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美女と賢者と魔人の剣  作者: 片遊佐 牽太
第六部 絶界の山脈篇
60/117

059 復活

 今の情景が、初めての出会いの記憶と被る。


 青い長髪、豊満な胸元を主張するロングドレス、そして、目鼻立ちのしっかりした顔――。

 彼女は自身の印象をぎ澄ませる眼鏡を中指で押さえると、ニヤリと表情を崩した。


「お主、私の不在を突いて、その書棚の本を狙っておったな?

 まったく――油断できぬ男じゃ」

 俺は悪戯を指摘された子供のように、両手を振りながら否定する。

「ご、誤解だ。そんな訳ないだろう?

 ――それよりレーネ、久しぶりだな」

 明らかに話題を逸らそうとする発言だったが、レーネはそれに乗って書棚のことは忘れてくれるようだ。

「久々――という程、時間ときが経っておらぬようにも思うがな」

「そうか、そんなに俺のことを忘れずにいてくれたのか」

 俺が調子に乗ってそう言うと、彼女の目がスッと細まった。

「――お主、殴られるときは右手がいいか、左手がいいか、どちらが好みじゃ?」

 言いながら拳を上げたレーネを見て、俺が焦る。

「ちょっ、待て待て!

 今の純粋な発言に、何のとががあるって言うんだ!?」

「お主のような下品で不純な男が“純粋”という言葉を使うこと自体、許されざることじゃな。

 ――それはそうとして、何をしに来た?

