045 楔
牛頭巨人と魔人という“強敵”と“難敵”が、同時に俺と対峙している。
危機的状況に対して不敵に笑みを浮かべ続ける俺を見て、魔人は目を細めて警戒の表情を崩さない。
無言のまましばらくの時が過ぎた後、クルトが徐に、スッと右手を挙げた。
それを合図にして、牛頭巨人が雄叫びを上げ、俺に向けて突進をしかけてくる。
迷宮の中にはドタドタという大きな足音が響き渡り、迷宮中が振動しているような感覚がした。
深淵の迷宮に入る前、騎士が言っていた振動というのは、ひょっとしたら大型の魔物が起こす振動が原因なのかもしれないな、という考えが、俺の頭の中に無責任に浮かび上がる。
牛頭巨人を注意深く観察していた俺は、攻撃を横っ飛びで避け、その場から動いていなかったクルトに向けて、魔弾・小の雨を降らせた。これはもちろん攻撃ではなく、牽制の意味合いが強いものだ。
油断なく構えていたのであろうクルトは、その攻撃を難なく避けていた。
だが、今のところはそれで意図通りだ。
警戒しなければならない対象が複数あると闘いにくいのだが、俺は位置取りを上手くすれば、実質片方だけと対峙しているような形にできると考えていた。
クルトが位置を変えたことで、俺の正面にクルトが、俺の背後に牛頭巨人がいる位置関係になる。
無防備に後背を見せている俺を見て、牛頭巨人は今が好機と睨んで、鋭く俺に切り込んできた。
俺はそれをできるだけ引きつけ、攻撃が放たれる瞬間に戦闘転移で牛頭巨人の背後に転移する。
途端に位置関係は、背中を見せた牛頭巨人を真ん中に挟んで、クルトと俺が対峙する形になった。
俺はそれぞれの位置を確認した上で、牛頭巨人の背中に向けて支配者の籠手で強化された電撃を放つ。
電撃は牛頭巨人を直撃し、数秒の間、牛頭巨人に深いダメージを与えた。
迷宮には、牛頭巨人の大きな叫び声が響く。
――と、その時、牛頭巨人の向こう側に見えていたクルトの姿が、フッと視界から消えた。
戦闘転移か! と思った瞬間、俺の真横に現れたクルトが、呪弾を撃ち出してくる!
電撃を発動する際に生じる僅かな“硬直時間”を狙われた俺は、撃ち出された呪弾を避けようとしたものの、上手く避けきることができずに脇腹に喰らってしまった。
「くっ――!」
呪弾が当たった瞬間、俺の身体全体に何かの加重が掛かったような感覚がある。
幻影状態で半蛇女王の三叉槍を食らった時に似ている。
これは恐らく抵抗力低下の呪弾だ。
既に俺の頭の中では、その影響を感じて警鐘がけたたましく鳴り響いている。
俺は次に来るであろう攻撃を予測し、クルトへの反撃を優先せず、“次の攻撃”に対する対応をとった。
見ると、クルトは俺が呪弾を喰らったのを確認して、ニヤリと表情を崩している。
俺がその表情を視界に入れた直後、クルトは麻痺の魔法を発し、俺は抵抗できずに全身を拘束されてしまった。
「ククク――」
傾いた身体は麻痺によって受け身も取ることができず、そのまま無様に床に転がった俺を見て、クルトは笑い声を上げた。
――だが、その笑い声は途中で止まる。
「何――!?」
倒れた俺の支配者の籠手が地面に触れた瞬間、接触魔法が発動し、俺の身体に解除と全回復が掛かる。
俺はたちまち麻痺状態から抜け出し、その場に立ち上がった。
クルトはそれを見て、間髪入れずに牛頭巨人に攻撃を命じる。
元々電撃の射程範囲にいた牛頭巨人は、俺からの距離が近い。
牛頭巨人はクルトが近くにいるのを考えてか、巨人の斧を使わず、肩を突き出し、強烈なタックルを仕掛けてきた。
麻痺状態を解除したとはいえ、まだ身体に痺れが残っていた俺は、それを避けることができない。
俺は牛頭巨人のタックルをまともに受け、数メートル離れた広間の壁に激突し、倒れた。
無論、普通であれば、即死してもおかしくない程の攻撃だ。
だが、俺の全身は仄かに黄金色に輝き、ダメージはない。
タックルを受ける直前に、ギリギリ“発動”が間に合った。
「――絶対防御結界だと!?」
クルトが驚いた様子で叫んだ。
俺はクルトからの更なる追撃を予想し、その場で光の結界を発動する。
