お嬢様とメイドさん
受験で忙しすぎる!!・・・・合間で小説書いていかないと(汗
「あのー……咲夜さん?いったい何時まで歩けばよろしいんですか?」
「すみません。話しかけないでもらえますか」
門から入ってすでにかなりの時間歩いている。
こんな広い屋敷に入ったことないから、あとどのくらい歩くのか知りたかっただけなんだけど――話しすら聞いてもらえない。
どうしよう、これ。
どう言い訳しても逆効果な気しかしないよ。でもどうにか弁明しないと。
「いや、あのですね……そう!ちょっとめいりんの身なりについて注意していただ けで」
「ならばもっと適した言葉があったと思いますが?あれは客観的に見てもどう見てもセクハラだと思います。それについてはどうお思いにまりすか?その頭は飾りなんですか?馬鹿で変態とかほんと最低ですね……早く死んだらどうですか?」
「……ほんとすみません」
うん。もう無理だね。諦めよう。
俺のこと本格的に嫌ってるみたいだし、これ以上何を言っても機嫌を損ねるだけだろう。
それよりも今はもっと気にしないといけないことがあるからね。とりあえず、そのことは後回しにしよう。
ていうか、咲夜さんって超ドSなんだね。永琳さんとはまた違ったベクトルのドSだけど。
「……お嬢様のお部屋までもう少しです。もうしばらくの辛抱なので黙って着いてきて下さい。ですが私の半径5メートル以内にはくれぐれも入らないようお願いします」
咲夜さんはそういうと、もう話しなどないと言わんばかりに奥の部屋に向かって歩きはじた。
俺はそのあとを5メートル以内に入らないように追いかけるのだった……。
「――着きました。中ではお嬢様がお待ちしております。くれぐれも失礼な行動は慎んでください」
「今さらなんだけどさ、なんで俺がここに呼ばれたの?全然心当たりないんだけ ど」
「それは直接お嬢様に聞いてください。私はあなたをここにつれて来るように仰せつかっただけですので」
「うーむ……わかった。じゃあ入ろう」
咲夜さんは俺の返事を聞くと、目の前の扉を開く。
なんていうか、建物もそうだけどこの扉もおかしいぐらい大きいんだよね。
外から見た広さと、中が全然かみ合っていない。
これもたしか咲夜さんの能力だっけ? 能力の汎用性はんぱねー。
「お嬢様。お連れしました」
「ありがとう、咲夜」
咲夜さんの呼びかけに対して、返事を返す部屋の主。
彼女がレミリア・スカーレットで間違いないだろう。
「貴様が木城九条だな?」
「まあ、そうですけど。……ってどうして俺のこと知ってるんですか? ていうかそもそも、なんで俺をこの部屋に呼んだりなんかしたんですか?それに――」
「ククク、そんなに慌てなくともちゃんと答えてやる。だから少し落ち着け。だがその前に一応自己紹介しておこう。私の名前はレミリア・スカーレット。夜の王バンパイアだ。そして、そこに立っているのが私の従者。十六夜 咲夜」
「改めましてどうも」
いつの間に移動したんだろうか。レミリアの左斜め後に立っていた咲夜さんが軽く会釈をしてくる。
俺もそれに釣られるように、会釈を返す。
そういえば、まだちゃんと自己紹介してなかったな。
まあ、俺のことは咲夜さんもレミリアも知ってるようだけど、一応しておいたほうが良いかな?
