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東方天流晶  作者: クリネン
幼き紅の館
13/14

門番の憂鬱

いよいよ紅魔のみんながでてきますよ!!このメンバーは人気だよね、ほんと。





「……………」



俺は今紅魔館の門の前に立っています。


話に聞いていた通り、壁一面が真っ赤で窓が見当たらない。

屋敷の周りには何もなく、それがいっそうこの建物を目立たせている。

たしかに吸血鬼が住んでいる館と言われれば納得してしまうであろう作りである。


もしここに誰が住んでいるのか分らないのであれば決して近づきたくはないだろう。



ちなみに俺は、ここに来るまでにいろいろあった。

具体的に言うなら、言葉も話せないような低級妖怪に食われそうになったり、野良妖精に遊びで弾幕をぶつけられたり。


……よく生きてるよな、俺。




まあ、それは置いておこう。確かに目の前に立つ洋館はとても不気味ではあるが、目の前にもっと気になる物があるのだから。




「……あのぉー」


「……zzz」


「もしもしー」


「……zzz」


「おーい!」


「さくやさぁーん。そんなに褒めないでくだしゃいよー。もう食べられませんってばー……zzz」



だ、駄目すぎるよの子!!


今俺の目の前に、立ったまま門に寄りかかって、絶賛爆眠中の少女がいるんですが。

しかもすっごく分りやすい寝言言っているし。……ざ、残念すぎる!!