果たしてクルトは俺が予想した通り、氷雨を放ってきた。
だが、水属性を得意としていた半蛇女王の氷雨よりも、威力はない。
俺を狙って実体化される氷の礫は、次々に光の膜に掻き消され、無効化されていった。
俺は氷雨を放って僅かに硬直しているクルトへ、光刃を放って反撃する。
相当に着弾の早い魔法なのだが、クルトは即座に闇壁を展開し、それを防いだ。
咄嗟の動作で闇壁が出てくるということは、クルトが最も得意にしているのは闇属性魔法に違いない。
取りあえず、今のところはクルトと牛頭巨人の攻勢を何とか凌げている。
だが、戦況はかなり圧され、防戦一方に近い。
俺がクルトに向き直ると、攻撃のタイミングを窺っていた牛頭巨人が、再び俺に向かって突進してきた。
何度も繰り返されるバカ正直な突進ではあるが、憖っか突破力が強いため、これはこれでかなり対処が難しい。
俺はできるだけ引きつけた上で突進を避けようと、クルトの動きを警戒しながら、タイミングを計った。
――その次の瞬間に起こったことは、俺が想像していた範囲から外れていたと言っていいだろう。
言い換えれば、少なくとも俺はそれが出来る状況であったとしても、そういう選択肢は絶対に採らないということだ。
だが、クルトはその選択肢を採った。
それは、ヤツが――きっと、“魔人”だからだ。
クルトは俺に近づいた牛頭巨人を完全に巻き込む形で、風塵を放った。
流石に味方を巻き込んで攻撃魔法を使ってくると思っていなかった俺は、その風塵をまともに喰らってしまう。
当然ながら俺と同じように、牛頭巨人も深いダメージを受けた。
牛頭巨人は自分に魅了を掛けている主人に攻撃を向けることができない。
怒り狂いはしたものの、それを直接ぶつけることができず、巨人の斧を滅茶苦茶に振り回しだした。
結果、方々の柱や壁が粉砕され、広間の中に瓦礫が飛び交う。
俺は牛頭巨人の近くにいたこともあって、その瓦礫に当たり、下敷きになってしまった。
瓦礫に激突した衝撃で、俺の頭からは血が流れ出している。
「ちっ、身動きが――!」
瓦礫に挟まり身動きが取れなくなった俺は、仕方なく戦闘転移でその場から抜け出した。
――だが、これこそが敵の思う壺だった。
「これで――終わりだ」
気づけば俺の真後ろに、クルトがいる。
ヤツは、俺が転移する瞬間を狙っていたのだ。
その右手には、斬れないものはないと豪語していた報復の短剣が握られている。
もはや、何かの手段で防ぐような間合いにはない。
クルトは報復の短剣を、勢いよく俺の背中に突き立てようとした。
その瞬間。
報復の短剣は、“見えない何か”に引っかかり、俺の背中に到達しなかった。
「これは!?」
突如動かせなくなった報復の短剣に、驚きを隠せないクルト。
空中で固定された報復の短剣からは、ピリピリと短剣を包み込む魔力が漏れ出している。
そして――俺の側から“彼女”が現れた。
「そのぐらいにしておくのじゃな」
青い髪に胸元が開いたロングドレスを着た美女が、中指で眼鏡を押さえながら、不機嫌そうに言い放った。
彼女はクルトを見据えると、空中に固定されていた報復の短剣を解放する。
急に動くようになった報復の短剣を抱えて、クルトは数歩、後退した。
「“深層”か。
――まさか、この男に協力しようとでも言うのか?」
クルトは冷静さを装おうとはしているが、表情からは余裕が消えているように見える。
「だとしたら、何だと言うのじゃ?」
レーネは返答しながら、ニヤニヤと笑っている。
端から見ても、邪悪で妖艶な笑みだ。
「ならば、レダ派はリース派と対立する。
そう考えて良いのだな?」
クルトがレーネに確認する。
俺はその発言を聞いて、レーネから教えられた魔人の国の対立関係を思い出していた。
だが、クルトの発言は完全にレーネに対する牽制に過ぎないだろう。
俺の予想に違わず、レーネから出てきた答えは、恐らくクルトが欲しかった答えではなかった。
「フッ、黒妖精風情が笑わせるな。
ここは誰の縄張りじゃと思っている?