なんか相手も俺のことを知ってるってなんか新鮮だな。いつも俺の一方通行だったから。
そう考えて姿勢を正し、簡単に自己紹介を行う。
「あー。俺のことはもう知ってると思うけど、俺の名前は木城 九条。しがない元高校生です」
「ああ。もちろん知っている」
挨拶を終えて、俺は改めてレミリアを見る。
特徴的なピンクの衣装に黒い羽。
その顔には、不敵な笑みを覗かせている。
うん。わかっていたけど、どうみても小学生にしか見えない。
この姿でランドセルに制服着てても全く違和感なさそう。
そういえば、外の世界にはレミリアが制服着てランドセル背負ってエロいことをする同人誌が
「……九条。貴様なにか不純なことを考えてないか?」
「サー。何も考えていません閣下ー」
「なんだそのしゃべり方は」
「サー。気にしないでください」
「……まあ、よかろう」
あ、あぶねー。
こんなこと考えてたの知られたら、文字通り捻り潰されてしまうだろう。
それほどまでに圧倒的なオーラがレミリアからは出ているのだ。
美鈴の言ったことは、冗談でもなんでもなかったんだな……恐ろしい。
「さて、それじゃあ質問に答えてやるとしよう。まず、なぜ貴様のことを知っているのかだったな。それは私の能力、運命を操る程度の能力だ。それで貴様がここを訪れることを知ったのだ。貴様がここを訪れることを知った私は、咲夜に詳しい素性を調べるように言っていたのだ」
「え? じゃあ、咲夜さんは俺のストーkごめんなさい、嘘です! 冗談です! だからそのナイフを下ろしてください!!」
「お嬢様。私のナイフがこの人間の血を欲しております。どうか少々お時間をいただけないでしょうか?」
「なにその中二病発言! レミリア、このままじゃ用件を聞く前に俺が肉片になっちゃうよ!?」
「……咲夜、落ち着きなさい。今この人間を殺してしまったら、運命が変わってしまうわ」
「……お嬢様の命令とあらば」
「九条、お前ももう少し自重しろ」
「まだ死にたくないので、がんばります」
17才で死ぬとか、洒落にならないからな。注意しよう。マジで。
「で、二つ目はなぜ貴様をここに呼んだかだったな。それは――」
そのとき、レミリアの瞳が怪しい光を放ったのを俺は見逃さなかった。
その瞳を見た瞬間体中をものすごい寒気が襲った。
これはあれだ。前に永琳さんが俺を新しい試験薬の実験体にしようと話しかけてきた時と同じ感じだ。
俺が幻想郷に来て一番成長したのは、戦闘能力でも適応能力でもない。
危険察知能力である。
「あ、俺用事思い出したんだった! それじゃあ、レミリア用件はまた今度な!」
俺はレミリアの言葉を遮り、間髪いれずに背後の扉に向かって全力疾走を始める。……しかし
「咲夜」
「はい。かしこまりました」
背後からそんな会話が聞こえたと思うと、次の瞬間には咲夜さんに腕を捻りあげられていた。
「痛い痛い痛い! 咲夜さん! もうちょっと手加減してくれても!」
「残念ながら、変態にかける情けなど持ち合わせてはおりません」
「絶対それ私情入っているよね!? さっきのこと根に持ってるよね!!」
「なんのことか分りかねます」
「くそっ! このっ、冷血メイドめ!! 優しさと言うものはないのかー!」
「そこまでおっしゃるのならしかたありません。……それでは冷血メイドは冷血メイドらしく、ご要望にお答えしましょう」
「ぎゃーー! すみませんっ! ほんと俺が悪かったです! 人間の腕はそれ以上 曲がりませんってばあああーー!!」
「………お前達、仲がいいな」
レミリアはなに見当違いなこといってんだよ!
これどうみても、一方的な暴力現場だろ!
そんな事言ってないで早く助けろよ!
「……それで用件と言うのはだな、九条。お前に依頼があるんだ」
うわっ!この吸血鬼何事もなく始めやがった!このままにする気だ!
