逃げるが勝ちなんだよ
短いです。
勢いで邸を飛び出した俺であったが、この世界で目覚めてから、初めての外だった事を失念していた。
ヤ、ヤバイぞ。これはどこに向かえば良いんだ?
邸の敷地内に隠れるべきか、それとも敷地外へ出ていくべきか。
だが、悩む時間はそう長くは無かった。
バタバタと階段を掛け下りて来る足音が聞こえて来たからだ。
足の速さではエスターには到底勝てないだろう。
見つかる前に、どこかに隠れる事に決めた。それにエスターの事は、さっきの出来事で少し学んだ。
あいつは間違いなく隠れてしまえば俺を簡単には見付けられないはずだ。だって隣の部屋に居て、なおかつ左半分の顔が丸見えだった俺を、見付けられなかった程の節穴だからな。
おっしゃ。先ずは木々に隠れながら邸の外周を確認だ。どっかからこっそり出られるかもしれないからな。
俺的に機敏な動きで、木の影に隠れながら遠くに見える邸の外周とおぼしき壁に向かう。
「しゅだっ!しゅだだっ!」
俺の口から出るのは緊迫感の欠片もない声だったが、別にふざけちゃいない。
勝手に出てくるのだ。
隠れては動き、隠れては動きを繰り返すこと数十分、俺はやっとこの邸の外周の壁へとたどり着く。
「ぜぇぜぇ………はぁはぁ………」
マ、マジで辛い。俺の体力は限界を越えた。
足がまるで生まれたての小鹿のようにプルプル震えている。
この窮地を脱したら、絶対に体力の増強を計ることを心に堅く誓った。
呼吸を回復させるために、少しだけ立ち止まって居たのたが、垂れてきた汗を無造作に高級そうな上着の袖で拭うと、改めて目の前に聳える4、5メートルはある壁に目を向ける。
「あー…………こ、こりゃあ、壁を越えるのは無理だな。流石は侯爵家ってか? 無駄に高い壁を造りやがって」
この時ばかりは、あの人の良さそうなバラモス氏のカエル顔を思い出しながら、悪態を付いてしまった俺をどうか許してほしい。
ここは監獄とかでは無いので、必ず出入り口があるはずだ。
この外周を歩いていれば、いずれ出入り口へとたどり着くだろうし、どっかから出られるかもしれない。
走る体力はもう無いので、俺は壁に手を添えながら、ゆっくりと歩き出したのであった。
ファイアーエムブ○ムエコーズ遊び盛り始めました。
ただでさえ遅いのに、また遅くなります事をここに謝罪致します。