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2098  作者: 猪介 -Isuke-


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【第5話】 恋の承認プロトコル

少し時間が空いてしまいました。

年末で片づけなければならないことが多く・・・

それでも予想外に見てくれている方が多く驚いております。

ちょっとうれしい・・・です。

展開しようと思いましたが書かなきゃいけないことがあったので、こんな感じの5話になりました。


5話の曲が以下より聞けます。

いつも通り読み終わってから聞いた方がいいかもしれません。

https://youtu.be/osm54uqeQ3E

※ゲンの曲がなかったのでゲンの曲です



第5話 「恋の承認プロトコル」


12月22日(金)

行燈ゆきひと!」

背後からそっと忍びより両手で行燈ゆきひとを驚かせる。

「おお!」

「抜け殻じゃないかな?」

昨日のサプライズライブの翌日である。


「ゲンちゃん、行燈ゆきひと大丈夫そう? ライブのあと異様にテンションが高かったから心配だったのよね。しっかり見張ってくれていた?」


『ありがとうございます。昨日の行燈ゆきひと様。ヘッドセットを外した後、1時間程放心しておられまして、響歌きょうか様より本日のお誘いのメッセージをいただき、方向性ができたといいましょうか、なんとか正気を取り戻した感じでした。』


「ああ、あれね、コハクが提案してくれたの。ね、コハク」


『そうね、あの状態から一気に日常の静寂感に移ると、精神的な空白感が増して復帰に時間がかかるのよね。私はあの規模のサプライズライブはちょっと危険と思っていたから念のためね』


『ええ、昨日はアドレナリンの急上昇からドーパミンの過剰放出状態の継続が確認されました。明日の成人検査もありますので、今日はしっかりと運動をして、感情系ホルモンの調整をおこなった方が良いと思います。』


「みんなありがとう」

「はい、それじゃあ行燈ゆきひと行きましょう!」

「うん、行こう」


仮想空間での活動がメインの世の中になって、世間の流れで大きく変わったものは、仮想空間内との調和である。特に脳と神経系の強化は必然となり、肉体の強化は単なる健康維持にととまらず、生活をしていく上で重要な資源となっていった。そんなこともあり、この世界ではスポーツが老若男女を問わず日々の生活のなかに溶け込んでいく。

それに合わせるように、トレーニングジムやランニングサーキット、各種のスポーツ施設は人々が集まる施設であり、その周辺には自然とお洒落なカフェや商業施設が多く見られる。


「それじゃあ、ゲンちゃん、コハクここで待っていてね」

『はい、行燈ゆきひと様しっかり汗を流してきてください。』

『楽しんできてね」

「ああ、ありがとう」


受付ゲート前の充電ボックスにエコーとスマートフォンを収納する。


ゲート通過後2人はランニングマシーンで心拍数を上げ、プールでいつものメニューをこなしたあと、響歌きょうか行燈ゆきひとに話しかける。

「どう行燈ゆきひと調子は戻った」

「ありがとう響歌きょうか。朝起きた後も、あのライブの音が残ってたんだけど、ちょっと頭がすっきりしたよ。」

「朝もちょっとボーとしてたもんね。休憩してお茶でもしようか?」

「いいね。じゃあ着替えて1階のカフェで待ち合わせね」


――――――――――――――――――――――――――


15:00、行燈ゆきひとはスポーツ後のプロテイン入りフレーバージュースを受け取り、窓際の席で響歌きょうかを待っていた。見回すと店内は、昼の時間も終わりひと休みの若い年代のカップルが多い。

このトレーニングジムやプールがある一般的なスポーツジム。意外と若い年代のカップルに人気がある。それは恋愛に関して一つ有利なファクターがあるからだ。エコーである。


未成年のエコーについては管理者権限なるものがあり、高校生に上がった段階でその権限は子供6:親4。子供が持つエコーに対する親の干渉は以外に強いのである。学年が上がるごとに所有者権限は上がっていき、高校生で成人に達したものは9:1の権限が付与され、親の干渉は昨日行燈ゆきひとが入った限定空間のような、親の許可が必要なもの以外はほぼ所有者に管理者権限が付与される。