 さすがに、何の用もなくここへ来た訳ではあるまい」

 俺はひどい発言を受けながらも、ゆっくりと階下へと降りていく。

 もちろん、その間にこの絶景むねのたにまを楽しむことを、忘れてはならない。


 階下に降りると、レーネは鋭い目つきで俺をにらむように見ていた。

「もちろん、ちゃんと用があって来た」

 若干の自信を込めて言う俺を見て、レーネは途端に胡散臭うさんくさそうな表情をする。

「――お主のことじゃから、どうせろくでもない用件なのじゃろう」

「ひ、ひでえ――」

 相変わらず扱いは悪い。

 だが、一通りの憎まれ口を叩いた後、レーネは少々深刻そうな表情をして言った。

「まあいい。お主の用件とやらは後で聞く。

 今は急ぎ、やらねばならぬことがある。

 丁度良い。少し付き合え」

 彼女レーネが俺を伴って行動するのは、俺の修練――もとい、俺をいじめていた時以来のことだ。何が“丁度良い”なのかは、微妙ビミョーに気になるところだが――。

 とはいえ普段見ない彼女の表情に、ただならぬ雰囲気を感じるのも確かだ。

 俺は自分の表情を引き締め直し、書庫の奥へと進んでいくレーネの後を追いかけるのだった。



 レーネが向かったのは、書庫の一角だ。

 彼女の目の前には書棚があり、そこに並んでいる書籍も特に不審な点はない。

 彼女は俺が側に控えているのを確認し、目の前の書棚に並んだ本の一冊を手に取った。

 すると、その本が鍵になっていたのか、ズルズルと音を立てて書棚が横へとスライドしていく。

「こんなところに仕掛けが――」

 俺は素直に驚いて、書棚に隠された先を見る。

 少なくとも俺がいたときは、こんな仕掛けがあることに気づかなかった。

 書棚の先は、どうやら下りの階段になっているようだ。


 階段は光源ライトともしたいくつかの燭台によって、照らし出されている。

 レーネが先に階段を下りていき、俺は無言でそれについて行く。

 周囲にはレーネの履いたヒールが立てる、コツコツという足音が響いていた。


 階段を下りきったところは小さなホールのようになっていて、その先には木製の扉がある。

 レーネはそこで俺を振り返った。

「ケイ、闘いの準備をせよ。

 この先に少々手強いやつがいる。

 久々にお主の力が見たい」

 俺はレーネの顔を見る。レーネの顔に笑みはない。真剣な表情だ。

 俺は茶化すことをやめて、資産インベントリから装備を取り出していく。

 レーネに「手強い」と言わせる敵はどんなヤツなんだろうか? 正直一人で闘うというのは、不安もある。

「――どんなヤツが出てくるのか、判ってるのか?」

 俺がレーネに尋ねると、彼女はゆっくり首を振った。

「判らぬ。

 じゃが、そこそこ手強いことは判っている。

 ――ただ、お主が持つ火と光の属性があれば、有利に闘えるかもしれぬがな」

 俺はレーネの発言をなぞって、敵を想像する。火と光が弱点と考えると、俺の頭に何となく嫌な予感が湧いてくる。

 準備を整えた俺は、扉の向こう側を見通そうとした。

 側にいるレーネは、扉を凝視する俺の様子を、興味深げに観察している。

「なるほど、そうやって見えぬものを見るのか。

 しかし、扉の向こう側まで見えるとはな――」

 レーネは全てではないが、俺の能力ちからのことを知っている。

 俺はレーネの言葉には反応せず、扉の向こう側の様子に集中する。


 ――いる。

 かなり向こうの方だが、何かが動いている。複数ではない。一匹のように見える。

「一匹のようだが、どんなやつかは判らない。

 かなり遠くに見える。この先は広間か何かか?」

 俺が尋ねると、レーネが答えた。

「広間――というか、広い空間じゃな。

 部屋の様に、床や壁が整備されたものではない。

 言うなれば、広い洞窟のようなものじゃ」

「判った。

 ――レーネは、闘わないんだな?」

 一応の確認のようなものだった。

 俺と共にいた時に、レーネは魔物モンスターと闘ったことはない。

 だが、彼女の答えは、俺の予想を裏切るものだった。

「――いや、私も支援サポートに入る。

 お主だけで始末できれば良いが、必要に応じて手を出すことにする」

 俺は思わず意外そうな表情をして、レーネの顔を見据えた。

 レーネは俺が驚いているのを見て、フフフと微笑をたたえる。

「では――扉を開くぞ」

 レーネはそういうと、魔力を込めて扉を押していく。

 扉自体をしっかり調べなかったのだが、どうやらかなり強い魔法で施錠されているように見えた。


 扉が開くと、俺とレーネがその空間に侵入する。

 周囲を見るとレーネの言葉通り、無骨な岩肌が露出したままの場所だ。

 確かに広い洞窟というのが表現として合っているのかもしれない。

 俺とレーネが中に進んで行くと、無音の空間に、二人の足音がいやに大きく響いていた。

 俺は自分に掛けてあった付与エンチャントを、レーネの方にも掛けていく。

 不安もあるのだが、俺の中にはレーネと共に闘うという、何とも言えない妙な高揚感があった。

 ただ、俺は完全装備なのだが、レーネはいつもの姿で丸腰だ。

 共に闘うと言いながら、これまでピンチになっても放置され続けた経験を思い返すと、若干不安に――。

「――おいでなすったぞ」

 レーネの声にハッとする。

 前方を見ると、結構な勢いで近づいて来ている影がある。だが、幸いにして、状態ステータスを確認できる時間はありそうだ。

 俺は対象を絞り込み、目一杯の集中力で凝視する。


**********

【名前】

 蘇りし者レブナント

【クラス】

 魔物モンスター不死者アンデッド

【レベル】

 48

【ステータス】

 H P:9313/9313

 S P:3411/3411

 筋 力:2233

 耐久力:1899

 精神力:688

 魔法力:323

 敏捷性:908

 器用さ:614

 回避力:891

 運 勢:122

 攻撃力:2321(+88)

 防御力:1987(+88)

【属性】

 闇

【スキル】

 闇属性魔法2、魔力制御1、剣術5、格闘4、吸血、呪い、猛毒、魅了6、攻撃魔法抵抗レジスト3、闇属性耐性★、精神耐性★、病気耐性★、睡眠耐性★、状態異常耐性★、自動体力回復8、復活▼

【スキル】

 体力吸収、魔力吸収

【装備】

 ブラッディソード(+88)

 ブラッディマント(+88)

【状態】

 なし

**********


 ――こいつ、守護者ボス級に強いんだが。

 下手な魔人より強かったりするかもしれない。

 魔法は気にしなくて良いレベルで助かるが、それ以外は嫌なスキルのオンパレードだ。

 呪いや猛毒は、ちゃんと状態異常耐性で防げるだろうか? 以前罠の猛毒はアッサリと掛かってしまったし、苦痛耐性も働いているのかどうか怪しいぐらいのものだ。耐性系や抵抗系のスキルは、正直気休めにしかなっていない気がする。

 それに、最後の「復活▼」というのは何だ? 「▼」が付いていることもあって、追加の説明があるのだろうか?