「なに簡単な依頼だ。詳細についてはこの紙に書いてある」
そういうとレミリアは俺の目の前に一枚の紙を投げてよこす。
紙は二つに折りたたまれており、中になんと書いているのか読むことができない。
「もちろんただでとは言わん。依頼完遂後にはそれ相応の報酬をやる。もちろん貴様次第だが……さあ、どうする?」
一見レミリアは二択から選べと言っているように聞こえるが、
その実「もちろん受けるよな?ああ?」と言っている。
いやしゃべってはいないのだけれど、発するオーラとか雰囲気がそれを物語っている。
吸血鬼に比べてか弱いただの人間にこの状況で断れるだろうかーーーいや、否だ。
それにさっきから俺の間接がミシミシいっている。もしこの依頼を断るようなことがあったならば、即折られることは確実だろう。
俺はこの部屋に来た時点でつんでたのかもしれないな……。
そんな自分の運命を呪いながら、小さく首を縦に振るのだった。
「――お嬢様。よかったのですか? あのような者に依頼など」
彼、木城九条が部屋から出て行ったのを確認してから私、十六夜咲夜はお嬢様に話しかけた。
ここ一ヶ月お嬢様の要望で彼について探りを入れていた。
その結果分ったのは、彼が紛れもないただの人間であるということだった。
確かに少々武術の心得はあるようだが、所詮その程度。
妖怪、神、悪魔が跋扈する幻想郷にとってすればそんなのあってないような物である。
それにエッチだし、スケベだし、とにかく………私は彼のことが嫌いだった。
しかし仕事は仕事。そのことを抜きにしてきちんとお嬢様にお伝えた。
にもかかわらずお嬢様はあのようなものに、あの依頼を託していったのだ。
私にはそんなお嬢様の考えを読み取ることができなかった。
「そう。あなたは何も感じなかったのね」
「ええ。やはり何度見てもただの人間にしか。それにあいかわらず、エッチで最低な男でした……」
「その割には仲がよかったように見えるけど?」
「やめてください、お嬢様。冗談でも言っていい事と悪いことがあるんですよ?」
あの男と仲が良いなど、遺憾以外の何者でもない。
お嬢様は私のこの気持ちを理解していないわけではないはずだ。ならなぜそんなことをおっしゃるのだろうか?
「ククク。まあ、咲夜。貴方にもその内分るわよ」
「そうでしょうか?」
「ええ。そのうち……ね」
「…………」
お嬢様は機嫌よさそうにただ彼が出て行った扉の方を見つめている。
何か含みのある言い方が少し気になったが、たぶんこれ以上聞いても何も答えてくれないだろう。
つまりは今、話す必要のないとお嬢様が判断されたのだ。ならば深くは追求しないのが従者の勤めであろう。
「……それとね咲夜。一つ言っておきたいことがあるの」
「なんでしょうか?」
「貴方は彼がただの人間であると報告していたわよね?」
「はい。調べてみてそれはほぼ間違いないかと」
「そう……それじゃあ、咲夜。なぜ彼には私の能力が効かなかったのかしら?」
「……え?」
お嬢様のその一言で、一瞬完全に思考が停止してしまった。
能力が効かなかった?生き物ならば逃れることのできないお嬢様の能力。運命を操る程度の能力が?
ありえない。そんなことはあるはずもない。
彼は確かにただの人間であった。霊力もそこらの人より少し強い程度。
そんな彼にお嬢様の能力から逃れることなどできないはずだ。
――ならばなぜ?
「フフ、混乱しているようね」
「それは、本当なのですか?」
「事実よ。その証拠に彼がここに来ることを変えることができなかったんですも の」
「それはつまり――」
「ええ。彼がここに来たのは、決して私が運命を操ったからではないわ。変えることのできない絶対的運命だったということよ」
「……そんな」
ただの人にしか見えず、むしろ自分の嫌いなタイプの人間だった彼が急に恐ろしく思えてくる。
人という種でありながら人にほとんど関心がなく、むしろ見下していた自分。
そんな自分が、霊夢や魔理沙のような人でありながら人智を超えた力を持つ者以外に初めて抱く感情。
彼は、いったい――何者なのだろうか。




