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他視点なんだよ その②

またもリケルメ視点ですが、後半壊れます。

リケルメの姿がおかしな方向へシフトチェンジしてしまう危険性を孕んでます。


読まなくても問題は無い………と、思われます。


 


 俺とダグがゲロッグ侯爵邸へと辿り着くと、丁度木の上から飛び降りてくるギアンと鉢合わせた。


 ギアンの奴はホクホク顔で「良い物手に入ったぞー!」と喜びながらこちらへ近寄って来た。

 どうやら既に侵入してしまった後らしく、もうどうしようも無かった。

 やれやれ、邸に侵入した犯人が、ギアンだとバレていない事を神に祈るしか無い。


 俺が毛ほども信じていない神に祈っていると、突然後ろに居たダグがすっとんきょうな悲鳴を上げた。


「ちょちょちょ、ちょっと待ったぁぁぁ!ギアン?ギアンくん?ギアンさん?そ、その背中に担いでいる人の様な物体は何ですか?」


 ダグは動揺のあまり、変な言葉使いになってしまっている。


「お?コイツか?あー……………ゲロッグの邸の庭に居た奴?」

「「はぁ~~~!??」」


 ギアンの爆弾発言に、俺とダグの頭上に大量のクエスチョンマークが浮かぶ。

 ま、まさか金目の物以外、それも人を拐って来るなど、夢にも思っていなかった。


「ギアンッ!!! お前バカか?誘拐は流石にやり過ぎだろ?」


 ギアンのバカさ加減には、ほとほとあきれ果てた。

 誘拐は人命にも係わって来る関係上、盗みよりも罪が重い。しかもこの豪華な衣服に、高価そうな宝飾品、容貌は気絶しているせいなのか、俺には見えないのだが見事な黄金の髪…………………これは高確率で貴族の子息だ。


 も、もしやゲロッグ侯爵の子供じゃ無いだろうな?

 たしかゲロッグ侯爵には何人か、この位の年齢の子供が居たはずだ。


「ギアン…………」

「へあっ!?そ、そんな恐い声出すなよリケルメ…………。それに別に拐おうとして連れてきたんじゃないぜ?」

「…………………と、いうと?」

「コイツが、ゲロッグの邸から逃げたいから連れてってくれって言ったんだ!」

「……………………………………………」


 俺はギアンの目を注意深く見詰めた。


 特にギアンの表情に嘘は無い。

 ギアンは嘘を付くとき、必ず右の眉が上がる癖があるのだが、今回はそれが無かった。


「おい、リケルメ………ギアンの奴、嘘は言ってないぜ」


 ダグもそこを観察していたらしく、俺の耳に囁いて来た。


「ああ、どうやらその様だな。………………しかしそいつを連れては帰れな……………」





「おい!怪しい物音はあっちからしたのか?」

「は、はい。私たちが聞いたのはヤズの大木がある方からです!」

「全く!この忙しいのに、警備の者はどこに行ったのだ!」

「何でもソニア様がお呼びとの事で御座いまして……………」

「チッ!あの 正妻(アバズレ)…………面倒事しか起こさんな!」

「ちょっ!ちょっと!声が大きいですよ~隊長ぉ~!」


 何人かが騒ぎながらこちらに近づいて来るの声が聞こえてくる。


「くっ…………。そうも言ってられないか!ギアン、ダグ、一旦この場から逃げるぞ!!」

「だな!」

「了解!」


 そう言い合うと、俺たちはゲロッグ侯爵邸を後にした。

 ギアンが連れてきてしまった人物をも、一緒に。






 そして現在、俺たちは絶賛悩み中である。

 あの時はしょうがなかったにしても、あの少年を貧民窟スラムに連れてくるべきでは無かった。



「それにしても………大変なことをしでかしてくれたな」

「あははっ!んな、褒めるなよ~………へへへ」

「あー……………一応言っておくが、褒めてねぇからな?」

「痛っ……………………叩くなよなー。暴力反対!」

「は?自業自得だろ、それ」

「んだとっ!?」


 事の重大さに気付いていない様子で、ヘラヘラ笑みを浮かべるギアンに、俺は苦言を呈すがまともに捉えない。


 しばらくギアンと睨み合っていると、隣室からドスンと何かが落ちる音がした。


 そして微かに聞こえてくる呻き声。


 どうやらギアンが拐って来た少年が、目を覚ましたのだろう。


「全くお前がこんな面倒を起こさなければ………。ギアンは反省してろよ。俺が様子を確認してくる来るから」

「えー?俺も一緒に行くぜぇ…………」

「駄目だ。お前は待機だ。ダグ!任せたぞ?」


 不満げなギアンが小声でブチブチ文句を垂れている。そんなギアンにダグはよしよしと、頭を撫でてやっている。

 ダグめ…………ギアンを甘やかし過ぎだ。



 溜め息を吐きながら隣室へと向かうと、声を掛けながら扉を開けた。


「起きたのか?すまないが入るぞ?」


 扉を開けた瞬間、俺は目を奪われた。その少年の美しさに。


 瞳を閉じていても美しかった容貌は、開いたら更に破壊力が増していた。

 金色の襟足より少し長いストレートな髪、白磁の滑らかな頬に、スッキリと通った鼻筋、薄いが品の良い形の唇、そして長い睫毛に覆われた碧玉の瞳……………完全な美が、こんな粗末なあばら家に存在している奇蹟。


 俺は言葉を失った。瞬きすら忘れた。


 目を離したら、このまま消えてしまうのでは無いかと思う程の美貌であった。


 う、うわあっ………お、落ち着け俺!このまま無言って、おかしいから。すーはーすーはーすーはー…………う、うむ、少し落ち着いた。


「ん?ああ、やはり起きていたか」


 ぐ、ぐはっ…………。それだけか?何か気の利いた台詞が他にもあったよな?素っ気ない言葉しか出て来なかった自分に幻滅だ。


 ……………それにしてもこの少年、ここまで全く喋ってないな。それに物凄く見詰めてくるからちょっと確認した方が良いか?


「おい?お前喋れないのか?そ、それにそんなに凝視されると流石に気まずいんだが?」


 俺の質問に、少年は更に目力をアップさせると、


「………………………………ふんっ!」


 と鼻息も荒くそっぽを向いてしまった。


 その態度が近所の猫を彷彿とさせて、彼は美しいだけでなく可愛らしさも兼ね備えているのかと感動した。

 可愛い。ずっと見詰めていたい。抱き締めたい。腕の中で啼かせた………………いやいや、何を考えているんだ俺はっ!こんな幼い少年に対してへ、変態かっ!!


 自分の中に突如現れた劣情に、愕然としつつも、プルプルと小刻みに揺れ始めた彼の後ろ姿がまた可愛らしかったので、ついつい無言で見詰め続けてしまったのだが、可愛い態度をとる少年にも非が有ると、ここに記述しておく事にする。




実はムラムラしていた………とか。


お巡りさーん!ここでーーーす!!



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