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押し入りました!

3作目、初の連載です。

ド趣味なもの投稿できて嬉しいです。

昨年の夏頃に書いたもので、獣人と人間の溺愛物語です。R15は一応、です。


よろしくお願いします。


目覚ましがなる前に目が覚めた。私にとっては結構珍しいことだった。

目を開けて、その理由が分かった。

私の下半身に人が乗っていて、そして服がめくれ見えていたお腹を舐めていた男がいたのだ。

私が起きたことに気づいた彼は、私の顔をじーっと見てくる。反応を、した方がいいのかもしれない。


「何してんの?」


特別朝が弱いわけじゃない。だから、この反応は普段通り行った。しかし、彼には不服な反応だったらしい。

顔をしかめて、そのままお腹を舐めてきた。少しくすぐったいのでやめてほしい。


「私が恥ずかしがることを期待してるなら無駄だからやめな」


そう言うと、舐めるのを止めてこちらを見た。くりくりとした目が可愛らしい。この行動から、もしかしたら獣人なのかもしれないな。


「何で照れないの?」

「大して照れるシチュエーションでもないでしょ」

「せめて怖がるよ」


確かに、昨夜施錠はしっかりした。どうやって入ってきたかは気になるけど、部屋は荒らされていないし、犯人は目の前にいるんだから焦る必要もない。

本当にやばい奴なら、私が起きた時点でコトは終わっている。


「あと30分寝るから、舐めてていいよ」


そう言うと、悲しそうな顔をされた。どうすれば正解なんだ。真っ赤な顔でもすればいいのか?それをするには、のぼせるしかないんだけど。


「レイシャの真っ赤な顔を見たい」

「私の首絞めてみたら?」


試しにそう言うと、とても焦ったように彼は叫んだ。


「俺はレイシャに求婚しにきたんだからそんなことできない!」

「キュウコン…求婚、か。それはそれはこんなところまでお疲れ様。おやすみ」


最後の抵抗だったのか、彼は私の口の横を舐めたが、私は眠気に従って寝た。



アラームを止めて起きると、私のお腹を枕にして彼が寝ていた。なぜ、まだいる。

ふと見ると、獣の耳が生えていた。やはり獣人だったか。

白い耳、って。結構珍しかったよね。


この世界の4割弱は獣人だ。完璧な獣は2割で、残りの4割強は人間。バランスがとれているため、獣人への差別はない。獣への差別は少し残っているらしいが、彼らを守る法律はあるため、きちんと生活を送れているのだろう。


