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花鳥風月の恋の道  作者: キリト
序章
3/4

3話 ただいま

今回は宗司の考え事の部分を()で囲ってみました。見にくければ言っていただければ修正します

次の日の朝、目が覚めて時計を見ると時計の針は9時15分を指していた。


優が9時30分に起こしに来ると言っていたので予定より早い起床だ。


「といってもな・・・」


まさか、こんな豪華な部屋で朝を迎えることがあるとは思わなかった。そう、昨日、正しくは今日だが、俺の人生は一転した。


孤独な貧乏高校生から世界でも有名な会社の後継者へ。


これを人生の転機と言わずになんというのだろう。


「それにしても俺が月城グループの関係者だったとはな」


俺は優や爺さんに聞かされるまで、まったく知らなかったのだ。


たしかに、父さんがいつも職業を教えてくれなかったので最初のほうは疑っていたが、時間がたつにつれ疑うこともしなくなっていった。


そして、職業を父さんの口から教えてもらう前に亡くなってしまった。


「そういえば、前の学校のやつらはどうしてるかな?」


月城グループ後継者が一般の公立の高校に通えるはずもなく、どこかの学校に転校せざるを得ないらしい。


そうなると、前の学校のやつらと会うことはもうないのだろう。


やっぱり、さみしいかな・・・。




そんなことを考えている間にいつの間にか9時30分になっていたらしく、


「宗司様、失礼します」


優が起こしに来たようだった。


「おはよう、優」


「あ、起きていらっしゃったんですね。おはようございます、宗司様」


「それにしても本当に昨日のことは夢じゃなかったんだな」


「はい、まぎれもない現実ですよ。宗司様は月城グループの正式な後継者です」


「そういえば、この屋敷のつくりがまったくわからないんだけど・・・」


「ああ、それについてはこれをお使いください」


そう言って、渡されたものは1つのボタンだった。


「このボタンを押していただければ私の部屋やケ-タイに連絡がいきますので、お迎えにうかがいます」


「つまり、当分の間は屋敷の移動は優と一緒ってこと?」


「そういうことになりますね。さすがにこの屋敷を短期間で歩ける人はいないと思います」


「ここの屋敷異常に広いからな~w」


「本家はもっとすごいですよ」


「ここよりも広いの?」


「このお屋敷の3倍近くはあるんじゃないでしょうか」


「・・・・・絶対迷うよねw」


「あ、そういえば、すっかり忘れてました」


「何を?」


「お客様がいらっしゃってますよ」


「それって昨日言ってた人のこと?」


「そうです。宗司様も会ったことがあると聞いておりますが?」


「え?」


「ま、とりあえず会ってみたほうが早いみたいですね。お客様は庭園のほうにいらっしゃいますので案内いたします」









「昨日は暗くてよく分らなかったけど、こんなに庭広かったのか・・」



目の前にはものすごい数の花と芝生やらなんやらが広がっていた。



「このお屋敷は特に庭園などの自然に力を入れているとうかがっています」



「で、そのお客さんってどこにいるの?」



「え~と、おそらくいつも通りならあそこにいるはずですが・・・」



(いつも通り?そんなによく来る人なのか?)



っと思いつつも優についていくと、2分ぐらい歩いた時に人影が見えた。



「あ、いらっしゃいました。あの方です」



相手も気付いたようでこちらに歩き始めていた。



その相手は、見た感じ同い年ぐらいの女の子だった。髪の色は薄い赤で長さはとても長かった。いわゆる赤髪ロングである。



「椿様お待たせしました」



(あれ?椿ってどこかで聞いた名前だな・・)



でもあと一歩思い出せなかったが、とりあえず挨拶だけしようと思い口を開きかけた瞬間、



「宗くん、ひさしぶり~」



・・・・・・・抱きつかれました。



「え、あ、あの・・・・」



いきなり美少女に抱きつかれて動揺しないわけはなかった。というか、動揺しまくっていた。



「直接会うの何年ぶりだろ?10年くらいかな?


