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東方天流晶  作者: クリネン
幼き紅の館
12/14

強くなろう!


「えいっ!やあ!!はあっ!!」



俺は今、うどんげと対峙して模擬戦をしている。


霊弾が撃てない俺に合わせて肉弾戦のみではあるのだが、さすが妖怪。俺なんて及ぶべくもない。

俺の攻撃なんて軽くいなして、当てることすらままならない。

それに俺から見てうどんげの動きに隙がまるで見つからない。

妖怪の力に任せた戦い方じゃなくて、戦闘術の洗礼された動きだ。




ちなみに俺は前に霊弾の打ち方をうどんげに教えてもらっている。

霊力的な部分では問題ないらしい。

珍しい霊力持ちの中でも、少しだけ霊力総量も多いらしいし。


あれだね。漫画的に言うと、霊子とか念とかチャクラとかそんな感じ。

俺は永琳さんに指摘されるまで、存在すら全然知らなかったけど。


でも、霊弾って難しいのな。体の中にある力みたいなのを球体にして体外に放出するってかなりの技術を要する。

妖怪とかは感覚的にできるらしいけど、今の俺は一、二個作り出すのがやっとだ。


でも、これでも最初よりは成長したんだよ!

最初なんて手の平で球体の形が維持できず、暴発して真っ黒こげになったんだからね!!




