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美女と賢者と魔人の剣  作者: 片遊佐 牽太
第五部 サリータ篇

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057 捨て身

「――おはよう、ケイ」

 俺が目覚めた時、既に支度を調えた様子のセレスティアから声を掛けられる。

 見ると朝日が部屋に差し込み、それがセレスティアを後方から照らしているように見えた。

 彼女の金髪が陽光に溶けるように感じられて、毎度ながら神々(こうごう)しい雰囲気を漂(ただよ)わせている。


 俺が見る限り、セレスティアの表情に、気負いはない。

 優しげに微笑む顔からは、むしろある種の諦(あきら)めに似た、決意を感じさせる。


 今日、セレスティアが負けたらどうなるかを、考える必要はない。――というか、考えたくない。

 俺自身も、彼女が必ず勝つことを信じて、決戦に望む方がいいだろう。



 俺たち四人が朝食を終え、支度を調えると、間もなく部屋に豹男(レンツ)が入ってきた。

「昨晩は良く眠れましたか?

 早朝で恐縮ではあるのですが、早速闘技場へ向かうとしましょう」

 豹男(レンツ)の方は、いつも通りの様子だ。

 彼が負けたところで、怪我さえしなければ失うものはないだろうから、気負いがなくて当然なのかもしれないが――。


 俺たちと豹男(レンツ)が闘技場に到着すると、初めてここに来た時と同じように、竜人(ヴァイス)が猫顔の獣人を伴って、既に待ち構えている状態だった。

 竜人(ヴァイス)は俺たちの姿を認めると、挨拶なしに声を掛けてくる。

「この前の再現だな。

 闘いの内容まで、再現でなければ良いのだが」

 竜人(ヴァイス)はそう言いながら、若干侮(あなど)った調子で笑みを浮かべた。

「では――時間に限りがありますので、早速始めましょうか。

 ――セレスティアどのは、既に準備出来ていますか?」

 豹男(レンツ)の問いかけに、セレスティアは静かに頷(うなず)いた。


 セレスティアの表情は、闘技場に入ってくるまでは穏やかだったのだが、闘技場に入って竜人(ヴァイス)の姿を見た途端に、堅くなった気がする。

 もちろん俺は、彼女の勝利を信じたいのだが――。


 豹男(レンツ)とセレスティアは闘技用の防具を身につけ、自分たちの武器を確認して対戦の準備を整えている。

 豹男(レンツ)は左右の手に審判の双斧(レトリビューター)を、セレスティアは右手に聖乙女の剣(ジャクリーン)、左手に聖乙女の盾(シールドオブライン)を持ち、装備に関しては両者ともに前回から変化がない。


 だが準備が整い、二人が対峙(たいじ)しようとした瞬間から、セレスティアは俯(うつむ)いて、何かを我慢しているかのような表情になり始めた。

 俺はさすがに心配になり、セレスティアに声を掛けようとする。

「セレス、まさか体調でも――」

 セレスティアは、その俺の言葉を途中で遮(さえぎ)るように、突然大きな声を出した。

「――ヴァイスどの!

