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何が何だかわからないんだよ

適当に温く読んで頂けたら幸いです。

 



「起きて下さい」


 ペシペシ………。


「何時まで惰眠を貪るつもりですか?図々しい」


 ペシペシ………。


 う………うーん?誰かに頬を叩かれてる。


 ぼんやりと霞がかった様な感覚の頭を、ゆっくりと上に持ち上げると眼鏡を掛けた男と視線が合う。


「ふぅ………やっと目を覚ましましたか。では単刀直入に申し上げます。藤崎 東吾(ふじさき とうご)さん、貴方は死にました」


 男はシルバーフレームの眼鏡を、クイッと持ち上げながら、とんでもない言葉を事も無げに言い放った。


「……………は、はあ?今なんと仰いました?」


 ぼんやりしていたので聞き間違えた?

 目の前の眼鏡男は今、何て言った?もう一度聞く。


「ええ、ですから貴方は死んだのです。こちらが資料になります。確認が出来次第、印鑑………は、お持ちでは無いでしょうから拇印とご署名をお願いします」


 淡々と現実味の無い話をしてくる眼鏡男は、俺に1枚の紙を渡してくる。




 藤崎東吾。年齢16歳。

 某月某日、都内某所にて某配送会社のトラックに轢かれて即死。事故の原因は某配送会社のトラック運転手のわき見運転の可能性が示唆されている。



 ……………………………………某ばっかだな。この内容。



 って事は何だ。俺は死んだのか。そっかそっか………………………………。



「って、なんじゃそりゃあぁぁぁ!!!」

「静かにして下さい。貴方が納得致せないのは、分かりますが私も暇ではありませんので、読み終わったのならば、早急に拇印と署名をして下さい」


 つ、冷たっ。

 人が死んだってのに、冷静過ぎじゃね?てか、今さらだけどコイツ誰?


「えっと………そう言えばあんた…………誰?」

「やれやれ。やっとですか?私が何者であるかなぞ、この格好を見れば分かるでしょう?」


 眼鏡男は小馬鹿にした様に俺を一別すると、その場でくるりと回った。


 回る必要性はあったのか?などと、脳内で余計な突っ込みをしつつ、眼鏡男の格好を観察する。


 リーズナブルな金額で購入可能の、既製品感丸出しな黒のスーツ、真っ青なストライプネクタイ、茶色の革靴………………そこから導き出し俺の答えは。


「………………………………………サラリーマン?」

「はっ!貴方は顔だけでなく、頭も悪いのですか?」


 さっきよりも更に馬鹿にした様な目付きで、俺を見据えて来る眼鏡男。


 俺にはありふれた企業戦士にしか見えんが。しかも今、さらっと俺の顔と頭が悪いって言わなかったか?

 性格悪すぎだろ、コイツ。


「顔と頭の悪い貴方にも分かるように教えて差し上げます。私は死神です」

「し、死神?えっ?何?新手のギャグか何かか?てか、頭はまだしも顔は関係無くねぇ?」

「今の話のどこにギャグ要素がありましたか。ありませんよね?はい、教えて差し上げましたのでこの話はこれで終了。ちゃっちゃと署名と拇印押して!早く! ったく、急かさないと動かないから顔と頭が悪いと言うのです」

「顔は関係ねぇぇぇぇぇぇ!!!」


 ケッ………それにしても何故そんなにも急かすんだ?どうせ俺は死んだんだから、もう少しゆっくりと心の準備とかをさせて欲しいんだけどな。


「あー………何をそんなに急いでるんだ?死神ってのがギャグじゃないのなら、時間は無限にあるだろう?」

「はあ?時間は有限ですよ。私は後、5分で本日の死神業務が終るのです。所用があるので定時で上がるため、急いでるんです!ほらほらペンを持って!早く!」


 死神業務って………………まんま仕事か。


 嫌がらせなのか眼鏡男改め、死神男は俺の頬にペンのキャップ部分をぐりぐりと捩じ込んで来やがる。痛いっつーの!


 あーもうっ!どんだけ定時に帰りたいんだよ、コイツ。


 渋々ペンを受け取ると、地味に痛む頬を擦りながら渡された紙の署名欄に【藤崎東吾】と記入する。

 拇印………拇印………。

 左手の人差し指で良かったけか?ん?朱肉はどこだ?


「……………朱肉………は?」


 ペイッと朱肉が投げ渡される。

 それを俺は見事に顔面でキャッチした。

 コイツ…………どんどん俺への対応が適当になって来やがる。その上時計しか見てねぇ………。




 署名と拇印が済んだ紙を、死神男へ手渡す。


「汚い字ですね。あっ!ちょっと!ここ!記入漏れが有りますよ。全く!ほら最後の項目のどちらか選択して下さい!早く!」

「最後の項目?そんな事さっき言ってたっけか?………どれ?」

「ここ、ですよ。迅速に丸して、早く!」


 んん?なになに?


【転生】or【消滅】


「…………………………………選択して下さいって、こんなの一択しかないじゃん」

「無駄口は結構ですので、ほら早く!」



 俺はため息を吐き出しつつ、【転生】の方に丸を付けたのであった。





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