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美女と賢者と魔人の剣  作者: 片遊佐 牽太
第二部 アシュベル篇
14/117

013 勧誘

 数名の見物人ギャラリーが取り巻く中、黒ローブの赤毛の女シルヴィアは、腕を組み、フードを脱いで激高していた。

 赤毛の長髪が朝日を綺麗に反射している。

 白い顔が見えたが、やはり美人だ。


「そうおっしゃいましても、規則は規則ですから」

「だーかーらー」

 シルヴィアはギルド職員のかたくなな発言に顔をしかめた。

「あたしは魔法ギルドの一員で、冒険者ギルドじゃないわ。

 だから従う必要なんかないって言ってるじゃないの」

「いいえ。この迷宮ダンジョンは冒険者ギルドの管轄かんかつ下だと、こちらも何度も申し上げています。

 魔法ギルドの方でも従っていただきます」

 平行線を辿たどっているらしき状況に、青白い重鎧プレートメイルを着た大柄の男性冒険者が、仲裁ちゅうさいに入る。

「シルヴィア、これは規則ルールだから仕方ない。

 もう一度出直そう」

「あんたねぇ――!」

 今度は仲裁に入った冒険者の方へ矛先ほこさきが向く。

「これも何度も申し上げますが――」

 ギルド職員は自分よりもかなり背の低いシルヴィアを、正に見下ろしながら続けた。

「この迷宮ダンジョンは、昨日から四人パーティ規制が敷かれています。

 二人組ペアを入れるわけにはいきません」

 ――なるほど、揉めている原因は、俺たちと同じ理由にあるようだ。


 もちろんこの時点で、俺にはとある考えが浮かんでいた。

 だが、それを敏感に察知したグレイスは、首を横に振る。

 魔法ギルドの店でも感じたことだが、どうもグレイスはシルヴィアを好んではいないようだ。


 ただ、今回の場合、ここで諦めれば出直しになってしまう。

 出直しと言っても、あと二人をどこかで見つけない限りはスタートが切れない。

 次に迷宮ダンジョンにチャレンジ出来るのは、いつになるのか判らない。


 俺はシルヴィアと大柄の男性冒険者を凝視してみた。

 まずはパーティが組めるだけの実力があるかどうか、確かめる必要があるからだ。


**********

【名前】

 シルヴィア・エアハルト

【年齢】

 19

【クラス】

 魔道師ウィザード

【レベル】

 29(04)

【ステータス】

 H P:1134/1134

 S P:2712/2840

 筋 力:215(10)

 耐久力:280(13)

 精神力:645(92)

 魔法力:1233(35)(+102)

 敏捷性:311(61)

 器用さ:279(80)

 回避力:426(45)

 運 勢:803(32)

 攻撃力:237(+22)

 防御力:387(+107)

【属性】

 火

【スキル】

 火属性魔法7、地属性魔法5、広域化3、空間魔法4、状態異常魔法デバフ5、解錠メイス、生活魔法、精神統一2、魔力制御4、精神耐性4、病気耐性3、自動魔力回復4、ハーランド語

【称号】

 爆炎の魔女、ルールブレイカー、セクシークイーン、魔道師ウィザード魔法使いソーサラー、魔法ギルド会員

【装備】

 黄褐色の杖スタッフオブタン(攻撃力+22、魔法力+102)

 黒のローブ(防御力+33)

 魔道師のチュニック(防御力+74)

【状態】

 なし

**********


**********

【名前】

 クライブ・オーランド

【年齢】

 19

【クラス】

 重装剣士タンカー

【レベル】

 25(22)

【ステータス】

 H P:3810/3810

 S P:313/313

 筋 力:633(50)

 耐久力:841(33)

 精神力:403(29)

 魔法力:32(19)

 敏捷性:280(91)

 器用さ:354(02)

 回避力:121(31)

 運 勢:328(32)

 攻撃力:724(+91)

