屋の中に居る者を、私の前に引きずり出して来るのですわ!」
「ぎ、御意!」
エスターと呼ばれた青年は、部屋をウロウロしている。
俺1人で寝るのには大きすぎるベッドの下や、ふっかふかの高級ソファの裏、クローゼットの中などを捜しながら「ここには居ませぇーん」とか「もう危険は………多分無いので、出てきても大丈夫ですよー?…………多分」などと呟いている。
うーん…………。俺を捜しているのだと思うが、そっちよりも先に確認すべき場所があるじゃん。
そう、現在俺が居る続き部屋とかさ。しかも現在俺の顔の左半分は、丸見えだしな。
エスターは一通り隣の部屋を捜し終えると、真面目くさった表情でソニアに報告する。
「ソニア様っ!この部屋には誰も居りませんようですっ!」
「……………………………………エスター、貴方の目は、節穴なのか、し、ら~~~?」
ソニアは地の底から響くような重低音で、区切り区切り言いながらエスターの頭を鷲掴むと、こっそりと覗いていた俺の方へと、掴んでいた頭を向けた。
「ああっ。ソ、ソニア様ぁ~!痛いですっ!痛い、痛たたた………た…………っ! い、居たぁぁぁぁぁぁ!??」
涙目のエスターと俺の視線が、やっと交差したのであった。