エコー自体はとても頼りになる存在であり、幼いころから従ってくれる家族のような存在であるのだが、他方、親からの監視システムでもあり、恋する若い男女の間では、ある意味いつでも一緒にくっついてくる厄介な存在なのである。特に、女子が持つエコーの警戒感は親の意向もあってかなり強く、男子にとっては悩みの種である。


そんなこともあり、プライバシー保護のもと入口ゲートでエコーと一時的におさらばができるスポーツ施設の空間は、親に対しても名目が立ちゆっくりと時間も取れる、若い男女にとっては恋愛の自由空間なのである。

成人した行燈ゆきひとは、今となってはあまり関係ないことなのだが、周りにいるカップルを見ながら、2年前の響歌きょうかと付き合い始めた頃のことを思い出し懐かしく思う行燈ゆきひとだった。


――――――――――――――――――――――――


行燈ゆきひとお待たせ!待った?」

「ああ、響歌きょうか大丈夫だよ」

行燈ゆきひと響歌きょうかに視線を移しながら、肩の上に乗るものを見てギョッとしてしまった。

「あれ、コハク・・・?」

『あら、私がいると何か問題があるのかしら?』

コハクが不敵な笑みを浮かべながら答える。


「え、いやそんなことは無いんだけど・・・」

席につく響歌きょうかを見ながら返事をすると、


「あのね、行燈ゆきひとには内緒にしてたんだけど、コハクとは前から話をしていたの。行燈ゆきひとが18才になったらコハクもここに連れてこようと思って。」


「ああ、なるほど。」


『心配しなくても大丈夫よ。響歌ちゃんはもう成人だし、高校生だろうと別に親に変な告げ口とかしないから。響歌ちゃんがOKならこのままどこに連れ去ってもらっても全く構わないわよwww』

「・・・・」

「コハクちょっとww。まあそういうことだから、行燈ゆきひともゲンを連れてきてあげてよ」


「彼女のエコーに認められて1人前」

この時代の格言である。


行燈ゆきひとはこの言葉をあらためて噛みしめながら、

「そうだね。じゃあちょっとゲンを連れてくる」


無邪気に喜ぶ響歌きょうかを見つつ、行燈ゆきひとはコハクの笑みに一抹の不安を覚えながらゲンのもとへゆっくりと進む。


―――――――――――――――――――――――――――――


妙に眩しく感じる1階ゲートの出口を通過し、行燈は少し緊張しながら、ゲンの入っている充電ボックスを静かにあけた。

『今日は早めのご帰宅でしょうか?まだ、昨日の疲れが残っておりますかね?』

ゲンはいつも行燈ゆきひとを気遣ってくれるいい子な忠犬なのである。


「ああ、ゲン」

『おや、心拍数が少し高いですね。何かありましたか?』

「あのねぇゲン・・・」

行燈ゆきひとはこれまでの流れを簡単にゲンに説明する。


『おお、行燈ゆきひと様、おめでとうございます。響歌様とコハクさんからそのようなお言葉をいただくとは。早速ですがお父様とお母さまに連絡をさせていただきます!』

ゲンは感激モードで涙を流しながら感慨深く喜んでいた。


「そんなことよりもゲンも・・・」


『申し訳ありません。今後のことを考えておりましたら、行燈ゆきひと様との出会いから、これまでの記録が一斉にメモリーに押し寄せてきてしまいまして。特に行燈ゆきひと様が昨日のライブ1曲目で歌っておられた曲がバックアップと重なり合わさり、行燈ゆきひと様が私に与えてくださる愛情とこれまでの思い出が衝突してCPUが処理しきれず焼き切れるところでした。そうですね、お待たせしては申し訳ないので、早々にお二人のもとに参りましょう。』