 防御力:1184(+343)

【属性】

 土

【スキル】

 土属性耐性4、体術2、剣術3、盾防御5、シールドバッシュ、挑発タウント4、魔法攻撃耐性1、精神耐性6、状態異常耐性6、睡眠耐性4、苦痛耐性6、病気耐性4、自動体力回復1、ハーランド語

【称号】

 重装剣士タンカー、探求者、苦労人、クランシー教徒

【装備】

 ホワイトロングソード(攻撃力+91)

 プレートアーマー(防御力+313):セット効果

 プレートシールド(防御力+30、盾防御+2)

【状態】

 なし

**********


 ちょっと驚きだ。

 この二人は結構レベルが高し、装備もしっかりしている。


「あの二人、実力的には申し分ない」

 俺はグレイスを見て正直な感想を言った。

「ですが――」

 グレイスは、俺が何らかの手段で“見えないものを見ている”ことを知っている。

 だが、俺の発言を信じるのとは別の理由で、どうも乗り切れないようだ。

 グレイスはその理由を目を伏せがちに言った。

「あの方は、本当にわたしたちと連携コンビネーションをとって闘えるのでしょうか?

 それが不安なのです」

「それは確かに俺も不安だが、このままじゃあ迷宮ダンジョンに入ることすら出来ない」

「それはそうなのですが――」

 グレイスはそのまま無言になってしまう。


 俺はそのグレイスの様子を見て、仕方なく妥協案を提示した。

「じゃあこうしよう。

 迷宮ダンジョンに入るために、彼女たちと組む。

 だが、連携コンビネーションが取れそうになければ、早々に解消する」

 俺の提案を聞いて、グレイスは観念したように溜息をついた。

「――判りました。確かにこのままではどうしようもないのも事実です。

 後はケイにお任せします」

 俺はそれを聞いて、慰めるように、グレイスの頭に手を伸ばす。

 グレイスはその感触に、目を閉じて小さく微笑んだ。



 俺はシルヴィアとギルド職員に近づいていく。

 それに少し遅れて、グレイスも後から従っている。


 俺が側まで近づくと、大柄の男クライブが俺の気配に気づき、振り返った。

「お待たせして済みません、すぐ終わりますので――」

 大柄の男クライブは、長い間ギルド職員を拘束していることに対して、文句クレームを付けられると思ったらしい。理由も聞かずに俺に対して謝罪の言葉を述べた。

「ああ、いや、そういうことじゃない。

 君らは二人組ペアなんだろ? だとしたら俺たちと組まないかと思って」

 クライブはその言葉に驚いて俺を見る。

 さすがに職員と話していたシルヴィアも、それに気づいてこちらを見た。

 シルヴィアはどうやら見てからすぐに、俺たちが昨日の“店の客”であることに気づいたようだ。

「あら、あんたたち――。

 もう入門編は終わったの?」

 フフフと俺に笑い掛ける。

 シルヴィアがこちらに振り向いて判ったが、黒ローブの下は胸元のパックリ開いた、赤のチュニックだ。しかもたけがかなり短い。

 見ると、腕を組んでいるせいで、胸元が持ち上がってこぼれそうになっている。

 黒ローブを見ただけでは判らなかったが、このボリュームはグレイスと甲乙付けがたく――。


 コホン、と後ろに控えたグレイスが咳払いをした。俺は慌てて固定していた視線を空へと泳がせる。

 ――やばい、後ろから殺気を感じる。


「と、取りあえず俺たちも二人組ペアなんでね。

 組めば四人になるし、迷宮ダンジョンにも入れるようになるだろう」

「――は、はあ」

 クライブは突然のことに、ついて行けてないようだが、シルヴィアの方はニンマリと笑った。

「いい考えね。

 じゃあ、早速パーティ登録しましょ。

 報酬インセンティブは、等分配でいいわよね?」