「ねぇ、起きて」


何気に彼は重い。蹴り飛ばすのもいいが、一応彼が強盗だった場合を考えて、荒々しいことはしない方がいいだろう。


頭を撫でてみるが、ふわふわな毛並みが手のひらを過ぎるだけで彼は起きない。耳を引っ張ると、少し唸った。しかし私のお腹に頬をすり寄せただけで起きなかった。


次に目に入ったのはしっぽ。うん、触ってもいいだろう。

しっぽに手を伸ばして、根本の部分から先っぽのところまで撫でた。

瞬間、耳がピンッと立って起きた。

ちなみに顔は真っ赤だった。


「おはよう、どいてくれる?」

「しっぽ、触った?」

「うん。だって起きなかったんだもん」


そう言うと、頭をぐりぐりとお腹に押し付けてきた。


「くすぐったいし変な気分になるから、ダメ」

「ごめん、でも不法侵入してきて変態行為をした君を気遣う必要はないと思う」

「レイシャが感じてなかったから、変態行為ではないよ」


変態行為が何かという話をしてるんじゃないんだ。


「何で私の名前知ってるの?」

「好きだから!ね、俺と結婚してください!俺幸せにするよ、大好き!」

「そっか、いらない」


悲壮感にまみれた彼の顔。少し面白い。止まってしまった彼の下から足を抜いて、ベッドから降りた。


「ななな何でぇ!俺が獣人だから!?人間がいいの?」

「元から結婚する予定はない」

「じゃ、じゃあ恋人!」

「結婚しないから恋人もいらない」

「んじゃあセフ」

「余計いらない」


単語を言わせない。純粋そうな目をしておきながら、一端の知識はあるんだね。面倒なこった。


「俺はレイシャのこと大好きなのに!!」

「そっか、ならまず君、自己紹介しようか?」


パアッと明るくなる表情。私は彼が何者か知らないからね。


「俺はクレバス!白狼の獣人!レイシャと結婚したい!」

「願望は聞いてない」


白狼、か。猫科の動物は好きなんだけど…

頼んでみるか。


「獣化して」


首をかしげながら、彼は白狼になってくれた。はっきり言って、とっても綺麗でかっこいい。

獣化すると喋れなくなるから、うるさい求婚を聞かなくて済むし可愛いし一石二鳥だ。


よしよし、と頭や顎の下や耳の後ろやいろんなところを撫でて、そして抱き締める。ふわふわして癒されるなぁ。


そしたら、人間に戻った。


「俺レイシャに抱き締められてる!!」


離れようとしたけど、もうすでに抱き締められてて逃げられなかった。


「白狼の君はかっこいいよ」

「今の俺は!?」

「変態だからちょっと無理」


絶望の表情。表情豊かでいいなぁ。


「クレバス、君は」

「俺の名前呼んでくれた!結婚してくれるの!?」

「どうしてそうなるか丁寧に説明して」


どうやら、獣人は名前とあざながあるらしく、あざなを普通は教えるらしい。そして名前を呼び合えるようになったら、それは結婚する証らしい。

つまり彼はわざと名前を教えたのだ。


「君のあざなは?」

「やだ教えない」


アホに見えて意外と策士のようだ。


「君は、喋らなければかっこいいし、もう少し美人な子か、獣人に求婚しなよ」

「やだ!」


我が儘か。


「ねぇ俺の名前呼んで!」

「やだ」


真似をしてそう言うと、頬を膨らませて拗ねた。子供みたいで可愛いかもしれない。


「獣化したままでいるなら、飼ってもいい」

「飼われるなら人間のままで飼われたい」

「少し思考が歪んでるみたいだね」


完璧に人化してる今、彼を納得させて帰ってもらうしかない。

今日はちょうど仕事がない日だ、だから時間はある。休日ではなく、店長が帰省していてついでに店員の私達も休みを貰ったのだ。

普段ならもう家を出ていかなければいけない時間で…


「ねぇ、君」

「名前で呼んでくれなきゃやだ」


少し迷ったが、呼ぶ。とても聞きたいことがある。


「クレバス」

「何っ!?」


顔と顔の距離15cmって、近くないか。


「もしかして、私が休みなのを知って部屋に入ってきた?」

「もちろん!レイシャの迷惑になったら嫌われるから!」

「私について知ってること、ちょっと言ってみて」


そう言うと、スウッと息を吸って話し出した。


「レイシャ・アーヴィル、本のカフェ『本と栞と珈琲』で働いている。趣味は読書とボーッとすることと甘いものを食べること。好物はゼリーとあんみつと牛肉、嫌いなものは苦いものと辛いもの。動物は猫派で、虫と幽霊が嫌いで一人暮らしはする予定はなかった。これまで数回告白されてるけど全員断ってて、そのうち一人がストーカー化してたから俺が潰した。家族構成は」