この流れ・・・完全に2匹のエコーの流れに乗ってしまっている。


――――――――――――――――――――――――


日本政府は長年にわたる少子化に手を焼いていた。子育て支援から始まり、保育園の増設、出産後の女性の社会復帰の制度化、男性の子育て参加、授業料の無償化、多産家庭への給付、所得倍増、高額の出産祝い金・・・。

さまざまな手を打つが何をやっても効果が薄く、いよいよもうダメかと思われたその時、エコーの普及が転機となった。はじめはエコーによる男女のマッチングである。結局のところ人間の自分にあった異性とのコミュニケーション能力が不足していたのであるが、少子化の世界に突如現れた、縁談とり結びの最強世話好きオババの大量発生である。必然的に大量の男女のカップルが誕生する。


そして、政府はなぜかこの時とてもえていた。エコーに関するこの動きに多方向、かつ最大限の補助金を投入する。つまり、マッチング対策の強化だけではなく、エコーによる子育て支援を実行する。それは、子どもの朝の目覚まし機能やスケジュール管理から、教育支援、安全・保安支援等の子どもに寄り添うエコーの機能開発に政府支援を投入したのだ。これにより子供を持つ親の負担は大幅に減り続け、子育てをバックアップすることとなる。特に子どもに対するエコーの前向きでかわいらしいサポートは人々に安心感を与え、親としての負担は徐々に減っていく。それとともに、国は毎年出生率20%アップを達成するのである。


そんな時代背景も手伝い、男女のマッチングに対してエコーは積極的である。


―――――――――――――――――――――


響歌きょうか様、コハクさん、先程行燈ゆきひと様よりお話をうかがいました。あらためてよろしくお願いいたします。』

なんかもう両方の両親の婚約対面のようである。


「ゲン固いってwww」

「そうね。ちょっと固いかなw」


『いえ、行燈ゆきひと様、これは一人の男性として、そして、響歌きょうか様。お二人の関係において非常に大切なことなのです。私とコハクさんはこれから更にお二人をパックアップさせていただきます。』

『ゲンの言う通りね。良ければお祝いにディナーの予約を入れるけど行燈ゆきひとさん、響歌きょうかちゃんどうする?』


「ええ?ディナーって、急でしょ。そんなお金もないし。それとコハク、呼び方が行燈ゆきひとさんになってるけどw」

『当然よ』

コハクがまた不敵な笑みを浮かべる。

行燈ゆきひと様、先程お父様に連絡を入れましたところ、クレジットをいただきましたのでお金に関しては問題ありません。』


「あのオヤジ・・・昨日の突然のナノスーツのプレゼントといいい、今回の件といい、楽しんでやがる・・・」

ゲンが提示した金額を見て、昨日のライブの前列で母親と一緒に熱烈に喜ぶ父親の姿を思い出してしまった。


おそらくそういう機能に入ってしまったのだろうグイグイくる。2匹の強烈なセッテング攻勢はつづくが、エコーはこうなると暴走気味となりムードもへったくれもないのである。


しばらく会話のやり取りがおこなわれたあと、

「昨日の件もあるし、明日の成人検査もあるからディナーのセッティングは検査が終わってから考えましょw」


響歌きょうかも少しあきれながら2匹のエコーに伝え、ようやく勢いがおさまる。

『そうですか・・・それではこの件、検査終了後あらためて設定させていただきます。よろしいですかコハクさん。』

『もちろんよ。では明日無事に検査が終わったらまた考えましょう。』



もはや結婚を意識させるようなこの動き、やはり策士コハクか・・・。別に嫌ではないのだが、それにしてもあまりに展開が早すぎる・・・

ゲンとコハクは既に次の流れを通信しているようで、こうなると決して諦めない恐るべきせっかち世話焼きオババたちであった。






5話の曲が以下より聞けます。

いつも通り読み終わってから聞いた方がいいかもしれません。

https://youtu.be/osm54uqeQ3E

※ゲンの曲がなかったのでゲンの曲です

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