覆水は盆に返らない
その日は、雲一つない快晴でした。
右手に持ったナイフを掲げると、太陽の光がきらりと反射して、とても綺麗でした。
彼女には劣りますが
信号機のブザーがなり、横断歩道を渡りました。横断歩道には白線が引かれていました。
渡った先にある、ごく普通の一軒家。そこのチャイムを鳴らしました。心が踊るようなひと時でした。
ぴーんぽーん
不用心な事に、家主はドアを開けて「どなたさまですか?」とまで聞いてきました。
ナイフを突きつけて、金をあるだけ奪い取りました。
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「だからこの場にいるんですよ」
16くらいの、爽やかな雰囲気を纏った青年が声を発する。
『なぜそんなことを?』
警官の服を着た男が問う。
「好きな人がいたんです。お金を持ってきてくれたら、付き合ってあげるよ。そう言ってくれたんです」
はぁっ、と呆れたように口を開く。
『つまり?その女に騙されたわけね?』
青年は負けじと言い返す。
「いいえ、僕が捕まったのは偶然です。彼女がそんなことをするはずがない」
青年はさらに捲し立てる。
「彼女が振り向いてくれるなら、僕は何でもする。殺人だろうと、強盗だろうと」
『金を奪った直後、すぐ近くにパトカーがいたのにか?』
青年は黙りこくる。
『生憎、お前さんが襲った家はな。この国でも有数のお偉いさんの親戚の家だ。お偉いさんの親族とあらば、我々も君を解放することはできないのだよ』
青年はゆっくりと口を開く。
「もう、やり直しはできないんですか?」
『どんな理由があろうと、罪は消えることはないさ』
青年は、何も思えず俯いていた。