 俺がそのマークを押してみると、予期した通り、端的な説明が表示された。


*****

【スキル】

復活▼

不死者アンデッドは火属性または光属性以外の攻撃で止めを刺すと、復活することがあります。

*****


 げっ、これはヤバい。

 ――ってか、レーネが俺に闘わせようとしている理由はこれか!

 以前見た彼女レーネ状態ステータスは、レベルが高すぎて詳細まで読み取ることはできなかった。

 だが、俺はレーネが水属性であることは知っている。しかも彼女は――魔人だ。

 だとすると、レーネは火属性が使えず、光属性も使えない可能性が高い。

 無論、レーネの力は、蘇りし者レブナントなど圧倒するのは間違いないだろう。

 とはいえ彼女の持つ属性の攻撃では、何度も何度も復活してくる可能性があるため、厄介な相手だということは考えられる。


「――なぁにが“丁度良かった”だ。

 後でヒィヒィ言わせてやるぜ」

 俺は迫り来る敵から視線を外さずに、小さく、独り言のようにつぶやく。

 だが、耳のいいレーネは、その発言に気づいたようだ。

「――お主、真面目に闘わねば、後ろから撃つぞ」

「――さあ、さっさと片付けよう!!」

 俺は誤魔化ごまかすように叫びながら、敵の前に飛び出していった。


 前方から迫り来る蘇りし者レブナントは、見た目マントを羽織った普通の人間に見える。

 だが、その顔も手も不自然な程にどす黒く、決して生きた人間だとは思えない。

 動きの速さは、手練てだれの人間と変わらないと感じた。逆に言えば、不死者アンデッドと言っても、ゾンビのようにノロノロとしていない。

 俺は敵に支配者の魔剣ローリンザーを突きつけ、その先端から光刃ライトエッジを放っていく。

 支配者の魔剣ローリンザーを通すのは、魔力増幅の効果を期待してのものだ。ただし、消費するSPは増加する。

 果たして普段よりも大きく拡張された光刃ライトエッジが、蘇りし者レブナントに真っ直ぐ襲いかかっていった。

 蘇りし者レブナントはそれを全く避けようとせずに、真っ直ぐに光刃ライトエッジに突っ込んでいく。当然光刃ライトエッジが当たった腕や胸には、黒く焦げた跡が残った。

 蘇りし者レブナントは、被弾を気にすることなく、真っ直ぐ俺に向かってくるようだ。右手には赤黒い剣を持っている。

「攻撃を受けると体力、魔力を持って行かれるぞ」

 後方からレーネが声を掛けてくる。心配してくれているのだろうか?

 俺は慎重に剣の動きを見極めると、右手に持った支配者の魔剣ローリンザーでそれを受け止めた。

 金属同士の接触のはずだが、妙に鈍い音がしたのが判る。

「剣の魔力を利用される。支配者の魔剣ローリンザーで受け止めるな」

 再び後方から声が上がる。

 俺は仕方なく鍔迫つばぜり合いになっていた支配者の魔剣ローリンザーを引きながら、支配者の籠手ロードブレイサーを通して、炎弾フレイムボールを撃ち出した。距離が近かったこともあって、炎弾フレイムボール蘇りし者レブナントの右脇腹にクリーンヒットする。

 蘇りし者レブナントの右脇腹は、一気に肉が崩れたような状態になった。だが、どうやら痛みなどは存在しないように見える。蘇りし者レブナントは体勢を崩したりせずに、そのまま俺に左手を振るってきた。

