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東方天流晶  作者: クリネン
永遠と月の館
8/14

たけのこ取り物語

結局、初日の夕食はとても疲れるものになってしまった。


あの後さらに悪乗りした三人と、それほすべて真に受けてしまったうどんげとで、俺は生きた心地がしなかった………


そのせいで、俺がいたって普通の人間であるってことを説明するのに、三日はかかってしまった。


………俺普通の人ですよ?ほんとですよ?



 

まあそんな感じで一週間がたった。


今は包帯も巻いておらず、痛みもほとんどない。

まだ軽いあざなどはあるもののほとんど気にならない。

あんだけの怪我がたった一週間で治るとは思わなかった。永琳印の薬おそるべし。

  

とにかくそんなこんなで永琳さんに許可をもらったので、今は家事のお手伝い中。


といっても、今日の晩御飯のためのたけのこを取ってくるっていう作業だけどね。

でも、今日はたけのこご飯だって。楽しみだなー。それにしても。 


「いやー。たけのこを取るのも久しぶりだなー」


俺は、ばあちゃんとの暮らしについて思い出していた。


あの頃は家の裏手に山があったから、季節の野菜とかきのことかよく取りに行ってたのだ。

それを婆ちゃんが料理してくれて、ほんとおいしかったなー。

じゃあそれを作るための食材をもっと集めないと。

   

「よし!もっと奥まで探しに行こう。そうすればまだ取られていない分があるだろう」


そう考え、俺はさらに森の奥まで入っていくのだった。 

 

 





探し始めて三時間がたった。

始めたのが昼過ぎだったので、もう少しずつ暗くなってきている。


背中の籠はたけのこやその途中で見つけたきのこや山菜でいっぱいだ。

もうだいぶ取ったしこれだけあれば十分だろう。

たくさん動いたしご飯が楽しみだなー。

 

……………ん?どうせ迷ったんだろうって?


ふふーん!俺だって何度も同じ失敗はしませんよ!人は日々成長するものですよ!

ちゃんと目印も付けてるし、これをたどれば大丈夫!えっへん!


俺は竹にあらかじめナイフで付けておいた傷跡をたどってもと来た道を戻るのだった。











……………ごめん。嘘ついた。正直、迷いの竹林舐めてた。


俺が付けておいた傷跡なんてあっという間に消えてるし、明らかに俺が来たときより成長してます。


数時間でこんなに成長するなんて!寝る子は育つってことだね!!


ごめんなさい。混乱してました。


ううー。完全に暗くなっちゃったし、どっちが家か分からないよ。

こんなことならうどんげの「あなた、ほんとに一人で大丈夫?」って言葉に素直になっておけばよかった。

なんか、見栄張っちゃったんだよねーあははー。…………マジで後悔してます。



それにしても、夜の竹林って結構雰囲気あるな………。

周りに光なんてないし、風が竹の間を通って葉を揺らす音だけが辺りに響いてる。


漫画とかならこここで何かに襲われたりするんだよねー。

でも、現実でそうそう起こるわけ………


「ガサガサッ!!」 


「うわーー!?マジで出たーーーー!!」


茂みの中から突然、黒い影が飛び出してきた。

黒い影は勢いそのままに胸に飛び込んできて、俺の顔をぺろぺろなめて………え?


俺はその小さな生き物をつまみあげた。

そこには白い小さなもふもふした生き物がいたのだった。

ていうかこの子てゐの子分のウサギじゃん。


ウサギは襟首を持たれていて、身動きがとれずもぞもぞしている。

そして首をかしげて、つぶらな瞳でこちらを見つめていた。あら、かわいい。


 

「…………………お前も迷ったのか?」 


「うさー」


ウサギは首を縦に振ってうなずく。


てゐの子分のウサギたちは人の言葉が理解できるようで、簡単な仕事ならできるぐらいには知能が高い。

もちろん個体差もあるのだがこの子は比較的賢いようだ。

そういや、ウサギたちは半分妖怪でもあるのがいるっててゐがいってたな。

この子もそうなだろうか?


体はまだ小さいので子ウサギのようだ………あ、右耳に赤いリボンが付いてる。

 

「お前も方向音痴なんだな。いや別に俺は迷ったわけじゃないけどなー!」

 

「うさー?」

 

思いっきり首を傾げられてしまった。ウサギにボケは通じないらしい。


「ところで、お前。他の仲間はどうしたんだ?一人できたのか?」


「うさうさ」


ウサギは首を大きく横に振る。どうやら仲間とはぐれてしまったらしい。


「よし。じゃあ、迷ったもの同士一緒に永遠亭を目指すか」

 

「うさー!」  

  

心なしかウサギが嬉しそうに見える。

俺も一人で心細かったからちょうどよかった。

じゃあ、そうすると。


 

「そうと決まれば呼び名をつけないと。いつまでもおまえって呼ぶのもあれだし」 

「うさー」


「そうだな…………。じゃあ、お前の名前は今日からウサギ鍋ってことで」

 

「うさー!?」

 

「うん。いい名前だな」

 

「うさ!うさー!!」

 

「冗談だって。そんなに怒るなよ」


ボケは通じないけど、この子とのやり取り楽しいな。

でもどうすっかな。さすがにウサギ鍋はないけど、実際問題全然思いつかないんだよね。

しかたない、ここは見た目の印象で考えていこう。………それじゃあ。


「今日からお前はウサミーだ!」

 

「うさ~うさうさー」

 

「おー。そんなに名前気に入ったのか」

 

「うさー!」

 

「そうか、そうか。そりゃーよかった」


ちなみにウサミーという名前はウサ耳からつけた名前だ。

安直過ぎる気もするけど、本人が喜んでるし、まあいっか。


「よし。それじゃあ行くか」

 

「うささー」

 

「あ、ちょっ。ウサミー!」

 


ウサミーは俺の肩を踏み台にして頭の上に乗ってきた。

そして頭の上で「うさー!!」って両手を挙げてる。


……………まあ、いいけどね。

そう思い直し、俺は再び歩き始めようとした、そのときだった。



「ガサガサッ」

 

「ん?」「うさ?」

 

俺と同時に近くの茂みの様子にウサミーが気づいた。

どうやらさっきウサミーがでてきた茂みとは違う茂みに何かいるらしい。


ウサミーの仲間かな?俺はそう思いその茂みを観察していた。


 







そして出てきた……………猪が。

体調は優に二メートルはあるだろうか。うわー立派な牙だなー。


そしてその猪の目は完全に俺たちをロックオンしていて………って!まじかよ!? 

「ブルルルッ!!」

 

「うわー!!きたーーーーー!?」

 

「うさーーーーーーー!?」


猪は俺たちめがけて全力速で突っ込んできた。

あの巨体で体当たりされたらひとたまりもないぞ!?


俺とウサミーは走った。それはもう全ての力を使って。

って、よく考えたらウサミー走ってないじゃん!



漫画とか言ったのがフラグだったのかーーー!ちくしょーーー!!


 









その後一人と一匹は無事に永遠亭にたどり着いたそうです。


ちなみに、背負っていた籠とその中身は走っている途中に置いてきてしまい、輝夜たちにさんざん文句言われました。


俺だってたけのこご飯食べたかったのに!理不尽だ!!

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