 今更なのだが、お願いがある」

 今にも対戦が始まろうというときの出来事に、竜人(ヴァイス)は若干気分を害したのか、目を細めて返答した。

「――何だ?」

 その返答を聞いて、続けてセレスティアは声を上げる。

「力が及ばないのは判っている。

 だが、許されるなら――私は、もう一度ヴァイスどのと勝負がしたい。

 貴方と闘って、私を認めて貰いたいんだ。

 いや――認めさせてみせる!!」

 セレスティアは、目を見開き、決意の程を見せている。


 だが、この発言には俺もさすがに驚いた。こんなことは昨日、打ち合わせたりはしていなかったからだ。

 一方の竜人(ヴァイス)は、僅(わず)かな間沈黙すると、直後に大きな笑い声を上げ始める。

 彼の野太い笑い声が、闘技場中に響き渡った。

「そうでなくてはな。

 ――少し待て。もう一度、力の差を見せてやる」

 そういうと竜人(ヴァイス)は、一旦闘技場から下がっていく。


 セレスティアは竜人(ヴァイス)の背中を見送ってから、俺の方へと近づいて来た。

「ケイ、私の判断で、勝手なことをしてしまって済まない。

 だが――どうしても我慢できなかった。

 負けたままの自分を――あのままの自分を、許せなかったんだ」

 彼女の顔は紅潮し、興奮しているように見える。

 俺はその表情を見て、微笑みながら慰(なぐさ)めるように言った。

「セレス、謝る必要はない。

 俺もきっとその方が良かったんだと思う」

 それを聞いて、セレスの表情が少し和(やわ)らぐ。

 俺はセレスに顔を近づけると、彼女の目を真っ直ぐに見据えながら言った。

「セレス、よく聞いてくれ。

 ヴァイスは強い。

 だが、これは“ルール”のある闘いなんだ。

 だからきっと勝機がある」

 俺がそういうと、セレスティアは俺の目を見ながらしっかりと頷(うなず)く。


 ロアールの対決は、初撃で決まる方式だ。

 逆に言えば、初撃を決めさえすればいいのだ。

 例えそれが、どんな“不格好”なものであったとしても。



 少しして、竜人(ヴァイス)が軽装になって闘技場へと戻ってくる。

 先ほどまでは正装をしていたから、きっと着替えて来たのだろう。

 正直、着替えなど資産(インベントリ)に突っ込んだら済むじゃないかと考えなくもなかったが、それなりの地位にある人物が、人前で着替えなどしないということかもしれない。


