首都襲撃【前夜】
「彼女が本日教育隊からきた賀川一曹だ。先日戦死した…斎藤一曹を埋める形で我々第二中隊第一小隊に編入した。前線で戦う女性隊員は珍しいが、賀川隊員は我々に見合った、そして超える存在にある。」
「こんなに褒められるほど私は優れていません。入隊出来たことを光栄に思っています。宜しくお願いします。」
150cmくらいの小柄な女性が声を張り上げた。
「畑、先に営内室に案内してやれ。あとで合流する。」
演習場から二人がそそくさと抜けた。
「言っておくが、俺も含めて独身は多くいる。そんな'男クサイ'我がチームを保つ為にも、絶対に彼女には手を出すな。畑に案内させたのはあいつが結婚しようとしてるからだ。彼に今日一日任せる。いいか?」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
数人の隊員が笑ったが黒谷に睨まれすぐやめた。
「気をつけ!解散!3分後に営内に再集合!」
「でだ、どうだ?畑ちゃん。あの新入りは?」
通常の訓練を終えた、宿舎の部屋に戻った三人(佐藤亨雨、畑大地、シズ瑠)は互いのコップ(官給品)に二リットルサイズボトルのコーラを注いだ。
「はいよ。」
「しっかしコーラか、淋しい気もするな。」
「気のせいだよ。さっきここの端にあるコンビニ行ったら酒がなくてな、売り切れ?って聞いたら
市ヶ谷の連中に売るなって止められたみたいで。ひでえ話だ。全く。」
「少なくとも俺たちは中対派だからな。反感買うだけだ。」
「新入りは?」
「ああ、ごめん。話逸れたな。極めて優秀だ。さすが教育隊から抜擢されただけ有る。ロープ降下、射撃は俺の入隊した時より十倍上手い。」
「立ち位置はどうなるか」
「斎藤は俺の元スポッター(スナイパーの補助をする観察手)だった事もあるから、その立ち位置かもしれない。」
「噂では幹部候補生試験通ったってな。」
「じゃあなんでこんなところに?」
「市ヶ谷のクソが何かに役立てようと育てようとしたらしい。だが筋金入りの中対派で、手に負えなかったからいっそ中対派の本拠地に飛ばされたと。皮肉交じりの行為だったが優秀だったみたいで今本隊に入ったと。市ヶ谷は今頃慌ててるみたいだぜ。」
「地獄耳佐藤、ちょっと尊敬する。」
「…そうゆうことで、ここに1、2班を、ここに3、6班を運んで貰いたい。」
「第三段階。撤退は?」
「しない。」
「そうか。じゃあ俺たちはさっさと逃げる。」
「 奏、裏切りは得意か?」
「いいや。」
「俺たちはやる気は充分だ。訓練通りにいくぞ。」