ぺろぺろがバレたら自殺もんなんだよ
「ワシの36パンめの性奴隷にちょっかいを、掛けおったな?イースト菌男爵よ!」
「くっ…………。私は彼女を真剣に愛しているんだっ!」
「はっ!愛、だと?その様な目に見えぬものに、縛られおって!お前はまだまだ未熟な小僧だな?」
「なにぃ?だったらどちらがより彼女を愛しているかで勝負だ!」
「ふんっ!望むところだ!」
はあ…………。
本の続きを読もうとしているのに、子供共のごっこ遊びの声がずっと聞こえて来る。
どうやら俺の部屋の真下で落ち着いてしまったらしく、現在イースト菌男爵が、天然酵母侯爵の36番目の性奴隷に懸想してしまい、そのパンを掛けての勝負を始めたところだ。
あーもーどっちでも良いけど、もう少し静かに遊んでくれないかな。
それかどっか別の場所で遊べよなー。
あの子供共をどっかに行かせるには、どうしたら良いものか。
俺は豪奢な室内を見回した。
花瓶が目につく。でもなぁ……花瓶を落としたりなんかして、もし破片で子供共が怪我なんかしたら、気まずいしなぁ。
あと、なんかこの花瓶、めっちゃ高価そう。
花瓶を壊したのを盾に、ベロチューとか迫られたりしたら断りきれないので却下だな。
うーん…………あっ!そうだ。水をかけるとかならどうだ?
ほっといても乾くし、怪我をする恐れもまず無いし。
自画自賛だが、結構名案じゃね?
部屋に用意されていたティーカップに、お風呂場から調達した水を注ぎ、窓際へと向かう。
窓から下を見ると、子供共がよく見える。
俺は狙いを定めてカップの中の水を、子供共にぶっかけてやった。
バシャッ!!
「うわっぷ!」
「ひょえっ!」
ははっ。見事に的中。
ほら早く驚いて逃げろ。この場所で遊ぶのは危険だぞ?
「な、何だこれ?み、水!?」
「ぷあっ!上から降ってきましたよぅ。でも雨は降ってませんから、誰かが水でも溢したんですかね?」
俺の予測どおり、驚いている2人。
さあ、後は逃げるだけだぞ。
しかし次にこの2人がとった行動は、逃走では無かった。
「僕にこの上から水をかけただと?使用人が粗相でもしたのか?懲らしめてやる!」
「あっ!ベリトード様、あそこです!あそこの窓が開いてます!」
「ん?おおでかしたな!どれどれ…………………………んっ?あそこは確か」
うぎゃっ。
逃げないで、水をかけた犯人を突き止めようとするなんて予想外だ。
でも…………わざとじゃ無いって言えば、事なきを得るだろうか?いや、実際はわざと水をかけたんだが。
ん?あれっ?外が静かになったな。
俺が慌ててる間に、あの2人は居なくなったのか?
確認するため、そおっと窓から顔を覗かせると、こちらを凝視していたベリトード少年と目が合った。
「?」
「?」
互いの頭にクエスチョンマークが出た。
「なっ!お、お前は何者だっ!?なぜ父上の私室のある3階の部屋に居るのだっ!!」
ベリトード少年は、物凄い驚き顔で、俺にそう質問してくる。
俺がなぜバラモス氏の私室がある3階に居るのか、だと?
そんなん知らんがな。
むしろ俺の方が聞きたい位だ。
「………分からない。気付いたらここに居たから」
一応答えてやる。真実をな。
「はあっ!?何を惚けているんだ!僕はこのゲロッグ侯爵家の跡取りだぞ?下手な誤魔化しは許さないんだからな!」
はぁ………全くこれだから金持ちの坊々はよぉ。俺自身もここに居る理由を知らんのだから、他に言いようもないんだよ。
「事実だし」
「くっ………。馬鹿にしてるな。そこが立ち入り禁止階層でなければ」
「立ち入り禁止階層?」
言葉通りに受け取ると、ここはバラモス氏しか立ち入れない場所にあるって事だよな。
どんだけ息子とかにぺろぺろするとこ見られたくないんだって話なー。
まぁ……………そりゃ見られたくは無いか。
俺だってもし息子に、そんな場面見られたら自殺もんだしな、うん。