 竜人(ヴァイス)は闘技用の防具を装着すると、セレスティアと対峙(たいじ)するように、闘技場の真ん中に移動する。

「では――流れ上、私が見届けることにしますね」

 直前まで闘う気満々だった豹男(レンツ)が、竜人(ヴァイス)とセレスティアに語りかける。


 竜人(ヴァイス)の武器は、変わらず大剣だ。

 一方のセレスティアの装備も、聖乙女の剣(ジャクリーン)と、聖乙女の盾(シールドオブライン)で変わらない。

 二人を交互に見て、両者が武器を構えたのを確認した豹男(レンツ)は、闘いの開始を宣言した。

「よろしいですか――では、始め!」


 その声とほぼ同時のタイミングで、竜人(ヴァイス)の大剣が横凪(よこな)ぎに唸(うな)りを上げる。

 セレスティアはその攻撃を、聖乙女の剣(ジャクリーン)を持つ右手も使いながら、しっかりと盾で受け止めた。

「ぐっ――!」

 思わずセレスティアの口から声が漏れる。

 セレスティアの身体は大剣の勢いに押されて流れそうになったが、何とかそれを押しとどめ、攻撃を受け止めるのに成功した。

「よく止めた!!」

 竜人(ヴァイス)は嬉しそうにそう叫ぶと、一旦大剣を引いて、今度は逆袈裟(けさ)に剣を振るってくる。


 恐らくその剣勢は、初撃よりも重いものではなかったのだろう。

 セレスティアはその勢いを計って、剣だけで受け止めようとした。

 だが、竜人(ヴァイス)の攻撃は、聖乙女の剣(ジャクリーン)には当たらない。


 牽制(フェイント)だ――そう思った直後、竜人(ヴァイス)の大剣は再び唸りを上げて、今度は袈裟斬りにセレスティアへと襲いかかってくる。

 セレスティアは聖乙女の剣(ジャクリーン)の角度を変えて、その一撃を受け流そうとした。

 だが、その一撃は、逆袈裟(けさ)のものとは勢いが違う。


 大剣は聖乙女の剣(ジャクリーン)と激突し、火花を散らしながら刀身に沿うように流れていく。

 勢いのあまり受け流しきれなかった攻撃は、セレスティアの右の肩当てを引っかけて吹き飛ばしていった。

「セレス――!!」

 防具が飛んだのを見て、シルヴィアが思わず声を上げる。


 だが、セレスティアは傷を負った訳ではない。

 彼女はその場から二歩ほど下がって、竜人(ヴァイス)と少しだけ距離をとった。


 ――ここまで、圧(お)されてはいるのだが、前回のように精神的に飲み込まれたりはしていない。

 見ると、セレスティアの目には、しっかりとした闘志が見えている。


 一瞬の間の後、今度はセレスティアが仕掛けていく。

 聖乙女の剣(ジャクリーン)で突きを放ち、それを大剣で弾かれると、左手に持った盾を一気に竜人(ヴァイス)に叩き付けようとした。

 その動きに呼応するように聖乙女の盾(シールドオブライン)が赤く発光し、動きが加速されて竜人(ヴァイス)を襲う。

 竜人(ヴァイス)はセレスティアのスキル“シールドブロウ”を簡単には止められないと感じたのか、右肩に剣の平を当て、大剣を肩に抱えるようにしながら、身体を使って受け止めた。

 そして、そのままの状態から、再び逆袈裟(けさ)の方向へと斬撃を放ってくる。

 セレスティアはその斬撃を、盾も剣も使わずに、後方へ下がって避けた。

 攻撃を外した竜人(ヴァイス)は、更に踏み込んで、今度は斬り上げるように攻撃してくる。

「くっ――」

 セレスティアは斬り上げる攻撃を聖乙女の剣(ジャクリーン)でいなそうとしたが、斬撃の威力に耐えきれなかった。

 次の瞬間、聖乙女の剣(ジャクリーン)はセレスティアの手を離れて、宙を舞っていた。


「あっ――!!」

 シルヴィアがその展開に声を上げた。前回と同じような展開になりつつある。

 セレスは剣を失い、手に持つのは盾だけになってしまった。


 竜人(ヴァイス)はその展開に、口を歪(ゆが)めながら追撃を仕掛けるが、図らずも両手で盾を持つ形になったセレスティアは、その攻撃をガッシリと受け止めることができた。


