すっかり忘れてたんだよ
誤字脱字……etc.
多分、いや間違いなくありますが、書き上がったので投下するであります!
助けを求めた俺の願いは、神に聞き届けられた。
首の耐久力の限界に挑戦していた、と言っても過言では無いくらいの時間が経過した頃、俺と陰険腹黒イケメンの居る部屋の扉が唐突に開け放たれた。
「リケルメッ!リケールメェェェッ!!」
騒ぎながら扉から現れたのは、不審者にしてお人好しのギアンという名前の人物であった。
「どうした?ギアン…………」
「ヤバイ……ヤバイんだよ!」
「な、何だ?どうした? はっ!も、もしやゲロッグ侯爵家から追っ手でも差し向けられたのか?」
な、なぬっ!?今聞き逃せない言葉があったぞ。
バラモス氏からの追っ手とな?
そりゃあ出るか。自分で言うのも何ですが、俺ってこの世界では貴重な存在だからな。
しかしその追っ手、本当にバラモス氏から放たれて居るのだろうか?
確かにバラモス氏からならば、俺の身柄はぺろぺろと引き換えではあるが保証される。
だがもしソニアの手の者………例えばあのエスターとかいう奴だったら?
そのまま奴隷ギルドへ、連れていかれる可能性はなきにしもあらず。
そこで中年のアブラギッシュなオッサンに、二束三文で買い叩かれて、毎晩淫らな行為を強要されたり、淫猥な欲望を迸らされたりしてしまうんだ、きっと。
ふぎゃーーー!!!
そんなの絶対に無理っ!バラモス氏のぺろぺろですら、気が重いのにそれより数段上の行為なんて出来ないからっ!ノーセンキューだからっ!!
絶対に初めては可愛い女の子か、絶世の美女か、とにかく女性とって前世から決めてますから!
しかし不吉な…………。男に買われるイメージしか沸かなかったんですけど、どゆこと?
俺が自分の妄想でウンウン唸っている間にも、陰険腹黒イケメンとギアンの会話は続いていた。
「あん?ゲロッグ? はっ! 違っげーよ!そんなんじゃねーよ」
「おいおい、そんなんって………お前は」
「レリィの発作だ。俺がゲロッグの邸から盗ってきた魔石なんだが、どうやら俺程度の魔力では扱えないみたいなんだ。せっかく盗ってきたのに使えなきゃ意味無い。リケルメ……頼む!」
ギアンが陰険腹黒イケメン………改め、リケルメに手のひらサイズの透明な石を、差し出して頭を下げた。
「…………分かった。それ、貸してみろ」
リケルメはそう言うと、透明な石をギアンから受け取って自分の手のひらに置くと、石を握り締めて黙り込んだ。
「………………………………………………………」
しばらくすると、リケルメが握った石の周りが淡く輝いてくる。
ふへぇ…………これぞ異世界だと、思わせる光景だ。確かに未知の世界だ。
今までは魔力とか言われても、ピンと来なかったけど(だって終始ぺろぺろされてただけだからね)こんなの見ちゃったら、認めるしか無いよね、この世界が本当に未知の力がある世界だという事を。
べ、別にバラモス氏を信用して居なかったとかじゃ、無いんだからねっ!
ただ………俺の置かれた状況が状況だったから、半信半疑だっただけだからねっ!
「……………っ………………ぐぅっ…………………」
黙って石に魔力を込めていたリケルメだったが、小さく声を溢すとガクリとその場で膝をついた。
「ハアハア…………ハアハア…………。今回は………これを…………レリィに………使え………………ハアハア………ふぅ………」
「お、おう。ありがとなリケルメ。 でもそ、そんなに消耗すんのか?」
「あ、ああ。その魔石…………かなりレアだな。普通の魔石の…………5倍は入るぞ」
「そうなのか?そりゃ、ラッキー!」
「………まぁ魔力込める回数は少なくて良いだろうが、毎回これだと流石にキツいな……………」
「はっ? マジかよっ!?リケルメでもキツいのか? お前、確か貴族並の魔力持ってなかったっけ?」
「ああ、その俺ですらこの様……………だからな」
そう言うと、リケルメは自身の膝をポンと叩いた。
「あ……………す、済まねぇなリケルメ……………」
「いや、俺のことは………気にするな。それよりも早く………レリィに渡して来いよ…………発作、何だろ?」
リケルメは透明から水色に変わった魔石をギアンに渡した。
「あ、ああ!本当にありがとなっ!!」
ギアンはお礼を言うと、入ってきた勢いそのままに部屋から飛び出して行った。
ギアンが居なくなると、直ぐにリケルメは力尽きた様に床に膝をついたまま、ガックリと肩を落とした。
あ、あー…………どうしよう?
今ならここから逃げられるけど、流石にこの状態のリケルメを放っては置けないよなぁ。
てか、微動だにしないけど、死んでたりしないよね?
俺はゆっくりとリケルメに近寄ると、脈を診るために手首へと指をあてた。
トクッ………トクッ…………トクッ…………。
脈拍は微弱ながら安定している様だ。
「ふぅ……………生きてるな」
緊張でドキドキしていたが、俺はホッと溜め息を吐き出した。
そして触れていた指をリケルメから放そうとした瞬間、逆にリケルメから掴まれた。
「ど、どういう事だ?さっきまでの息苦しさがまるで無い。それに……………枯渇仕掛かっていた魔力が、少しだが回復している……………だと? ま、まさかお前、愛し……………」
驚愕しているリケルメと視線が合う。
う、うげぇっ!
触ったのは不味かった!うっかりしていたが、俺って接触で相手に魔力チャージしてやる事が出来たんだった。しかも確実にリケルメの奴、俺の事を愛し子って言おうとしてたよな?気付いた?気付いちゃった?
う、うわっ!ど、どうしよう………どうしよう…………。よ、よーしっ!当初の目標通りに、ここから逃げよう!!!
反射的に俺は部屋から飛び出した。
今後ちゃんとBLになるのか不安に………いえ、何でも。