チャイナ服に身を包んだその姿は人間にしか見えず、引き締まった肉体は武術者の証である。

でもたぶん彼女は妖怪なのだ。だってどうみても美鈴だし。

それに紅魔館の門に立ってるしね。



「いやでも。実際どうしよう」


こんなに気持ちよさそうに寝てるし、なんだか起こすのも忍びない。


彼女の口元は緩んでおり、女子にあるまじき顔で眠っている。あーあー、涎が。

そして彼女の寝息に合わせて豊かな胸が形を変えながら上下運動を繰り返して……


睡眠中に見るのはルール違反だな、うん。


そんな風にくだらないことを考えていると、違和感を感じたのか美鈴が目を覚ました。



「……あれ?ここは?」


「紅魔館の門の前だね」


「おいしいお料理は?」


「夢の中だね」


「優しい咲夜さんは?」


「存在しないね」


「あなた誰ですか?」


「それが最後に出てくるとは……」



うん分った。この子、俺が会ってきた幻想郷住人の中で輝夜と同じくらい駄目駄目だ。


でもかろうじて、仕事をしてるからこっちが上かな?全然門番としては役になってないけど。




「……申し遅れました。私は紅魔館の門番、紅 めいりんという者です」


彼女は今までの自分をなかったことにしたいらしく、乱れた服を調え、改まって挨拶をしてきた。でもねえー。


「あの、美鈴さん?」


「何ですか」


「涎、ふいたほうが良いと思うよ?」


「…………」



あ、無言で拭き取った。

これもやはりなかったことにしたいらしい。……いや、どう考えても無理だろ。

でも、これスルーしないと話すすまなそうだし、しかたない。俺、大人。



「俺の名前は木城 九条。ちょっと用があってここまで来たんですよ」


「九条さんですか。私のことは美鈴でいいですよ。よろしくお願いします、九条さん」


「どうぞよろしく」



まあなんというか……少々残念な感じはするけど、根はかなりいい子みたいだね。


でも俺もあんまり人のこといえないからな。

そういう意味では仲良く慣れそう。主に駄目な意味で。



「それでどうしたんですか? この紅魔館に来るなんてよっぽどの物好きか、死にたがりですよ?」


「美鈴は一応紅魔館の門番なんだよね?………自分の職場をそういう風に認識してるのはどうかと思うよ?」


「いやでも、実際事実ですし。お嬢様のご機嫌を損ねると一発であの世行きですよ」


「洒落になってないのが怖いね」


もしレミリアにあったらご機嫌を損ねないように頑張ろう。


さて、いつまでもこうしてしゃべっていてもいいんだが、俺の用事もあるし本題に入ろうかな。





「おしゃべりはこの辺にして、本題に入るけどさ。その前に質問させてもらっても良いかな?」


「はい、いいですよ。なんでもこいです!」


なんでこんなに無駄に自信があるんだろう。


「知り合いに聞いたんだけどさ、美鈴って気の達人なんだよね?」


「そうですね。幻想郷では気に関して私よりも上の者はいないと自負しています!」



へー。幻想郷で一番ときたか、そりゃ適任だな。


「実はさ、俺今気の扱いについて学んでるんだけどさ、いかんせんよく分らなくて困っちゃって。だから、知り合いに気の達人である美鈴に教えてもらうようにって言われて来たんだ」


「つまり、弟子になりたいと?」


「あー。ありていにいえばそうなるかな?」


「うーん……」


(あ、悩んでる)



彼女は両腕を胸の前で組み、目を閉じて悩み始めてしまった。


そのとき、彼女の腕がふくよかな胸を押し上げることによって胸が強調されてる。……エロいな。



でも実際どうなんだろうか。

やっぱり初対面の人間にいきなりこんなことを言われたら困るよね。


でも、気を習得するまでは永琳さんに帰ってくるなっていわれてるし。

ここは維持でも弟子にならないと。








それから二十分経った。


彼女は、未だに微動だにせずに悩み続けている。

俺はこの二十分で彼女の印象を改めされられた。


さすが武術の達人は違う。ここまで微動だにせずにいられるなんて、普通の人にはできない。


正直俺は美鈴のことを甘く見ていたのかもしれない。

たとえ門番の仕事中に寝ていても、彼女が武術の達人であることには変わりないと痛感させられる。






……あれ?でもいくらなんでも悩みすぎじゃないだろうか?


たしかに二十分微動だにしないことはとても武術家然としているのだが、考えていること自体がそんなに悩むことだろうか?


何らかの事情があってこうして考えている可能性もなくはないが、一言も声すら発しないなんておかしくないか?


そう思った俺は、少し気になり美鈴に声をかけた。



「あの、美鈴?」


「……………」


「いや、あの。個人的には俺のことでそんなに悩んでくれるのは嬉しいことなんだけどね?そろそろどうするか言ってほしいと言うか……」


「……………」


「正直、もうこの空気耐えられないから答えを聞きたいなーなんて」


「……………」


「駄目かな?」


「……も」


「も?」




もってなんだ、もって。


あれかな?門番との兼任はちょっととか?

それとももっと強くなってから出直して来い!とか?

もしかしたら、モビルスーツの性能差が、戦局を分かつ絶対条件ではないさ!とか


……なに考えてるんだろうね。俺。



でもなんて言おうとしたんだろう?

もしそれが断られるようなことでも頑張って粘って弟子にしてもらわないと。


俺がそう決心した数秒後、ついに美鈴は閉ざしていた口を開き、ついにしゃべり始めた。








「………も、もう食べられませんよ~咲夜さんー」


「…………………」


………ブチ。

今のはたぶん、俺の額から血管の切れる音が聞こえたんだと思う。



俺は無言で霊弾を作り、それを美鈴目がけて放つ。


霊弾は狙いたがわず、美鈴のおでこにクリーンヒット。かなり強めのデコピンのような音がする。


美鈴は、突然起こった額の痛みに飛び起き、頭を両手で押さえている。

そして、混乱のためか大きな声で俺に非難の声を浴びせてくる。





「く、九条さん!突然なんてことをしてくるんですか!痛いじゃないですか!!」


「黙らっしゃい!!人を何十分も待たせやがって!しかも挙句の果てに目の前で寝ちまうし!」



今までの俺の尊敬を返せこの野郎!!


やっぱり輝夜と同じぐらい駄目だこの子!

いや、輝夜だって人の話の途中で寝たりなんかしないぞ!