 俺はさすがに武器を持たない左手で、攻撃を仕掛けてくることを想定していなかった。一瞬防御動作が遅れ、支配者の魔剣ローリンザーを持つ右手の甲を引っかかれてしまう。

 と、その瞬間、俺は目の前が一瞬暗くなるような感覚におちいった。

 ――まずい、何かの状態異常を喰らってしまったかもしれない。


「油断するでない!」

 再び後方から声が飛び、直後に水清ピュリファイの魔法が飛んでくる。

 俺の状態異常は正に一瞬で解除された。そもそも何の状態異常だったのかも、しっかり把握できていない。


 俺は気を取り直して、対峙する蘇りし者レブナントの追撃を警戒する。

 だが、蘇りし者レブナントは身体の方向を変えると、俺の横を素通りして行こうとした。

 高位魔法である水清ピュリファイが、蘇りし者レブナント嫌悪ヘイトを高めてしまったらしい。

 蘇りし者レブナント攻撃対象ターゲットはレーネに移り、俺に対しては背中を見せる。

「お前の相手はこっちだ!」

 俺は叫びながら二つの光刃ライトエッジを放つが、それが背中にヒットしても蘇りし者レブナントは振り返りもしない。

「チッ――」

 レーネが舌打ちしたのが判る。

 俺が止めようとするのもかなわず、蘇りし者レブナントはそのまま飛び込むように、レーネに襲いかかった。

「――!!」

 飛び上がってレーネに斬りかかろうとした瞬間、蘇りし者レブナントは空中で“何か”に捕まってしまう。

 見ると、魔力の流れが透明の手を形作り、蘇りし者レブナントを押さえつけていた。

 けがらわしいものを見るように、レーネは目を細めている。

 そして、彼女が右手を挙げると、その手から凄まじい光の束が放たれた。

 空中に固定された蘇りし者レブナントは、完全にその光の直撃を受ける。

「グアアアアァァァァッ!!」

 直視できない光量を放つ雷鳴トレノの魔法が、蘇りし者レブナントに突き刺さった。

 遠くに吹き飛ばされた蘇りし者レブナントには、胸にポッカリ大穴が開いている。

 見れば蘇りし者レブナントのHPは、既に半分近くにまで減っていた。

 レベル差があるとはいえ、洒落にならない火力だ。これには俺も、ゾッとする。

「――俺が闘う必要あるのか、これ?」

 思わずそう漏らすと、レーネは俺に向かって怒りの声を上げた。

「サボるでない、早く仕留めぬか!

 でないと、お主の尻にもう一つ穴を開けるぞ!」

「――どっちの方が下品だか!」

 俺は吐き捨てながら、蘇りし者レブナントに追い打ちをかけようとする。

 胸に穴が空いたところで、蘇りし者レブナントがそれを気にする仕草はない。

 先ほどから蘇りし者レブナントは、どの魔法も全く避けようとしていない。ひょっとしたら、それが不死者アンデッドの特徴なのかもしれなかった。

 だが――それは、俺にとっては好都合だ。


 俺は土属性魔法の蔦の手アイヴィを使って、蘇りし者レブナントの足を止めることにした。

 蘇りし者レブナント機敏きびんではあるが、動きが直線的で読みやすい。

 俺は予測した場所に蔦の手アイヴィを仕掛けていく。すると、蘇りし者レブナントはアッサリとそれを踏み付け、足を取られて転倒した。

「オオオォォォッ、グオオオォォォッ!」

 蘇りし者レブナントは何とか拘束を解こうと、うめき声を上げている。

 俺は礫雨ロックレインを発動すると、つぶてに光属性を付与していった。

 集中力を維持するために、俺はその場から動くことができない。光属性の礫雨ロックレイン蘇りし者レブナントに降り注ぎ、体中の肉を次々に削ぎ落としていく。

「――ダメだ、火力が足りない」

 俺は自身の攻撃力不足を痛感する。

 弱点属性を付与した礫雨ロックレインだが、蘇りし者レブナントのHPを一割も削ることができていない。見た目では有効打になっているのだが、問題は“自動体力回復8”の存在だ。数値パラメータを見るだけで、減ったHPが見る見る戻っていくのが判る。気休めだと思っていた攻撃魔法抵抗レジストも、作用しているのかもしれない。

 俺は戻るHPを見ながらふと思いつき、蘇りし者レブナント回復ヒールを掛けてみた。元の世界のゲームでは、不死者アンデッドに回復魔法でダメージを与えられることがあったからだ。