無断で侵入した者へは、相応の報いがあるぞ」
――レーネが言い放った内容を聞いて、クルトは報復の短剣を収め、更に後方へ下がっていった。
「“深層”よ、貴方と事を構える気はない。
――ケイと言ったな、そこの男。
命は預けておく」
レーネに対する殊勝な発言とは対照的に、俺には見事な捨て台詞が飛んで来る。
「目障りじゃ。さっさと立ち去れ。
次に見た時には、容赦なく消す」
呼応するように、レーネから情け容赦ない発言が飛んだ。
クルトはそれを聞いて、苦々しげに開門を開いて、逃れていった。
「レーネ、済まない。
素直に礼を言う。助かったよ」
俺はクルトがいなくなるのを見届けて、レーネに声を掛けた。
彼女はこういうことを見越して、きっと“俺”に開門の楔を打っていたのだ。
だから俺の側に、転移してこれた。
レーネは少し目を細めて俺に言う。
「まだ終わってはおらんぞ。
そこの牛頭巨人は、間もなくヤツの魅了が解ける。
倒さねば、お主が倒される」
「――判った。
レーネは魔物には手を出さない約束だったな。
俺の闘いを見ていてくれればいい」
俺がそういうと、レーネは少し侮るように微笑んだ。
「ほほう。
頭から血を流しておるから、よほど追い込まれていたのかと思ったが、自信があると見える」
俺はそれに笑顔で答えると、牛頭巨人に向き直った。
牛頭巨人はそれから程なく、魅了から抜け出した。
魅了から抜け出した瞬間、即座に俺を攻撃対象として認識し、突進してくる。
俺は直後に牛頭巨人が振るった巨人の斧の一撃を食らい、上半身と下半身が真っ二つになった。
――と、俺の作り出した幻影が、そこで消える。
俺はそれで稼いだ時間を使い、祝福の杖に構造強化を掛け、更に自分に高位付与である行動加速を掛けた。
行動加速は文字通り、俺の全ての行動速度を数倍に加速するものだ。
俺はこの付与によって、短い時間ではあるが常人を遙かに超える速度を手に入れることができる。
牛頭巨人は新たに俺をターゲットし、再び巨人の斧を振るってくる。
俺は行動加速の効果によってその攻撃を軽々避け、続いて放たれた追撃を、強化した祝福の杖で簡単に受け流した。
そして、牛頭巨人の懐に潜り込む。
「これでも喰らいやがれっ!!」
俺は牛頭巨人の胸元に向け、強化された祝福の杖を媒介にして、無属性の高位魔法である筋力崩壊を発動した。
筋力崩壊は、敵の筋力だけを弱体化させる魔法で、魔物にしか使えない。
似たような魔法に半蛇女王を仕留めた侵蝕があるが、筋力に特化している分、筋力崩壊の方が強力で即効性がある。
筋力崩壊を喰らった牛頭巨人は、全身の筋力が急速に弱体化し、その場に横倒しになった。そして、体勢を立て直すだけの力が出ず、必死に叫び声を上げている。
俺は何とか抵抗しようとして身体を動かせないでいる牛頭巨人を見下ろすと、若干複雑な感情を抱きながら、祝福の杖を首筋に突きつけた。
――牛頭巨人の最後の声は、思ったよりも小さく、短かった。
俺はレーネの書庫に戻り、ソファに座って休息を取っていた。
レーネは俺が牛頭巨人を仕留めた後、満足そうに笑みを浮かべて「見事じゃ」と言ったきり、まるで何かを思い詰めたかのように、全く言葉を発しようとしない。
俺も、何か彼女と色々話すべきことがあるように思ったのだが、それがなかなか言葉にできないでいた。