 ――だが、受け止めるだけではどうしようもない。

 竜人(ヴァイス)は連続で追い込むように斬撃を放ち、それを二度、三度とセレスティアが何とか盾で受け止めるという展開が続いた。

「ケイ、このままでは――!」

 グレイスもその展開に息を飲む。

 だが、俺は声も上げず、その展開を静かに見守っていた。


 竜人(ヴァイス)は一瞬大剣を下げて半歩下がると、再び踏み込み、横方向に一回転しながら横凪(な)ぎの一撃を放ってくる。その一撃は、相当な威力の攻撃に見えた。

 セレスティアはその一撃を同じように、両手で持った聖乙女の盾(シールドオブライン)で受け止めようとしたが、受け止めた瞬間、流石に体勢が崩れて半歩後ろに下がる。

 彼女の重心が後ろに下がったのを見逃さなかった竜人(ヴァイス)は、そのままの勢いで鋭い突きを放ってきた。しかも、盾を弾くために、わざと盾の上部を狙った攻撃だ。

 果たして聖乙女の盾(シールドオブライン)はセレスティアの手を離れ、聖乙女の剣(ジャクリーン)と同じように弾き飛ばされていった。


 ――その時、竜人(ヴァイス)は己(おのれ)の勝ちを確信したはずだ。

 だが、丸腰のはずのセレスティアが、“手に持つもの”を見た瞬間、その目が驚きの色に染まった。


 セレスティアの両手には――盾の裏側に隠されていた、“短槍(たんそう)”が握られている。

「ハァァァッ!!」

 セレスティアは気合いを込もった声を上げると、攻撃で伸びきった竜人(ヴァイス)の腕を目がけて、思い切って突き込んで行った。

 完全に不意を打った攻撃だ。そのまま行けば、間違いなく竜人(ヴァイス)の腕を傷つけられるはずだった。


 だが、咄嗟(とっさ)に竜人(ヴァイス)は大剣の柄(つか)を使い、腕に突き刺さろうとしていた短槍の切っ先を跳ね上げた。

 結果、短槍は竜人(ヴァイス)の籠手だけを引っかけ、闘技用のそれをバラバラにする。

「外した!?」

 俺はそれを見て、思わず声を上げた。


 ――昨日、セレスティアの状態(ステータス)を見ていた俺は、ふとセレスティアが槍を使わないことに疑問を持った。

 彼女のスキルは、状態(ステータス)で見ると、剣よりも槍の方が高い。

 セレスティアに聞くと以前は頻繁(ひんぱん)に槍を使っていたようだが、今槍を使っていない理由が二つあり、一つは盾が持てないからというもので、もう一つは聖乙女の剣(ジャクリーン)を陛下から賜(たまわ)ったから、という理由だった。


