本に出会って。
大人になるまでに、何か自分の心の支えになるような、そんなものを持っておくといいとよく人は言う。
しかし、彼はそれを持っていなかった。
佐藤問太、20才。
彼はいまだに過去の自分を見つめなおすための方法を持っていなかった。
だから、ピアノを習おうと考えた。
しかし指先が器用じゃなかった。
最初は夢中になって引いていたが、途中になってあきらめた。
「曲になってない」
あきらめも早かった。
しかし、開き直りも早かった。
もっと、簡単なものがいい。
と思い、次は絵を描き始めた。何かをデッサンしようと考えた彼は、
スケッチブックを持って街中を出て行った。
しかし、あまりにも似ても似つかなかった。
へんてこりんな絵だったので、彼はあきらめた。
どうしたらいいものかと、彼は懸命に調べようと思い始め、インターネットで、調べてみたり、本を読んだりしてみた。
みんな、書いていることは同じだった。
「続けることが大事です」
有名な人は皆、誰になんと言われようと、続け続けました。
その結果は、才能だけではありませんでした。
そもそも、結果など、どうでもいいことでした。
とにかくやりたいことをやるのが彼の目的でした。
「次は、続けてみせる」
彼は、意地になっていた。
その過去の自分を振り返るための何かを探し始めて、もう1年ほどたっていた。
パソコンをしたり、ゲームをしたり、
いろいろやってみたが、彼はとうとう自分に嫌気がさし始めた。
もう自分が嫌いだった。
どうしようもない気持ちが彼を襲った。
人々の流れにうまく乗り込めないでいた。
そんなある日、彼は図書館に行ってみた。
彼はもう続けようとは思わず、ただ、なんとなく図書館に向かった。
何とも風情のあるいい匂いがした。
これは本の匂いか、なんだか、懐かしい思いになった。
問太は、図書館に入るとすぐに、哲学コーナーに向かった。
すると、そこには哲学の猫がいた。
その猫は、黒い帽子をかぶって哲学コーナーの前の椅子に足を組み、
「癒しとしての死の哲学」を呼んでいた。
その猫は、青い目をしていて、白と黄色の毛並みをしていた。
問太は猫に尋ねた。
「それ、面白いですか?」
猫は答えた。
「面白いですよ。勉強になります。」
私は、生きていけますか?
猫は答えた。
「私は生きていけると思いますよ」