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「卅と一夜の短篇」

トリガーエムブレム(卅と一夜の短篇第12回)

作者: 錫 蒔隆

神輪みわ比氣ひき氏は代々、管領家かんれいけ慶滋よししげ氏に仕えてきた名門である。司馬しば隆胤たかたね比氣庄ひきのしょう受領ずりょうし、比氣氏を称したことが始まりである。

比氣氏はもともと、「蟇紋ひきもん」を定紋じょうもんとしていた。正面を向いて鎮座するひきがえるの意匠である。韻を踏んだものであることはあきらかである。

「ロ」の字のなかに、片仮名の「ノ」が垂れる意匠を裏紋としたのは、比氣氏中興の勇将・比氣ひき左近さこん隆衡たかひらである。隆衡は管領・慶滋よししげ右大将うたいしょう晴鏡はるあきらに仕え、つき右近うこん景親かげちかとともに「左右の備え」と謳われた。

「ロ」に「ノ」。鉄炮の引金を意匠にするという独特の感性。「引金紋ひきがねもん」。智勇兼備の月景親にくらべて猪突猛進のイメージが強い隆衡であるが、実際は教養と諧謔に富んだ人物であったのかもしれない。鉄炮衆をよく活用したことはなく、騎乗突撃を得意とした驍将である。そんな彼が「引金紋」を旗差とした意図は、なんであったのか。鉄炮という新兵器にあやかりたかったのか。それとも、たんなる洒落であったのか。のちに鉄炮傭兵団「木笠党きかさとう」の棟梁・木笠きかさ鹿角斎ろっかくさいの狙撃にたおれたのは、なんとも皮肉な結末であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読み終えて「これは史実の話か?」と錯覚してしまいそうな文章。 実際、ほかの人の感想を読むまで史実か創作か判断に迷いました、笑。 このリアルな文章を見習いたいです。 そういえば、弓矢や刀剣は…
[一言] さっすが錫さん、めっちゃ物知りーー!! と思って感想欄を覗いたら、「引金紋」は創作だったのですか!!( ´・ω・)びっくりっ 歴史に疎いので、武将の難しいお名前がフルネームで出てくるだけで「…
[良い点] ロにノで引金紋というのですね。まぐろ、民話は好きなのに歴史は苦手で、とても勉強になりました。 おしゃれとセンスと皮肉が効いた紋になったところが何とも感慨深いです。
2017/04/01 19:33 退会済み
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