ホント会いたかったよ~」



(よし、落ち着いて考えよう。


まずこの娘は俺と会ったことがある。


それも結構前に。


それに「椿」っていう名前はどこかで聞いたよな~。)



「やっと今年宗くんが月城家に帰ってくるっていうから、今年h張り切ってケーキ送っちゃったよ~」



(それか!!



どこかで聞いた名前だと思ったらケーキの送り主か。



じゃあ、あの写真に写っていたのは・・・・この娘と俺?)



「もしかして、宗くん、私のこと思いだしてない?」



・・・・・・・バレバレみたいw。



「しょうがないな~。じゃあ一応自己紹介しておくね。


私は花園椿。一応花園家の長女だよ。宗くんとも小さいころよく遊んだんだけど・・・・覚えてない?」



「残念ながら・・・」



話を聞く限り10年前のことだというし、さすがに覚えているはずがなかった。



「ショックだなー」



「そういえば、宗司様驚かれないんですね?」



「何を?」



「いえ、今までの宗司様だと「花園家」という単語を聞くだけで驚くと思ったのですが・・・」



(・・・・・・!!!。


そうだよ、この娘のことを思い出すだけで精いっぱいでスルーしてたけど、とんでもない単語が聞こえたジャン。


「花園家」、それは四天王のうちの1つで、とてつもない権力を持っている。


もしかして、その家の長女ってめちゃくちゃえらいんじゃ・・・・)



(※注  仮にも宗司は四天王のTOPに立つ月城グループの後継者ですww)



「優、やめてよその言い方。花園家って言っても、四天王の中では一番下だよ」



「申し訳ありません、椿様」



「いつも敬語じゃなくて普通にしゃべってほしいって言ってるのに・・・」



「いえ、それはさすがに主の許可なしでは・・・・」



「優、椿さんと普通に話していいぞ」



「え?」



「優だって同年代の女の子と普通にしゃべりたいでしょ」



「宗くん、さすが!!。


さあ優、普通にしゃべってみて」



「え・・・・えっと・・・椿?」



なぜに疑問形なのかわからないがこれは進歩と言えるだろう。



「その調子で俺のことも・・・・・」



「だめです。お仕えする方を様付以外で呼べません」



まあ、なんとなく予想してたけどねw。



「あと、宗くん」



「はい?」



「宗くんも椿「さん」って呼び方しないでね。なんかさみしくなっちゃうから」



「じゃあ、椿 でいいのかな?」



「その敬語も禁止!」



「じゃあ」



俺は一呼吸おいて、



「椿、これからよろしくな」



これからの新しい友人になるであろう少女に挨拶をした。









☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

花園椿side




私は宗くんや優と30分ほどしゃべった後そのまま直接帰宅して、そのままベッドに体を預けた。


そう、自分でも予想以上にショックだったのだ。


宗くんが私のことを思い出してくれてないことが。


確かにもう10年近く前のことになるのでしょうがないと言えばしょうがないのだが、そこは乙女心が納得してくれなかった。



「どうしたら思い出してくれるのかな・・・」



昔、一緒に撮った写真を送っても思い出してくれなかったのだ。その写真に写っている場所は、宗くんと一緒によく遊んだ場所。つまり2人にとっての思い出の場所なのだ。



(うん?



思い出の場所?



思い出・・・・・・。



・・・・・・・・!!!)



「そうか、その手があったのよね。なんで今まで思いつかなかったんだろ。


さっそく連絡しないと・・・」



私は1つの名案を思いつき、即座に実行に移した。









☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

月城宗司side



「え?椿から招待?」



時計はもう16時を回るところだが、俺は優から初耳の話を聞かされていた。



「はい。どうやら椿のお父様が宗司様と会いたいそうです」



(まじかよ・・・・)