 だが、想像に反し、蘇りし者レブナントのHPは普通に回復してしまう。

「――お主、さては裏切ったか」

 レーネの目が細まり、俺に向けてスッと手が持ち上がる。

「待て待て待て!! 俺は大真面目だ! ダメージになるか試してみたんだよ!」

「――チッ」

 彼女の目は明らかに胡散臭うさんくさいものを見る目だ。

 俺は仕方なく、ストレートにレーネを頼る作戦に切り替えた。

「レーネ、済まないが氷雨アイスレインをやってくれ。俺がそれに光属性を付与エンチャントする」

「――私の魔法に関与できるというのか?」

 レーネは俺の提案には、疑わしげな表情だ。


 俺は自分の発動した六大属性魔法に、さらに六大属性魔法を合成したり、付与魔法を上掛けすることができる。

 だが、他人の発動した六大属性魔法には、自分の六大属性魔法を上乗せすることは出来ない。

 具体的に言うと、シルヴィアが発動した岩壁ロックウォールを土台にして、土銃ドレイクガンを放つことはできないということだ。

 しかしながら以前俺は、シルヴィアが発動した業火インフェルノに、光属性を乗せることには成功している。

 つまり俺は、他人の発動した六大属性魔法に付与魔法を掛けることで、魔法に関与した経験があるのだ。

 ――とはいえレーネの魔法力は、シルヴィアよりもかなり高い。

 その時と同じように、レーネ相手に上手く行くかどうかは判らなかった。

「やってみる。

 ――いや、やってみせる」

 無理やり言い切った俺に、レーネは即座に判断する。

「よかろう、やって見せよ」

 レーネはそう答えると、直ぐさま蘇りし者レブナントに向けて、氷雨アイスレインを発動した。

 右手を振り上げた彼女は、さも軽々と魔法を発動したように見える。

 だがその魔法は、俺の氷雨アイスレインとは比べものにならない威力のものだ。

 勢いはもとより、一つ一つの氷塊ひょうかいの大きさがまるで違う。

 俺は左手の支配者の籠手ロードブレイサーに意識を集中すると、氷塊へ向けて光属性を付与していった。

 現れる氷塊の多さに、俺は魔法の強力さを感じながら、ただひたすらに光属性を付与エンチャントし続ける。

「――効いておる」

 レーネは叫び声を上げ続ける蘇りし者レブナントを観察しながら、小さくつぶやいた。

 蘇りし者レブナントは光をたたえた氷塊の豪雨に撃たれ、あっという間にHPの大部分を削られていく。

 俺はそれを見て、意を決したように蘇りし者レブナントへ向けて飛び出した。

 丁度、蘇りし者レブナントも拘束を抜け出し、俺とレーネの方へと掛けだしていく。

「これで“復活”はナシだ!!」

 俺は叫びながら、光属性を付与エンチャントした支配者の魔剣ローリンザーを目一杯に突き出した。

 支配者の魔剣ローリンザーは狙いあやまたず、蘇りし者レブナントの腹を串刺しにする。

 その瞬間、蘇りし者レブナントは激しい炎に飲み込まれた。

「ウグアアアァァ――!!」

 剣に仕込んだ接触魔法の火嵐ファイアストームが、蘇りし者レブナントの身体の中で発動する。

 蘇りし者レブナントは完全に火だるまになり、走り出した勢いそのままに、俺に身体を預けてきた。

「――くっ」

 ギリギリ絶対防御結界アブソリュートディフェンスを発動したが、わずか四秒間の結界では、その全てを防ぎきれない。

 蘇りし者レブナントが完全にHPを失うまでの数秒間、炎は俺の皮膚も一緒に焼き焦がした。


 ――と、俺を癒やす完全回復フルヒールが、その傷を綺麗に修復する。

 俺は一人で闘っていた訳ではないということを、思い起こさせてくれた。

 レーネは呆れた表情で、俺の側に近寄ってくる。彼女は蘇りし者レブナントの落とした憑代よりしろを拾うと、呆れたままの表情で俺に言った。

「――お主、いい加減無茶な闘い方を止めねば、いつか命を落とすことになるぞ」

 俺はその発言にニヤリと笑う。

「俺を心配してくれるのか。こう見えても意外とレーネは優しいんだよな。

 ――って、待った! よせ、手を下ろせ!!」

 俺はただならぬ魔力の高まりを感じて、慌ててその場を逃げ出すのだった。




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