「ケイ、こちらへ」
寝室からレーネが呼ぶ声が聞こえて、俺は足を運ぶ。
レーネに導かれ、俺はいつも寝床にしている寝室のソファに腰掛けた。
レーネは俺が腰掛けたのを確認すると、何やら寝室の奥から長細いものを取り出してくる。
「約束じゃ。
褒美を取らせる」
俺はその発言に、訝しげに首を捻った。
「褒美は、何か俺が目的を達成した時じゃなかったのか?
俺はクルトを倒せなかったんだが――」
そういうと、レーネは微笑んだ。
「お主は私の縄張りから侵入者を追い払った。
さらに、私の目の前で牛頭巨人を倒し、成長を示した。
――そして、次の目的も、もはや近いところにある。
それを踏まえてのことじゃ」
彼女が発した“次の目的”という言葉が引っかかった。
それは何を意味しているのだろうか? クルトに追いつき、倒すことか? それともグレイスたちと合流することだろうか?
そんな俺の思考を無視して、レーネは手にしていた長細いものを俺に差し出した。
「受け取るが良い。
これは、支配者の魔法剣という支配者の籠手と対になる魔剣。
きっとお主の助けになるだろう」
俺はレーネの表情が真剣なのを見て、差し出された支配者の魔法剣を手に取った。
思ったよりも軽い剣だ。だが、手にするだけで、ひしひしと魔力の流れを感じる。
俺が支配者の魔法剣を手に取り、それを確かめているのを見て、再びレーネが口を開いた。
「ケイ、支配者の魔法剣を使うには、簡単な契約が必要じゃ。
一度、目を閉じるが良い」
「契約?
目を閉じればいいのか?」
俺はレーネに言われるままに目を閉じた。
すると、レーネが発したのであろう、何かの呪文が聞こえる。
そして――次の瞬間、不意を打ったように、俺の唇を柔らかい感触が包み込んだ。
俺が驚いて目を開けると、青い髪の美女の顔が間近にある。
俺の胸には、何とも言えない柔らかい感触が押しつけられていた。
レーネは俺から離れると、わざわざ外していた眼鏡を戻し、少しだけ照れたような表情をする。
「――お主には、こちらの方が褒美なのかもしれんな」
そういって微笑んだ。
俺は今起こった事実に、自分でも信じられないほどの興奮を覚えた。
この一ヶ月半の出来事が、一瞬の間に頭を過ぎる。
邪悪に微笑む。俺を見下す。魔物を嗾ける。裸で寝そべる。
そして――俺を救う。
その全てを思い出した瞬間、俺は目の前の美女を、力の限り抱きすくめていた。
何故か“拒絶される”という考えは、全く頭に浮かばなかった。
俺は彼女が発した小さな喘ぎ声を無視して、唇を奪い、胸を掴む。
――レーネは、俺が望む全てに、抗おうとはしなかった。
眠る前に起こった出来事が、酷く現実離れしたことのように思えた。
あれはレーネが見せた幻影だったのではないか? そんな考えが頭を過ぎる。
目が覚めた俺の側には、レーネの姿はなかった。
だが眠る前、俺は抱きしめた彼女から、様々な言葉を聞いた。
仲間と出会ったら、書庫へは戻らず、そのまま地上に出ろ。
仲間には迷宮で魔人に遇ったことは伝えても良いが、私の名前は伝えるな。
どうしても書庫へ戻る必要があるときは、開門を使い、一人だけで戻って来い。
地上に出たら、西方の隣国ロアールに向かい、クローヴィスという男に会え。