「しかも、寝てる時はすごく無防備だし!いったいどれくらい俺が我慢したのか知らないくせに!!」


「しっ、知りませんよそんなの!どう考えても私悪くないじゃないですか!」


「いや、美鈴が悪い!何回も何回もその胸で俺を誘惑してきやがって!!」


「そんなの私にはどうしようもないじゃないですか!この変態!!エッチ!!」


「くそっ、言わせておけば!だとしても、話の途中で寝る奴があるか!」


「そ………そんなことだってあるじゃないですか!!」


「そうそうあってたまるか!」




俺たち二人はそのあとも不毛なやり取りを繰り返す。


正直途中から、あほーとか、馬鹿!とかそんな小学生の口げんかになってましたよ、ええ。


そうして数分間お互いの悪口を言い合ってた俺たちは、しかし思わぬ乱入者によって終了を迎えることになった。






「………あら、美鈴。ずいぶん楽しそうじゃない」


「え?さ、咲夜さん?」



声のする紅魔館の中庭のほうに目を向けると一人の女性が立っていた。

俺もゲームでよく知っていて、この門番に至ってた直属の上司だ。


そこには紅魔館の完璧で瀟洒なメイド長がいるではありませんか。

しかし、その立ち姿からはなんというか殺気が漏れていて………。


「さ、咲夜さん。いつからそこに?」


「少し前ね。あたなが楽しそうに話していたので、タイミングをうかがっていたのよ」


「いやでも、なんでこんなところにいるんですか?今はまだ、紅魔館の掃除をしている時間じゃあ」


「ちょっと用事があってここに来たのよ。掃除は時間を止めてもう済ませてきたわ」



さすが完璧で瀟洒なメイド長。後回しにするんじゃなくて、先に済ませてしまうとは。

俺はそんな場違いなことに関心していたのだが、となりのめいりんさんはそれどころではないらしい。


まあお客様を前にして爆睡してたんだからな、咲夜さんの怒りの理由もなんとなく察しがつく………南無三。



「ところで美鈴。私はこの方をお嬢様のところに連れて行かなければいけないの。借りてもいいかしら?」


「え?え、ええ。いいですよ。どうせこんな空気じゃ、弟子をどうするかなんて決めれませんし」


「そう。ありがとう」



咲夜さんはこちらを一瞥して、そのまま中に入っていく。

たぶんついてこいってことなんだろうけど……。


俺は突然のことに困ってしまい、めいりんに視線を送る。

彼女は咲夜さんに教育的指導を受けなかったためか、安堵の表情を浮かべてい…………。





「あ、そうそう美鈴。お客様を送ったらあなたには徹底した教育が必要みたいね」


「…………」



あ、めいりんの顔がものすごい死にそうな顔になった。

まるでその顔は、市場に連れ去られる子牛みたいな顔だ。ドナドナドーナー。



「それじゃあ、咲夜さん。いきましょうか!」


めいりんにはかわいそうだが、人が真剣な話しをしている目の前で眠ってしまうんだから、自業自得だね。うん。


そう思い、こちらに背を向けている咲夜さんに向かって走り始めた、のだけれど。



「近づかないでください、変態」


「え?」


いま、なんて言ったの?編隊?艦隊でも編成するの?艦これするの?



「聞こえなかったのですか?近づかないでくださいといってのですよ?この変態」


「ええ!?」


間違えなく、今変態って言ったよね!?なんで!どうして!!



「あの、咲夜さん………なぜ俺は変態など言われているのでしょうか?」


「人の屋敷の前で大きな声でセクハラをしているお方を変態を言わずして何と言うのでしょうか?」


「それは……その……」



かっ、完全に聞かれてた!!や、やべー。いくらテンションがあがってたからって、あれはなかったな。


咲夜さんに嫌われてしまったよ………俺の幻想郷ハーレムの夢が。

そして皆でイチャイチャする夢が!

メイドさんとエロいことをするはずが!くそっ!くそっ!!



「俺とメイドさんとのエロエロ生活があああーーー!!!」




その時、紅魔館の時間が止まったと思う。


思わず思っていたことが、口から出ちゃいました。


咲夜さんの能力は時間操作だったよなー。すごいなー。あはははー。



俺はチラッと咲夜さんの顔をのぞき見る。

その表情は、まるで生ごみでもみるかのような、とても冷ややかなものであった。


そして踵をを返し、再び歩き出していった。



………これもう、ほんとに駄目かもしれない。


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