閑話休題。


ところで、なぜこんなことになっているのかというと。


前に永琳さんが俺に協力してくれるという話になり、それから何回かうどんげ相手の模擬戦をするようになっているのだ。


永琳さんは横で俺たち二人の模擬戦を見て、指摘してくれている。

ついでにうどんげの方にも指摘をしていて、うどんげも「自分のためにもなるしちょうど良いわ」っていってた。


そんな風にを考えながら、俺は意識を模擬戦のほうに戻す。




模擬戦を開始してから20分近くたつ。

もう精神的にも体力的にも限界が近い。

これ以上の長期戦は不利だと悟った俺は勝負をしかける。


「はあっ!!」


俺は半身の状態から渾身の右ストレートを放った。だが。


「ふっ!やあっ!」


「うっ!!」


俺の放ったストレートは簡単にうどんげの左手にはじかれ、カウンター気味に足蹴りが繰り出される。


とっさに左手でガードするが完全には勢いを殺せず、よろめいてしまう。

すぐさま体勢を立て直そうと試みるが、それより早くうどんげの手刀が俺の首筋に添えられる。


勝負ありだ。





「あー。また負けたー。やっぱりうどんげは強いなー俺じゃ全然勝てないやー」


俺は地面に座り込みながら、乱れた息を整える。

一方のうどんげは少し汗はかいているものの、息は全く乱れていない。


「そんな事ないわよ。私なんてまだまだ全然よ?」


「うー。俺、強くなってるのかなー。まったく実感わかないよ」


「大丈夫よ。前やった時よりも動きにキレがあるし、私の攻撃もそう簡単に当たらなくなっているもの」


まあ最初のころに比べたら、そりゃー変わってないと困りますがね。


そんな風に話していると、二人の戦いを見ていた永琳さんが話しかけてくる。

ちなみに今日はとなりに見物の輝夜もいる。

暇だったから、お茶のお供に見ているのだそうだ。


「二人ともお疲れ様」


「あ、師匠。ありがとうございます」


永琳さんがねぎらいの言葉をかけてきてくれる。

永琳さんはいつも対戦が終了するまで声をかけることはない。

そのかわり、対戦後のアドバイスはとてもためになるもので、さすがとしか言いようがない。

そこで俺は永琳さんに質問をしてみることにした。


「永琳さん。俺の攻撃うどんげに掠りもしないんですけど、何が足らないんですかね?」 


「うーん。そうねー……まあいろいろ足りないものはあるけど、やっぱり一番大きな要員は身体的な差ね」


「身体的な差ですか」


それはまた根本的なところですね。


「そうよ。技術面がつたないのはしかたないし、そのうちどうにかなるとしても、身体的な差は今のままではどうしようもないのよ」


「それが、人間と妖怪の差ですか」


「ええ。あなたが多少人間離れしていても、その差が根本的になくなったりはしないわ」


「うーん。じゃあどうすれば?」


「………気なんてどうかしら?」


「気、ですか?いやでも今も霊弾の練習してますし、そんなに変わったりしないんじゃないですか?」


「それがそうでもないのよ。気や霊力にはそれぞれにいろいろな使い方があるの」


「その言い方だと気や霊力が別物という風に聞こえるんですが?」


「ええ。霊力も気も同じものではないわ。あなたも知っていると思うけど、霊力は持つものと持たざるものがいる。比率で言えば、持っているほうが圧倒敵に少ないのだけれど。それに比べて、気は全ての人間が持つものなのよ。気は生き物が生きるための、いわば生命エネルギーのようなもの。だからこそ、幻想の存在である妖怪は気を持たず、霊力のみ、この場合妖力といったほうがいいかしら、を持っているのよ。だから両方持つ人間はすごく珍しいんだけど」


「ふむふむ」


「そうね。まず霊力だけど特徴としてはとくにないわね。強いて言うなら特徴がないのが特徴かしら。なんにでも変化させることができる。肉体に流せば肉体を強化できるし、魔術に流せば発動させられるし、球体にすれば霊弾として打つことができる。でも適正的にいえばフラット。全部普通ってことね」


「うむうむ」


「で、気なんだけど。これは主に肉体に作用するのが特徴かしら。具体的に言うなら肉体強化や察知能力の向上ってところ。もちろん霊力でもできるけれど、気の方がやりやすいし、消費も抑えられて、なにより能力上昇が段違いなのよ。そのかわり体外に排出するのは難しいわ。弾として放出するのはまだどうにかなるけど、魔術などの公使はすごく難しい。まあ、気専用の術式とかもあるんだけどね。ほかにも、魔力や神力、超能力などいろいろあるけど、今は知らなくて良いと思わわ。………どう?わかったかしら?」


「わかりません!!」


「………」



あ、永琳さんの表情が凍りついた。

いや無理ですって。こんなに一気に説明されたら困っちゃいますって。


俺のそんな様子を察したのか永琳さんは大きなため息をつく。



「………とにかく、気が肉体強化。霊力がなんでも使える力ってのを覚えとけば良いわ」


「わかりました!永琳先生ーー!」


「………話を戻すけど、妖怪との身体的差を埋めるには気による肉体強化が一番なのよ」


「それを永琳さんが教えてくれるんですか?」


「教えてあげたいのはやまやまなんだけど、私は蓬莱人になった時点で気を失ったのよ。うどんげもてゐも妖怪だからそもそも持ってないし」


「じゃあ独学で学ぶんですか?それはハードル高いなー……」


「そこで、ちょっと教えてもらいにいってきなさい」 


「え?誰にですか?」


「湖のほとりに立つ紅の館の門番が気の達人で有名なのよ。だからちょっと行って来なさい」



永琳さんの行って来なさい発言に驚く。


それって絶対美鈴のことだよな?それに紅の館って紅魔館だよね?

それに行って来いと。……え?まじで?


「大丈夫ですか?」


「まあ、大丈夫よ。その門番は人間に友好的だし、きっと教えてくれるわよ」


「それなら行ってきますが……」



でも、口ではこんなことをいっているのだが、正直心はかなり躍っていた。


だって紅魔館のメンバーに会えるんですよ!

またハーレムメンバーが増えるんですよ!!

これが喜ばずにいられますか!ひゃっほーーーい!!








「………かなり浮かれていた九条であったが、まさかこの後あんなことになるとは思っても見なかったのであった」


「不吉なナレーターやめい!」



話を聞いていた輝夜が不吉なことをつぶやく。

そういうのフラグっていうんだぞ!分ってるのか!?



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