「ストップ、もういいや」


俺が潰した、って言ったよね?その時すんごい怖い目したよね?さすが肉食獣。


「それどうやって調べたの?」

「今話したやつは1週間くらいレイシャの周り探ってたら分かった。あと30分くらいは話せるんだけど…」

「いや…あの、君こそストーカーじゃない?」


心外だ!という顔をしたけど、今まで物理的にストーカーしてなかっただけで、情報量だけなら立派なストーカーだよ。


「まぁ、今日は帰って」

「やだ!今日からここが俺の家!」

「じゃあ私は引っ越す」

「やだ!!」


お前、やだしか言ってないよ。

獣化した彼は可愛いし癒されるから養うのは構わないけど、人間の彼は扱いに困りそうだ。

そんなに他人にイラつかない私だから、ストレスたまることはないと思うけど、今までの生活壊されるのもな。


「じゃあ、もしここに一緒に住むとしたら、君は何ができる?」

「レイシャのためなら何でも!」

「今のところ、私は一人で生活が完結してるから君はそんなにいらないんだけど」


目を見開いて、そしてうつむく彼。悪いこと言ったかな、とは思うけど反省はしない。なぜなら、不法侵入して勝手に人のお腹舐めて求婚してくる奴が悪いからだ。


「でも、俺、レイシャのこと好きだし…獣のままだったらレイシャとイチャイチャできないし照れてもらえないし…レイシャとこれから暮らしたい、し…」


イチャイチャ、したいのか?獣人に求婚されたことないから、彼らにとって人間はどういう対象なのか分からないんだよね。


「獣人も、人間っぽい欲があるの?」

「ある!だから俺はレイシャに抱きつきたいし抱き締めてもらいたいしキスもしたいしってかその先もしたい!」

「質問に願望を乗せて答えるのやめようか」


彼の口を手で塞ぐ。とりあえず黙らせた。これからどうしよう。獣人キラーの女友達がいるから、彼女に紹介するのもありか。


私は結婚する気も誰かと付き合うつもりもないから、彼と一緒に暮らすには、彼がずっと獣化してペットとして置く以外にはないんだけど、それはやだと言うし。


「っ、は!?」


ぬる、とした感触が手のひらに走る。舐められた、というのが分かった。

お腹を舐められた時も思ったけど、意外とくすぐったいのだ。


ガシッと手首を掴まれ、そのまま舐め続けられる。離してもらおうと抵抗するけど、指までくわえられる始末だ。


「く、クレバス!ストップ!」

「やら、れーひゃの指おいひい」


2本一気にくわえられて、ペロペロと舐められる。半分が獣だから、舐めることに抵抗がないんだ。


このまま放置するわけにもいかない、地味にこれは恥ずかしい。


「クレ、バス!」

「ん、れーひゃ、顔赤くなってふ!」


にへら、と嬉しそうに笑うクレバスに、少し可愛いと思ってしまったのは負けた気がするから秘密。

多分彼は、外に閉め出してもずっとドアの前にいるんだろう。

いや、鍵閉めた部屋の中にも入ってきたんだから入ってくるか。


「一緒に住むから、離して!」

「ほんと!!?」


パッと指を口から抜いて、クレバスは満面の笑みで言った。

負けだ、こんなの。


「本当。だから少しは私の言うことを」

「やったー!レイシャ大好き結婚しよう!」


抱きついてきたその衝撃に耐えられず、上半身が倒れる。この体勢、何となくまずい気がする。

いやでも、さすがにクレバスも道徳的に考えられるよね。


「このままレイシャのこと襲っていい?」


ダメだったか。


「それをしたら結婚なんて一生しない」

「じゃあキスで我慢する!」


それもダメ、と言う前に唇に食らいついてくる。

貪り食うようにハムハムして、押し返しても全然離れてくれない。それどころか、口の中に舌まで入ってきた。

こいつの教育どうしよう。


「レイシャ、他のこと考えないで」


一瞬離れた彼の口はそんな言葉を発して、もう一度私にキスをした。

視界の端に映るのは、彼のしっぽ。激しく揺れている。

悪戯心で、彼のしっぽに手を伸ばして撫でてみた。さっきの彼の言葉が気になってたのだ。本当にくすぐったいのか、とか。

そしたら。


パッと口が離れ、クレバスがこちらを見た。やけに艶っぽい目だな、とか思った。


「さっきは濁したけど、耳としっぽは俺の性感帯だからね。煽んないで」

「あ、あー…そうだったんだ」


慌ててしっぽから手を離す。

今思ったけど、クレバスは純粋そうなだけで、本当はきっと策士で腹黒い。


「お返し」


クレバスは私の首をペロリと舐めたと思ったら、小さな違和感、傷みを感じた。

え、ちょっと待て。


「クレバスっ」

「レイシャは俺のものー!」


へへ、と笑う彼は、さっきの子供っぽい可愛らしいクレバスで。

マークつけられたか。


「あんま俺のことなめないでね?」

「もう全くなめてない」


冷静すぎる主人公と、意外と策士な獣人くん。

よかったら続きもどうぞ!

よろしくお願いします。

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