 ――後者の理由はさておき、前者の理由については、ロアール式の決闘ではあまり意味を成さない。

 それは、護りを固めたところで、勝負に勝てないからだ。

 勝つためには攻撃し、相手に一撃を当てるしかない。

 それもあって、俺は一つセレスティアに提案をしてみた。

 一度、全ての護りを捨てて、槍で闘ってみてはどうか、と――。


 恐らく竜人(ヴァイス)は、セレスティアが盾を捨てて槍で闘うとは思いもしていない。

 それもあって、敢えてセレスティアが盾に執着しているように見せながら、ここぞというところで槍に持ち替えて攻撃する――そんなシナリオを組んでいた。


 だが、その一撃を外してしまった。

 セレスティアは、かなり劣勢に立ったと思わざるを得ない。


 竜人(ヴァイス)とセレスティアは、槍を避けた勢いで、すれ違うように位置を入れ替えている。

 入れ替わりざまに竜人(ヴァイス)が放ってきた斬撃は、盾を捨てて身軽になったセレスティアに避けられていた。


 竜人(ヴァイス)はセレスティアに向けて大きく踏み込むと、再び横凪(な)ぎを放ってくる。

 セレスティアはそれを後ろに飛び退(すさ)りながら避け、大剣を振った後の隙(すき)を狙って、一気に突進(チャージ)を仕掛けた。

 体力でも装備でも劣るセレスティアは、闘いが長引けば自分の勝機がないと考えたのだろう。

 彼女の突進は、ほぼ“捨て身”と言ってもよいものに見えた。


 その突進は、セレスティアの槍スキル“串刺し(スキュア)”を発動させ、彼女の持つ槍は一直線の白い閃光を上げて、加速されていく。

 竜人(ヴァイス)はその攻撃に、かなり窮屈(きゅうくつ)な形で大剣を合わせ、何とかその軌道を受け流して変えようとした。

 だが、速度(スピード)に勝るセレスティアの槍は、簡単には受け流されずに、竜人(ヴァイス)の右の肩当てを引っかけて、それを吹き飛ばした。


 でも――そこまでだ。


 セレスティアはそのままの勢いで前のめってしまい、床に俯(うつぶ)せに倒れ込んだ。

 これで、セレスティアの背中は完全に無防備になる。


 竜人(ヴァイス)はそこへ、容赦なく大剣を振り下ろそうとした。

 このまま剣が振り下ろされれば、セレスティアの身体は真っ二つだ。

「セレス――!!」

 俺がさすがに声を上げた瞬間、剣を振り下ろそうとしていた竜人(ヴァイス)の動きが、ピタリと止まった。

「――――」

「――何の――つもりなのですか?」

 大剣を止めたことで、情けを掛けられ、侮辱(ぶじょく)を受けたと感じたのだろう。

 セレスティアが竜人(ヴァイス)に、批難(ひなん)のこもった視線を投げかけた。


 だが、その直後に聞こえた豹男(レンツ)の声に、俺たち全員が驚きの声を上げる。

「では、それまで――。

 勝者、セレスティアどの」

「――えっ?」

「――へっ?」

 思わず全員が聞き返してしまった。


 それを見た竜人(ヴァイス)が、苦笑する。

「――不覚をとった。

 避けられたと思ったのだがな」

 そういって見せられた竜人(ヴァイス)の右手首からは、ポタポタと血が流れている。


 セレスティアが盾を捨て、短槍で突き込んだ時、竜人(ヴァイス)は大剣の柄(つか)を使ってその一撃を防いだ。

 ――だが、その時に右手首に裂傷を負っていたらしい。

 既にその時に、勝負は決していたのだ。


「闘いそのものに勝ったとは言いづらい内容だが、確かに勝負には勝ったようだな。

 聖騎士(デイム)よ、お前の勝ちだ。

 いい覚悟を見せて貰った」

 猫顔の獣人から回復(ヒール)を受け、竜人(ヴァイス)は倒れたままのセレスティアに、手を差し伸べる。

 セレスティアはゆっくりとその手を取り、少しだけ目を閉じてから、朗(ほが)らかに笑みを浮かべるのだった。



 俺たち三人がセレスティアを一頻(ひとしき)り労(ねぎら)った後、竜人(ヴァイス)は俺たちに、首都(サリータ)の街に出るための身分証をくれた。これにはシルヴィアが飛び上がって喜んだ。


 全員が竜人(ヴァイス)に認められ、ある意味大団円(だいだんえん)には見える。

 だが、実際は俺がこの国(ロアール)に来て、達成しようとしていたことが、全く達成できていない。


 俺はこの国(ロアール)に来て、“クローヴィス”という男を捜す必要があるのだ。

 “クローヴィス”に関する手がかりは、少しも得られていなかった。


 俺が改めてそれを竜人(ヴァイス)に伝えると、横で豹男(レンツ)が苦笑し始めた。

 それを訝(いぶか)しげに見ていると、竜人(ヴァイス)がニヤリと笑いながら話し始める。

「“クローヴィス”は、捜す必要がない」

「――必要がない?」

 俺は竜人(ヴァイス)の発言を聞いて、思わず聞き返す。


 竜人(ヴァイス)は改めて、もう一度言った。

「“クローヴィス”は捜す必要がない。

 獣人は成人する前と、成人した後で名前を付け替える風習があってな。

 ――“クローヴィス”というのは、もう何十年も前に捨てた、おれの幼名(ようみょう)なのだ」

「――なっ!?」

 俺たちは思わぬ回答に、呆気(あっけ)にとられてしまう。

 俺たちは、最初から竜人(ヴァイス)に一杯食わされていた訳だ。


 俺がふと豹男(レンツ)の表情を見ると、彼は笑みを浮かべた表情のままだ。

 この様子だと――豹男(レンツ)も、最初からそれを知っていたと思われる。

 真面目そうに見えるが、やはり食えないヤツだった。



 ヴァイスがクローヴィスの名前を捨てたのが、数十年前。

 その名を頼りにここまで来たのだが、結局レーネとヴァイスが会ったのが、ヴァイスがまだクローヴィスと名乗っていた――子供の頃だったということなのだろう。

 あまりにも古すぎる情報を与えてくれたレーネに――俺は彼女を思い起こして、苦笑するしかなかった。



 俺たちはこの後、魔人の活動を留(とど)めるために、転移門へ向かうことになる。

 ヴァイスが言うには、それには相当な危険があるということだった。

 具体的にそれがどの程度の危険を意味しているのかは判らないが、俺は少なくとも、そこに危険を犯してでも成すべき価値があるのかどうかを、改めてしっかり吟味(ぎんみ)しておく必要があると思った。


 転移門を破壊すれば何が起こるのか?

 使徒とは何なのか? 魔人とは何なのか?


 グレイスが魔人を追う理由は?

 そして――彼女は何故、魔人の武器を持っているのか?


 俺には知っておかなければならないことが、まだまだある。


 それを意識しながら、俺は三人の美女たちの笑顔を、じっと見つめるのだった。



(第五部 了)




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