そして――迷宮で闘い、階層を駆け上がる間も、ずっとケイのことを見ていた。
どれも事実を伝えるだけの、命令じみたものばかりだったが、それが彼女なりの心遣いだということは、確かめなくても判った。
別れの言葉を交わした訳でもないし、戻ってくるなとも言われていない。
だとすればこの後も、きっと俺はレーネと遇うことになる。
その時には打ち付けられた“楔”が、俺たちを再び結びつけてくれるだろう。
俺はその思いを秘めながら、支度を調え、一人迷宮に戻ることにした。
守護者を倒した後の一〇層目の攻略は、さほど難しいものではなかった。
深淵の迷宮は、五階層ごとに規模の大きい迷宮になっている。
そのため、多少の時間は使うことになったが、特に危なげもなく九層目に至る階段まで到達する。
俺はこの後に出てくるであろう守護者との闘いに備え、自分の状態を確かめ、付与をかけ直した。
――と、その部屋に至る扉を開けようとした時、扉の向こうから戦闘音が聞こえるのに気づいた。
俺は慎重に、かつ速やかに、扉を開いて部屋の中に足を踏み入れる。
「――グレイス、風刃で脚を狙って!」
元気の良い声が聞こえてくる。
それが、懐かしいシルヴィアの声だと気づいた俺は、彼女たちが闘っている鉄魔人形に視線を向けた。
鉄魔人形の前にはセレスティアがいて、その側にはグレイスがいる。
彼女たちは、まだ俺の存在に気づいていない。
俺は進み出ると、セレスティアが持っている聖乙女の剣に、風属性の付与を掛けた。
「!?
――ケイ!?」
その変化に気づいたセレスティアが振り返り、俺の名を叫んだ。
続いて驚いた表情のグレイスとシルヴィアが振り返る。
俺はその声に応える代わりに、彼女たちに次々と付与魔法を掛けていった。
それこそ、長らく不在だった期間を埋めていくように――。
「――!!」
「ケイ!!」
グレイスは叫びにならない叫びを上げ、シルヴィアは大きな声で叫び、それぞれ俺に向かって走り出す。
二人はそのまま勢いを殺すことなく、俺の胸に抱きついて来た。
「ケイ、信じていました」
そのグレイスの言葉に被せるように、シルヴィアも口を開く。
「良かった――。ちゃんと会えた」
俺は美女二人に応えるように、左右の手で二人を抱き寄せた。
鉄魔人形と対峙しているセレスティアも、横顔で微笑んでいるのが判る。
だが、それを見て悪戯心の湧いた俺は、セレスティアへ視線を向けつつ二人をもう一度抱き寄せ、そのまま両手を下ろしてグレイスとシルヴィアの尻を鷲掴みにした。
「――あっ!」
「――ちょっ、やだっ、どこ触ってんのよ!」
グレイスは喘ぎ声を上げ、シルヴィアは抗議の声を上げたが、どちらも俺から離れようとはしない。
見ると、鉄魔人形がセレスティアにパンチを放ち、彼女は聖乙女の盾でそれをガッシリ受け止めていた。周囲には金属がぶつかる大きな音が響く。
そして、ふと横目で俺たちの様子を見たセレスティアは、その情景に激しく怒りの声を上げた。
「――おい、ちょっと待て、貴様ら! そこで何をしている!?
調子に乗るんじゃない、戦闘中だぞ! なぜ私だけ闘っているんだ!?」
そう喚き立てるセレスティアの声が木霊する中――。
俺は慌てるセレスティアの様子に笑い声を上げ、グレイスとシルヴィアと共に、お互いの無事を喜び合うのだった。
(第四部 了)