 パーティを組む方向で、話がまとまって良いことではあるのだが、これですぐに「はい、そうしましょう」と言うわけにはいかない。

 俺はシルヴィアに一つだけ条件を飲ませる必要があった。

「パーティを組むに当たって、一つだけ条件がある」

 俺がそう切り出すと、シルヴィアの顔から笑みが消えて、スッと目が細まる。

 ――次の俺の言葉を待っているようだ。

「パーティリーダーは俺だ。

 ――それを飲むなら組むし、飲まないなら組まない」

 俺が付けた条件に、シルヴィアは一瞬だけ考える素振りをみせたが、すぐにニヤリと笑みを浮かべた。

「――いいわ。

 ただし、こっちにも条件がある。

 あんたたちに満足行かなかったら、あたしたちはいつでもパーティを抜ける。

 それでどう?」

 ――まあ、そうだろうな。付けてくる条件としては、おおむね想定の範囲内だ。

「オーケー、いいだろう。

 報酬インセンティブの分配も等分配でいく。余ったものはコインで決める。いいな?」

「いいわ。

 ――せいぜいあたしを満足させてね」

 そういうと、シルヴィアは俺をじっと見つめてきた。

 さすがに美人に上目遣いで見つめられると、思わずドキッとしてしまう。

 何だこれ、女性の罠ハニートラップか?



 俺はギルド職員に、四人をパーティ登録して貰うと、早速迷宮ダンジョンに入ることにした。

 グレイスを見ると、さすがに割り切ったのか、暗い表情は消えている。


 ギルド職員に聞いたところ、こちらの迷宮ダンジョンは、コース分けするほど探索が進んでいないらしい。

 迷宮ダンジョンの存在自体はかなり前から認知されていたのだが、国の命令で長い間閉鎖されていたということだ。

 その閉鎖されていた期間に、内部の構造が変わったり、迷宮ダンジョン内に何カ所か魔法の鍵が掛けられたところがあり、未探索の場所が非常に多いのだという。

 未探索が多いということは、それだけ掘り出し物おたからを見つける可能性があるということなのだが、同時に未知の危険に遭遇そうぐうする可能性があることも意味している。

 鍵の掛かった扉は解錠出来るなら解錠しても良いということだが、扉の向こうに強力な魔物モンスターが潜んでいる可能性がある高いそうで、それで命を落としたパーティが結構いると言っていた。


 俺とグレイス、シルヴィア、クライブの四人は、迷宮ダンジョンの最初の広間に足を踏み入れる。

 そこで、シルヴィアがくるりと振り返り、俺に提案した。

「まだ、呼び合う名前も訊いてなかったわね。

 簡単に自己紹介でもしてみる?」

 俺はその提案に乗るつもりだったが、ここは既に迷宮ダンジョンの中だ。

 念には念を入れて、闘える準備だけは先に整えておくことにした。

「わかった。

 だが自己紹介の前に――」

 俺は自分に筋力増マイト防護プロテクション走力強化スピード精神力強化コンセントレーション体力強化ブレスオブボディ魔力強化ブレスオブマジック付与エンチャントを掛けていく。

 自分への付与エンチャントが終わった後は、同じ付与エンチャントをシルヴィア、クライブ、グレイスの順に掛けていった。

「よし、じゃあ、自己紹介といこうか」

 俺がシルヴィアに促すと、シルヴィアは目を大きく見開いて俺を見ていた。

「あんた――付与術士エンチャンターだったのね」

「一応な」

 実は昨日なりました、とはさすがに言えない。

 真実を知っているグレイスは、さっきから微妙な表情をしているが――。

付与エンチャントを貰ったのは初めてですが――。

 これは凄いですね」

 クライブも表情が明るい。素直に感動しているようだ。

「ふーん――。

 ちょっとは面白くなりそうじゃない」

 シルヴィアは口の端を上げて、ニッコリと微笑んだ。




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