まだ、話し方やマナーもあまり教わっていないのに、そんなお偉いさんと会うなんて予想もしていなかった。



「ということで、30分後に出発したいのですが、よろしいですか?」



「どうせ拒否できないんでしょ?」



「さすがに相手の方が相手の方ですからね」



「分かった、30分後までに準備終わらせるよ」













で、その会話から1時間30分経って今は17時15分。


目の前に見えるのは、俺の住んでいる屋敷の2倍弱ぐらいあるお屋敷だった。



「ここが花園本家か・・・」



「はい」



「なんかものすごく入りづらいんだけど」



「まあ、そのうち慣れると思いますよ」



「そんなもんかね?」



「そんなもんですよ」



「で、俺はどこに行けばいいんだ?」



「えっと、そこの階段を上って直進してください。私は警備員の方とお話ししてくるのであとから行きます」



「分かった。じゃあ、先に行ってるな」



「はい、行ってらっしゃいませ」



そして、宗司が立ち去った後、



「椿、うまくやってくださいね」


っと、優がつぶいたのは誰にも聞こえていなかった。










「ホントにこの道で合ってるのかよ」



優と別れてから5分。俺はいまだに道を歩いていた。なんか明らかに上りばかりなのは勘違いだろう。うん、勘違いだと信じたい。



「でも優が教える道を間違えるとは思えないしなー」



でも、周りは木に囲まれている状況である。ある道は階段がほとんどだった。



「一体どんなつくりにしたらこんな・・・・・・・」



相変わらず階段をのぼりながら文句を言っていたのだが、そこで言葉が止まった。止めざるを得なかった。



階段の先には開けた土地があり、そこから多くの自然の景色を見渡すことができる場所だった。


でも、俺が驚いたのはそこじゃない。


その土地に咲いている多くの花。そして、この場所から見えるお屋敷。



(俺はこの場所を知っている?)



そう、この場所がとても懐かしかったのだ。


まるで、何度も来たかのように・・・・。


そこで俺は、ふと思い出した。


誕生日ケーキと一緒に入ってた1枚の写真を。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

回想



「宗くん、もうここには来れなくなっちゃうの?」



「うん、そうみたい。お父さんがそう言ってた」


この時まだ小さかった俺は両親とともに海外に行かなきゃいけなかったんだ。


「でもまた一緒に遊べるよね?」



「もちろん、また一緒に遊べるよ」


そう答えたものの、全く根拠はなかった。


「本当?約束してくれる?



「うん。僕も椿ちゃんと一緒に遊びたいもん」



「じゃあ、もし次に会ったときは・・・・・・・・」



次に会ったときは・・・・なんだったのだろうか?


そこの部分は思い出すことができなったが、おそらく大事なことだったのだろう


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「ここだったのか・・・・」



俺と椿ちゃんの思い出の場所。約束した場所。そして、帰ってくる場所。



「やっと思い出してくれたんだね」



他に人がいると思ってもいなかったので驚いて振り返ると、そこには涙をこぼしている椿がいた。



「ああ、思い出したよ。ここが俺たちにとっての約束の場所だってことも」



「よかった・・・・本当によかった」



椿の涙をとまることはなかった。



「朝会ったとき、怖かった。


宗くんは私のことを覚えてなくて、さん付けで呼ぶし、敬語だし、まるで思い出が偽物だったかのように感じられた。


10年間の思いが偽物なのかって・・・・」



「ごめん」



「しょうがないことなんだよ。10年も前のことだもん。でも私はあきらめきれなかった。だから優に頼んだの」



(優までからんでいたのか・・)




「でも、よかった。思い出してくれてよかった」



それでも椿の涙は止まっていなかった。



そして、俺は自然と椿の体を抱きしめていた。



「ごめんな。そんなさびしい思いをさせてたなんて。


でももう大丈夫だ。2人で築いた思い出は偽物なんかじゃない」



「宗くん・・・・・」



「10年越しの約束だけどまだ約束は残ってるよな?」



「うん」



「ここに戻ってくるまで、椿と会うまで10年もかかったけどやっと約束を果たせたよ。



ただいま、椿!」



「おかえりなさい、宗くん」






相変わらず椿は俺の胸で泣いていたが、時折見せる笑顔はまるでバラのように美しかった。

まず最初に、投稿時間変更してすいませんでした。


思った以上に用事が多く執筆する時間があまり取れなかったのです。



ということで、次回更新は4月21日0時としたいと思います。


日曜はさみますしさすがに書けると・・・・・思います

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